【6話(3/4)】湊とマニアたち
神木の加護を受ける街・煌都。
サボりの学生・湊陽輝は、神木と意思疎通ができる女児・猪狩美咲のお守りを任務として請け負うことになった。
研究室に預けられっぱなしの美咲は、普通の子と同じように幼稚園に行きたいと願っていた。
湊は美咲が幼稚園と研究室の両方へ通えるようにして、その願いを叶えるのだった。
※小説家になろう・note・Nolaノベルにて同時投稿中
※残酷な描写として、殴る蹴る・鼻血が出る程度です。
急いで美咲の部屋に戻ると、美咲がほっぺを膨らませて飛びついてきた。
「むぅ、みなとさん、みさきをおいてった!」
「ごめんごめん、じゃ、測定に行こっか」
オフィスの明石に声をかけ、美咲の測定をお願いする。
明石は眼鏡をかけていないが、確かに先ほどの研究マニアと顔が似ている。
「明石さん、さっき出た時、明石さんの弟に会いましたよ」
「ああ、耀二郎か?あいつは灯西の訓練校に行けば良かったのに、わざわざ自分を追いかけて照東に来たんだ」
「学生と職員だから、別々の所に住んでるんですか?」
「いや、2人で近隣のアパートを借りているんだ。職員には住宅手当がつくから、寮を2か所契約するより安く済む」
興味がありそうな記事を渡したり、一緒に住んだりと、兄弟仲が良いのだろう。
「それで湊くん、件の相手には会えたのか?」
「はい。二度と会いに来るなって言っときました」
「そうか……美咲嬢の意思疎通が世の知るところとなれば、そうやって美咲嬢に近づく輩も現れるのやもしれんな」
明石は心配そうに美咲を見た。
しかし美咲はぷいと顔を背けて、湊の脚の間に隠れる。
「ああ、美咲嬢、相変わらず懐いてくれない……自分は邪心から近づいているわけではないのに……」
「大丈夫ですって。ほら美咲、測定するよ」
肩を落とす明石を励ましながら、湊は美咲と幼木の測定を手伝うのだった。
***
帰りの迎えが来るまで美咲に付き添った後、湊は寮に戻った。
普段から同室の学生とは関わっていないので、話しかけられることはない。
しかし、今日はのほほんと手を振ってくる者がいた。
「あっ、湊くん!おかえり〜」
なんと、結晶マニアが部屋にいる。
「はっ?何であんたがここにいんだよ」
「えぇっ!?僕は最初から同室じゃないかぁ!ベッドは違うけど、ずっと向こう側にいたよぉ!湊くんってばひどいや〜」
「あぁ、そうなの?ごめん」
交流するつもりはなかったから、4人部屋の人間が誰だったかなんて覚えちゃいない。
「ねぇ湊くん、そっちに行ってもいい?」
「ん?いいけど」
「やったぁ!」
結晶マニアは、湊のベッドの下段にいる学生と話して、お互いに荷物を移動し始めた。
(え?話があるから近くに来てもいいかってことじゃなかったのか?寝る場所を変えようとしてんの?……まあいいけどさ)
二段ベッドの上段から、下段で荷物を整理している結晶マニアに声をかける。
「ねぇ、俺、明日からちょいちょい学校行こうと思うんだ。朝、起こしてくんない?」
「もちろんいいよぉ!分かるなぁ、朝って起きれないよねぇ。僕も明北の実家にいた頃は、毎日ばあやに起こしてもらってたよぉ」
(ばあや?でっかい原石持ってたし、金持ちなんだな)
それに、明北といえば高級住宅街が立ち並ぶ地方だ。
昔は三閥の従者だったようだし、良い家柄なのだろう。
「湊くんは、どこから来たの?」
「照東だけど、通えなくて寮に入ってる。ほぼ都外みたいな、外れにある施設だから」
「施設?あぁ、さっきも言ってたねぇ。だから毎日アルバイトしてるんだ。仕送りに頼ってる僕と違って、湊くんは偉いなぁ〜」
「いや、今は……いや、そんなこと、ないよ」
うっかり懲罰でバイト禁止にされたと言いそうになってしまった。
懲罰のことを話せば、美咲や幼木に繋がってしまう。
「うふふ、聞いた〜?明日から湊くんと登校するんだよぉ〜」
(ん?誰と話してんの?)
ベッドの柵から乗り出し、下段を覗く。
結晶マニアは巾着袋から原石を取り出し、話しかけながら撫でている。
「楽しみだねぇ〜」
(うわ、あの石に話しかけてる……見なかったことにしよう)
湊は黙って顔を引き上げたのだった。
***
翌日、結晶マニアは約束通り朝に起こしてくれた。
朝食でも朝礼でも、そして登校する時にも、例の原石入り巾着袋を持っている。
「それ、いつも持ってんの?」
「この子?この子は貴重だから、盗まれちゃあいけないからねぇ。だから、いつもは袋に隠れてもらってるんだぁ。この方があったかいよねぇ?うんうん」
結晶マニアは巾着袋に同意を求め、勝手に頷いている。
(なんか、美咲が木に話しかけてるのと同じように思えてきたな……まあ、あっちはちゃんと意思疎通できてるらしいけど)
結晶マニアと校舎へ向かっていると、登校してきた歴史マニアと合流した。
「おはよう、湊くん!」
「ああ、おはよう」
「湊くん、今日は授業に出るんだね!」
「そのつもりだけど……1限目って何か分かる?」
歴史マニアは手帳を取り出し、授業予定を確認する。
「えぇと、1限目は……地理だね!これはどの志望コースでも共通の授業だよ」
「地理って、座学?」
「ん?そうだよ?」
志望する役職によって選択する授業は異なるので、時間によっては3つや4つに分かれる時もある。
ただ、今日の1時限目は共通の座学らしい。
「はぁ、座学はまだやる気になんないや。気が向いたら行こ」
湊の言葉に、結晶マニアと歴史マニアが驚く。
「えぇっ!?ここまで来たのに、帰っちゃうのぉ!?」
「湊くん、一緒に授業受けようよー!」
「早起きしたから疲れた。じゃあね」
2人を残して、湊は校舎への道を引き返すのだった。
読んで頂きありがとうございます!
初投稿ゆえ、至らぬ点があればすみません。
完結まで頑張ります!




