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転生人形師は理想の嫁を追い求める。〜こじらせ人形師は実在女に「興味が!」モテない〜  作者: 白ゐ眠子
第四章・王宮中は大騒ぎ!

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第72話 侮り難いと思う。


 特技披露会という名の発表会は──。

 ついに私の番となった。シュウは一番最後となるためか苦笑しつつ私の背中を押した。


「気負うな気負うな。普段通りに行えばいい」

「う、うん。頑張ってくるよ」


 そうとしか言えないよね。

 久方ぶりに見る母上は厳しい顔をしていたり笑顔となっていたり、ギョッと目を見開いていたりと、微動だにしない身体はともかく、その表情だけは面白いほど変化が現れていた。

 厳しい顔は教育方針を考えている時。

 笑顔は伸ばせば活きると思っている時。

 ギョッとなるのは収納魔法の事だと思う。

 ミヤに次いでマリアがそれを行い、何事なのという感じを示しているから。その表情は杖を持たず中央に現れた私に対しても示していた。


「サーシャ・リィ・オルトンです。職業は人形師、特技はこれです!」


 紹介後、右手に杖をパッと取り出してミヤとは逆の錬成を行った。ミヤは水の中に金属を浮かせていたが、私の場合は同じ金属の容器に大きなガラス窓を設けて、水を満たしておいた。

 形状は全て球体で大きさは手のひらと同等。

 内部は空間接続魔法で繋がっていて容器の中に黒い樹脂球を漂わせながら移動させた。

 それは移動魔法で右回りにまわっていく。


「凄い!?」

「窓の中の球体が次々と移動してる」

「それぞれが繋がってないのに?」

「ま、魔法を多重行使してるの?」


 多重行使も一生懸命覚えましたから!

 暇をみてはシュウが教えてくれた練習法で魔力制御を徹底した。空間属性魔法も一生懸命覚えた。そのお陰で無詠唱を無事に会得した。

 魔力量も一応増えたけど回復速度はシュウほどではない。あの速さはホントに謎だけど。

 そしてここからが本題だ。


「あ! 形状が変化してる」

「ひ、人型?」

「金属の人形になってる!」


 液体金属ではないが私が思った通りに金属の形状が変更出来るようになった。これもシュウが人形を造る時、骨製造の手伝いをしていた時の成果だったりする。シュウの元で学んでいると自分の上限が日々突破している事を感じる。

 試験人形の時は手伝えなかったけれど。


(あ、骨格になっちゃった!)


 私の周囲でくるくると回る金属は背格好が同じ骸骨へと変化してしまった。思考魔核があるはずの頭部だけはガラス窓が残ったまま。

 それを見た者達は怯えを示した。


「ほ、ほ、骨!?」

「もしかして人形の骨格?」


 そうして端に立つシャルとリーシャに視線を送る者多数だった。確かにあの子達にも同じような骨格が収まっているけどね。

 ただ、あまり見せすぎるのも良くないので樹脂球が収まっていない骨格から順に一体ずつ収納術へと片付けていった。


「ま、また消えてる?」


 最後の最後で杖も片付け、


「以上です」


 略礼でお辞儀した。

 さて、母上の反応は如何に?


「え?」


 私が母上の方を向くと何故か怯えてラナ先生の背後に隠れていた。ラナ先生は困り顔で溜息を吐きながら、母上の右肩に手を乗せる。


「苦手なのは分かりますが、生徒達の前ですよ。威厳を持って応じないと」

「え? あ、あぁ、そ、そうね、うん」


 骸骨が母上の苦手な物だったのぉ!?

