第7話 眠る前の自主訓練、
俺が倒れて目覚めた日から数日後──。
色々と目覚めた俺は大人達の洗礼を済ませていない幼子は魔法を使うものではないという価値観に気づき以後は自力で成そうと思った。
成そうと思い暗い部屋で眠りつつ訓練する。
(他力本願は痛い目を見る恐れがあるから今は見た魔法を覚える事に尽力してもいいかもな。両目の魔眼こと蒐集眼は一度見た魔法なら魔力の流れから全ての魔法陣を読み解いて瞬間的に覚えて無詠唱で行使出来る事も分かったし、俺のチートは魔眼か)
それは父様を始めとする親族一同、家令や侍女達が「魔法はまだ早い」の一言で返したからだ。ただ「気になるから使ってみたい」と言っただけなのに、どんな魔法を使うかすらも考えず、苦笑する母様とサヤを除く全員から総じて拒絶された。
母様とサヤだけはコソッと教えてくれた。
(やっぱり魔力量が関係しているみたいだな。自分自身を鑑定した限り出来なくはないが、いざ行使すると怪しまれる事だけは分かったもんな。母様は『書庫にこもって声に出さず呪文を覚えなさい』とだけ言ってたし)
魔法を使うには魔力量が関係している。
それは唯一理由を述べてくれたサヤの一言で発覚した事だ。誰であれ詳しい理由を教えてくれなかったのにな。なんでも俺と同じ歳の末妹、俺の誕生日から五日後に生まれた末妹からも同じように問われたとあり『内緒ですよ』っと困り顔のまま答えてくれた。
『呪文を覚え事も大事ですが、その前に行うのは魔力を意識的に認識して練り上げ、全身に循環させる。それと共に眠る前、意識的に魔力を放出して限界まで使えば翌朝には魔力が増えます。魔法行使に近道など御座いませんからね』
優しく微笑みながら教えてくれたのだ。どれだけ強請っても誰もが示さなかった訓練方法。
これも本来なら洗礼後に訓練する事を教えてくれた教えるのは侍女のサヤだとも。
だが、俺にとっては増やすよりも制御力を得るための訓練になってしまった。
(今はまだ精密射撃とまではいかないけど、魔力を縦横無尽に動かすだけで、何処に魔力があるか分かって大助かりだな。魔力感知万歳!)
記憶と共に使い方を思い出した俺は自分自身に〈人物鑑定〉を行使して色々知った。これは恩恵の〈魔導蒐集〉に含まれた〈恩恵技能〉なるもので他にも沢山の技能が内包されていた。
左目に映る情報は自身のステータス。
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名前:シュウ・ヴィ・ディライト
家格:ディライト辺境伯家・三男
年齢:二歳
性別:男
職業:なし/なし
恩恵:害意鑑定
魔導蒐集
技能:読書術、算術
魔力:無制限(自動偽装/五〇〇)
体力:一〇〇/四〇〇
知力:一〇〇/一〇〇
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俺の持つ魔力量は初っぱなから無制限となっていて、横に自動偽装で五〇〇と現れている。
これも最初は二しか無かった。
だからこの数値がどのような物か知るために鑑定情報を視界内に映したまま、全身に隈なく行き来させた。すると二から三に、三から四に増える事を知った。本当ならば無制限魔力を隠すための数値なのに、今では魔力制御値として見ている。
そして右目に映る内容は詳細ステータス。
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婚姻:なし
爵位:なし
装備:長袖シャツ、半ズボン
髪色:銀髪/短髪
瞳色:碧瞳/魔眼(蒐集眼)
善悪:善人
害意鑑定:悪意、善意の判別、偽善も可
但し、詳細と思考までは見えない
魔導蒐集:瞬間記憶術(イメージ記憶)
魔力無制限、魔力回復無制限
無詠唱、陰詠唱、詠唱短縮
魔力感知、魔石生成、魔力譲渡
魔力吸収、魔力隠蔽、魔力鑑定
魔法解析、魔陣創作、呪文創作
魔導書庫、魔導鑑定、魔具鑑定
人物鑑定、有機鑑定、無機鑑定
読書術:速読・一度読んだ書物は忘れない
