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【5話(3/3)】みんなのえがお

神木さまの「ちびちゃん」とお話ができる女の子・美咲(みさき)


痛い検査をしたり、暇で仕方ない時間もあったり。

けれど、お兄ちゃんのお友達・(みなと)さんのおかげで、今日から幼稚園に行けることになった。


久しぶりの幼稚園、みんなと仲良くできるかな?


※小説家になろう・note・Nolaノベルにて同時投稿中

※残酷な描写として、殴る蹴る・鼻血が出る程度です。

美咲は部屋の隅で小さくなって座っていた。


湊さんはみんなと話しに行ってしまった。

自分のせいで色んなことが起きて、みんなが大変になっている。

でも、誰にどう謝ればいいのか分からない。


(みさきがわるいんだ。ようちえんいったからわるいのかなぁ?ちびちゃんのこえ、きこえるからわるいのかなぁ?)


何が悪いのか考えても分からなくて、また涙が出てきた。


***


一人で泣いていると、おばちゃんが顔を覗かせた。

「美咲ちゃん、大丈夫?」

「おばちゃん……うぅっ……ごめんなさい……」


おばちゃんはいつも優しく話しかけてくれる。

「どうして謝るの?美咲ちゃんは悪くない。湊くんが悪いのよ。美咲ちゃんは普通じゃないのに、普通の生活をさせようとするから」

「みなとさんわるくない!みさき、ふつうだもんっ」

「あら、そう。そっちで言うのは不毛みたいね」


おばちゃんは優しく微笑む。

「じゃあ、そうね……美咲ちゃん、いい?美咲ちゃん、ちびちゃんとお話できるのに、嘘だって言われたんでしょう?本当なのに、嘘つき扱いされて、嫌だったでしょう?」

「うん……」


おばちゃんは、美咲に耳打ちをした。


「そんな意地悪な子、いなくなっちゃえばいいのにね」

「えっ……?」


おばちゃんは優しく畳み掛ける。

「だって、そうでしょう?悪いのは美咲ちゃんをいじめた子たち。いじめてくる悪い子なんて、この世界に要らない。そう思わない?」

「んー?うーん、わかんない……」

「美咲ちゃん、ちびちゃんの力を使えばいいのよ。美咲ちゃんが悪い子を消したい、懲らしめたいって思ったら、ちびちゃんはきっと叶えてくれるわ。おばちゃん、そうやってお願いしてみればいいと思うの」


おばちゃんは扉を開けて、外の様子を確認した。

「もう来るかしら……みんなには内緒ね。おばちゃんからの、秘密のアドバイス。じゃあね」


***


美咲は涙が引っ込んで、おばちゃんの言ったことを考えた。


(たいせいくんたちがわるいのかなぁ?……うん、みさき、うそついてないもん!でも、みさきがおねがいしたら、きえちゃうの?みんな、きえちゃっていいのかなぁ?)


他の子が悪いと言われても、どうにも美咲の罪悪感は晴れなかった。

確かに嘘つき扱いされて嫌な思いをしたけれど、それがみんなを消す理由になる?みんなが消えたらどうなる?


美咲がますます分からなくなっていると、湊さんが戻ってきた。


(おばちゃんのこと、ないしょ。いっちゃだめ)


湊さんは険しい顔をしている。

やっぱり自分が悪いのかもしれない。


「みなとさん、ごめんなさい……」


湊さんはこちらに膝をつき、優しく頭を撫でてくれた。湊さんは大きいけれど、いつも美咲に合わせて小さくなってくれる。


「そんなこと言わないで。美咲は悪くないよ。俺の方がごめんね。美咲、前は幼稚園に行ってたし、すぐ慣れるだろうって勝手に思ってた。でも、前とは事情が違うもんね。いつもの測定してから、みんなでどうすればいいか考えよう」