 そんな母上に私は困り顔のまま問いかける。


「は、母上?」

「せ、成長したわね、う、うん」

「あ、ありがとうございます」


 まだ青ざめてるし。

 どんな人でも弱点があるんだね。

 その後の私はシュウの待つ場所に戻る。


「よくあんなので戦場に立てるな?」

「私も思ったけど、遺体を片付けるのは下っ端の兵士達だから」

「ああ、直接は見ないって事か?」

「あの様子だと、そうだと思うよ」


 こままだとシュウの特技を見る前に倒れそうよね。持ち直すかどうかは分からないけど。

 するとシュウは気にせず中央部へと移動し、


「どうも、悪名高い無能として有名なシュウ・ヴィ・ディライトでーす!」


 何を思ったのか自虐を発しながら紹介した。

 流石に内容が内容だけに失笑したけどね。


「職業は人形師ですが殿下ほどの特技は出せません。というか学長からこれ以上は出すなと命じられているので弓職の連射具で我慢します」

「出すなってどういう意味だよ!?」

「うっせぇ、ルイス!」


 ルイスのツッコミに対して、長い槍を右手に取り出し、上空に向かって風弾を三連射した。

 はい? あ、あの槍は一体なんなの!?


「剣帯の排莢方法が課題か。尻から土玉が出たように見えるし。あ、今から本題いきます!」

「「「「それが本題かと思ったわ!?」」」」


 全員から総ツッコミを受けるシュウ。

 私も分かるよ、その気持ち。

 その分、空気が一気に弛緩したけど。

 するとシュウはマリア同様に何枚もの薄皿を上空に飛ばし、右腕に取り付けた殺傷道具を使って小さな矢を連射してみせた。


「すげぇ。矢が勝手に飛んでいってる」

「今、箱を入れ替えたのか?」

「全部が命中してるぞ、どういう仕組みだ?」


 時には矢が勝手に軌道を変えたりね。

 しかも誘導魔法まで使っているようで弓職の生徒達の興味は撃ち出すシュウよりも右腕にある殺傷道具に集中していた。


「あの誘導魔法はシュウの自力よね?」

「道具単体では出来ないしね。僕でも同じ魔法を使うと思う」

「というより本題の前にあった槍は何なの?」

「多分、待ち時間の間に造ったんじゃない?」

「学長に命じられても出してしまうシュウ様」

「俺のツッコミがなかったら出さなかった?」

「「「多分出さなかったと思う」」」

「全員で白々しい目を向けないで」


 ルイスが一人怯えているが言われなかったらお蔵入りくらいはしていたと思う。

 あれも思い付きで造ったような物だろうし。

 するとシュウは私達の会話が聞こえたのか、


「あ、私の収納術に送って来たみたい」


 現物を転送魔法で送りつけてきた。

 披露中に片手間で出来るって凄いよね?


「どんなのどんなの? 見せて見せて」


 マリアが気になっていたのか急かすので私は弾倉を除外した形でマリアに手渡す事にした。


「えっと見た目は普通の槍ね。柄の部分に小さな突起が付いているわね。それも二つ」


 するとマリアはミヤと共に検証を始める。

 披露中のシュウの事など眼中に無いようだ。


「となると一つがトリガーか、残りは?」

「ああ、これは切り替えだよ。ほら、セーフティ、単発、三連、連射って。ボタン式で押せば穂先の手前の色が変化してる」

「セーフティが緑、単発が黄、三連射が赤、連射が黒か。トリアージかな?」

「黒は確実に殺すって意味なのかもね」

「連射だもんね。で、弾は?」

「剣帯の左右に弾倉って書かれた穴があるね。背中側に排莢ってある」

「ということは自動で左右から装填するようになっているのかな?」

「多分、これも空間接続魔法が使われているんじゃない? この穴の奥が槍の柄に繋がっていると。排莢側も背中の穴から飛び出て」

「土玉に変化する、か」


 すると私は思い出したように弾倉を取り出して示した。


「ちょっと待って? これ、弾が入ってない」

「「え?」」

「た、多分これって収納魔法か収納術から直結していると思う。槍の持ち主が弾を持っていたら取り出せるとか」

「ちょっと待って。この口径なら予備があるよ。とりあえず剣帯と弾倉をはめて」


 マリアが私から弾倉を受け取り左右にはめた途端、槍の中でガチャっと音がした。


「これって一発目が装填されたって事だよね」

「撃ち出せる弾は槍者の魔力量次第って事か」

「完全にマリアの武装になっちゃったね?」

「背中から土玉が出る仕組みが改善すればね」


 やっぱりそこだよね。とはいえ、この状況でも造ってしまうシュウは侮り難いね。




 シリアスブレイカーかな?

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