算術:四則演算を暗算で行える
耐性:痛覚耐性(一〇〇/一〇〇)
状態:正常(正常)
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それを見ると自分自身の両目にも蒐集眼という魔眼が備えられていた。鑑定技能とは無関係なようでいて結構関係がある魔眼だよな。
この魔導蒐集には驚くような恩恵技能も含まれていた。スウ姉さんの持つ恩恵がその中に含まれてある事を知ると翌年に得るジョブが魔導師のように思えてならない。
他にも使い道が分からない恩恵技能も含まれているが、これも追々使う事になるだろう。
(割と無意識に使っていたりもするけど)
ただこれも自分で見る分には問題ないが、他者に覗かれると不味い部分は全て偽装と隠蔽を与えた。先天性の恩恵持ちとか危険過ぎるし。
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名前:シュウ・ヴィ・ディライト
家格:ディライト辺境伯家・三男
年齢:二歳
性別:男
職業:なし/なし
恩恵:なし(隠蔽:害意鑑定、魔導蒐集)
技能:なし(隠蔽:読書術、算術)
魔力:無制限(自動偽装/五〇〇)
体力:一〇〇/四〇〇
知力:一〇〇/一〇〇(偽装:二)
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───────────────────
婚姻:なし
爵位:なし
装備:長袖シャツ、半ズボン
髪色:銀髪/短髪
瞳色:碧瞳(隠蔽:魔眼(蒐集眼))
善悪:善人
耐性:痛覚耐性(一〇〇/一〇〇)
状態:正常(正常)
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その最たる恩恵技能の瞬間記憶術、これが俺の持つ魔眼と連携している事だけは分かった。
(イメージ記憶で全ての魔法を一瞬で覚える)
果ては誰かのオリジナル魔法であろうとも一瞬で模倣出来る事も知ったのだ。ただこれは危険過ぎるからやらないけどな。他者の成果、パクリ疑惑はどの世界でも危険って感じだし。
(それで覚えた魔法を詠唱短縮の鍵言のみで発動っと【照明】)
それは最初に失敗した魔法。
暗い室内を照らす魔法。
明るさは与える魔力量によって異なる。
今は制御した魔力で少量だけ。
暗い室内、ベッド上で一円玉ほどの球体を作った。大きく光らせないよう、気取られないよう、光量すらも控えめにイメージした。
(見た感じ、豆電球くらいの明るさかな)
暗くはないが明るくもない。
それを横になったまま傍らに浮かせて眠る。
同じ大きさの灯りを寝ている間も維持するイメージで。室内灯の無い暗い部屋だと、この手の灯りがあると色々助かるしな。
(室内を照らすのは全てロウソクときたか。魔法で全て賄っているってわけでもないんだな)
魔法文明と機械文明を持つ国家といえど、異世界と同じ認識は出来ないということだろう。
(その大半は国防のみに使われている、か)
平和のための魔導具や人形ではないらしい。
その全ては他国との戦力差を維持するために注がれているようだ。そう考えるとえらい大変な世界に生まれ落ちたよな、俺。
(機械文明のマーシナル帝国が、魔法文明のドゥリシア王国に宣戦布告も無いまま攻め入り、領土割譲の一歩手前で我が国、オールトン王国が助太刀して押し返した。今は和平交渉中とのことだけど、どうなることやら?)
というより我が家が辺境伯家と知った時は、
『目と鼻の先で戦争してんじゃん!』
そう、叫んだのは言うに及ばず。
それを聞いて目を丸くしたサヤが言うには素通りして王国へと攻め入ったとの話らしい。
助太刀したのは俺の母様で優しい母様は、実は恐ろしい母様だとその時に知った俺だった。
何でも人形師として超一流で銀毒を使う数万の軍勢に対して数千で相対したとの話だ。
この一言から母様怖いになった。
極めるための第一歩が開始された。