「うん……」


***


測定の場所には、ぱっちんしてくる男の人と、怒ってくる女の人がいた。

2人のことはあんまり好きじゃないけど、美咲を心配してくれているのが分かった。

ぱっちんするのは嫌だったけど、これ以上みんなを心配させたくなくて、ちゃんと指を出して頑張った。


測定が終わったら、ちびちゃんとお話ができる。

ちびちゃんの綺麗な枝に触ると、声に出さなくても起こった出来事や気持ちを読み取ってくれるのだ。


『美咲、今日も痛いことされたの?』

「うん」

『ひどい!いっつも大変ね!……でも、今日はそうじゃないことでも大変だったんだ。大丈夫?』

「……うん」

『もう、大丈夫じゃないでしょ!美咲の辛い気持ち、伝わってきてるよ!何か手伝えること、あればいいのになぁ』


ふと、おばちゃんとのやり取りが胸に浮かんだ。

『……うんうん、悪い子、消したいんだ!』

「えっ?ううん、ちがうの」

『でも、悪い子にいじめられたんでしょ?美咲が望むなら、消す方法、探してあげる!』


ちびちゃんにお願いしたら、泰星くんたちが本当に消えてしまうみたいだ。


(きえるって、どうなるの?しぬ?あえない?おとうさんとおかあさんみたいに……)


美咲は急に怖くなって、ちびちゃんから手を離した。


男の人が、いつもの質問をしてくる。

「美咲嬢、終わったのか?幼木は何と?」

「いっちゃだめってば!」


ちびちゃんからは、美咲を痛くする人には話した中身を教えないように言われている。

この人はいつも聞いてくるけど、痛い検査をしてくるから教えちゃいけないのだ。


***


お家に帰るまでは、みんなでお話の練習をした。


「美咲、本当に神木さまと話せるの?」

「まだ、しらべちゅうなの」


自分がスムーズに話せると、みんなの険しい顔が解れていった。

次からはこう話すように言われた。


(しらべちゅう、わかった。でも、ちびちゃん、だいじょうぶかな……みんな、きえてないよね?)


家に帰ってからも、それが心配だった。

でもおばちゃんとの約束なので、みんなには話せない。


***


弥生さんも狩野(かのう)さんもお兄ちゃんも、お家でずっと優しくしてくれた。

いつも優しいけれど、今日は赤ちゃんに優しくするみたいだった。

でも、抱っこされても、なでなでされても、不安はずっと付きまとうのだった。


***


翌朝、幼稚園に行くと入口にベビーカーを押すお母さんが見えた。隣には泰星くんがいる。


(よかった!たいせいくん、きえてない!)


お母さんは弥生さんに気づいて声をかけてきた。

「あら、狩野さん!昨日はどうもすみません」

「いいえ、こちらこそ夜分に失礼致しました」


(たいせいくんのおかあさん?あかちゃんいるの?)

美咲はお母さんの押すベビーカーが気になって、中を見に近づいた。


泰星くんが通せんぼをしてくる。

「くんな、うそつき!」

お母さんが泰星くんの頭をはたいた。

「泰星!」

「いてっ!」

「アンタねぇ、母ちゃんが怒ったばっかでしょうが!ごめんね美咲ちゃん、うちのバカが」


泰星くんは頭を押さえてこちらを睨みつけてくる。

お母さんは少しだけベビーカーの屋根を開けた。

「美咲ちゃん、赤ちゃん気になるの?見ていいよ」

「えっ、いいの?」

「もちろん!寝てるから、静かにね」

「うんっ」


そっと中を覗き込むと、赤ちゃんの寝顔と小さな手が見えた。

「わぁ、あかちゃん!」

泰星くんがベビーカーとの間に割り込んでくる。

「さわんなよ!おれのいもうと!」

「泰星!」

お母さんに怒られ、泰星くんは渋々引き下がった。


弥生さんとお母さんが話を始めたので、美咲はじっと赤ちゃんの寝顔を見つめていた。

「いいなぁ、あかちゃんかわいい〜」


自分には弟や妹の赤ちゃんはできない。

何となく、美咲にはそれが分かっていた。

だから赤ちゃんは、美咲にとって憧れの存在だった。


「ちいちゃくってかわいいねぇ〜」

泰星くんが隣にやってきて、一緒にベビーカーを覗き込む。


「ふん、あかちゃんはちっちゃいにきまってんだろ!ちっちゃいからおれがおせわするんだ」

「そうなの?たいせいくん、おにいちゃんだから、あかちゃんのおせわできるんだ!すごーい!」

「ふふん、にーちゃんだから、とーぜんだろ!」


美咲の脳裏に、おばちゃんの言葉がよぎる。


「そんな意地悪な子、いなくなっちゃえばいいのにね」


(ううん、たいせいくん、きえちゃだめ!おにいちゃんがいなくなったら、あかちゃんがないちゃう!)


美咲は首を振っておばちゃんの言葉をかき消した。


***


弥生さんはお別れする前に、泰星くんのお母さんから聞いた話を教えてくれた。


「あの赤ちゃん、生まれてくるのが大変だったんですって。お母さまから聞きました」

「えっ、そうなの?」

「だから家族みんなで御使さまのところへお祈りに通ってらしたの。御使さまが神木さまにみんなのお祈りを届けて下さったおかげで、赤ちゃんは元気に生まれたんですって」

「よかったぁ!みつかいさま、すごいんだねぇ!」

「ええ、すごいお方なのですよ。そんなお人とお嬢さまが同じ加護をお持ちだなんて、なかなか信じられることではありません。だから、今はみんなに分かってもらえなくっていいんですよ」

「うん」


(みつかいさま、しんぼくさまとおはなしするだけじゃないんだ。あかちゃんもたすけるんだ。いいなぁ、みさきもあかちゃんたすけたいな)


***


幼稚園の教室には、他の子たちもちゃんといた。

ちびちゃんが消していなくてよかった。


「みさきちゃん!」

侑理ちゃんが駆け寄ってくる。

ほっぺたが両方ともまんまるに腫れ上がって、エサを食べるリスみたいだ。


「ゆりちゃん、ほっぺ……」

「だいじょうぶ!すぐなおるって、おかあさまがいってたの」


なおくんもやってきた。

「みさきちゃんがしんぱいだから、きょうはみさきちゃんとあそぶ」

「ゆりも!みさきちゃんがなにするかきめて!」

「じゃあ、おえかき」

3人はテーブルを囲み、めいめいに絵を描いて遊んだ。


しばらく遊んでいると、泰星くんがやってきた。

「おい、うそつき!」

侑理ちゃんとなおくんが立ち上がる。

みんながまたケンカする前に、自分が言わないと!


美咲も立ち上がり、2人よりも先に声を出した。

「うそじゃないの。とちゅうなの」

「はー?とちゅう?」

「おはなしできるのほんとだけど、しらべちゅうなの」


泰星くんを見ていると、かわいい赤ちゃんを思い出す。

「みさき、いまはしらべちゅうだけど、おっきくなったら、たいせいくんのあかちゃんみたいに、あかちゃんたすけるの」

「ふん、いみわかんねーこというな!」


泰星くんは、変な顔をしてどこかへ行ってしまった。

みんながケンカしなくてよかった。


***


迎えに来た湊さんも、ケンカがなくてホッとしていた。

「ちゃんと自分で言えたの?えらかったね」

湊さんは大きな手でなでなでしてくれた。


「みなとさん、みさき、ふつう?」

「うん。みんなと同じ、普通の園児さんだよ」


(よかった!やっぱりみさき、ふつうなんだ!ようちえん、いっていいよね……!)


***


ちびちゃんも、美咲が自分で言えたことを分かってくれた。


『美咲、前より元気ね!良かった〜!悪い子を消す方法、探さなくていい?』

「うん、だいじょうぶ」


嘘つき扱いされなかったことよりも、みんなが安心してくれる方が嬉しかった。

自分が元気だと、みんなが笑顔だ。


美咲は無事に一日を終えられた達成感を胸に、家族のもとへ帰ったのだった。


読んで頂きありがとうございます!

初投稿ゆえ、至らぬ点があればすみません。

完結まで頑張ります!

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