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転生人形師は理想の嫁を追い求める。〜こじらせ人形師は実在女に「興味が!」モテない〜  作者: 白ゐ眠子
第四章・王宮中は大騒ぎ!

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第68話 許容量は相手次第。


 マリアの別の姿を見た気がする──。

 マリアと初めて会ったのはデビュタントだったが、その時は常に周囲の目を気にする女の子だった。それがある事が切っ掛けで別人に変化し今は私の目前で真剣な表情を示している。

 シュウが自重無しで地下を造ったのは階段を降りた時点で諦めがついたから別にいいが、銃器という杖を受け取った時のマリアの歓喜とテーブル前に立った時の落差が激しくて私は呆気に取られてしまった。

 その後も魔法弾では鳴らないはずの大きな音が十回響き、人型の胸と頭に計五発ずつが突き刺さっていた。それらは思考魔核の入っていない廃棄人形。

 それをそのまま流用したようだ。


「す、凄い」

「狙撃術が生えたから、ここからが本番だな」


 私が呆気に取られたままマリアの姿を見ていたら、シュウが何を思ったのか収納術から小さい魔導具を取り出して操作した。


「え? ほ、本番って?」

「射程をのばすぞ、耳の遮音具を忘れるな!」

「ほーい!」


 返事の後に人形が奥に向かって消えていく。

 これほどの距離をどうやって稼いでいるの?

 するとシュウは楽しげな笑顔を浮かべ、


「空間属性って極めようとすればするほど上限が無いって気づかされるよな。あれは擬似的に奥の壁面を縦長の空間で拡張したんだよ」

「か、拡張?」

「現状は俺が東部の敵将を討った時の距離だな」

「は、はい?」


 私に説明をしてくれた。

 ただ、言っている意味が分からない。


(東部の敵将って何時ぞやの、あれよね?)


 あの時の距離をこの場に再現していると。

 直後、先ほどよりも大きな音が室内に響く。


「今の音なに?」

「弾を変えたからな、本来はあんな音が出るんだよ。飛距離を出すために魔力量を最大限まで与えた物を使ったからな」

「は、は、はい?」


 私の驚愕をよそにマリアの撃ちだす数が増えていく。時には弾倉と呼ばれる容器を慣れた手つきで交換していく。監視魔法で的を見ると驚きの状況を示されてしまった。


(ま、的が動いてる! しかも縦横無尽に動き回ってる、それをマリアが一体ずつ急所を狙って倒してる?)


 マ、マリアって人形じゃないよね?

 首輪が無いから人間だ。

 私が驚愕のままマリアを見ていると、


「さてと、俺もやるか。シャル達も来たな」

「はい、兄様。よろしくお願いします」

「よろしくお願いします、シュウ様」


 扉から侍女服を着たシャル達が訪れた。

 私はマリアの背後に立つリーシャを見つめたまま、人形達の挙動に意識を持っていかれる。


(もしかして、これらの訓練風景を示す事で人形達に学習させるつもりなんじゃ?)


 シュウ達は当たり前に使えている兵器だ。

 だが、それでは父上達が納得出来る理由にはならない。人の身で未知の兵器を使う。シュウ自体が帝国兵と変わらない野蛮人となるから。

 だから人形の使う兵装とした。だが、元より未知の兵器だから覚えさせる必要があった。


(人形も人と一緒で、知らない状態で渡したからといって完璧に使えるわけではないものね)


 使い方は見せる、使わせる、覚え込ませる。

 見せるとはリーシャに対してマリアの姿を示す事だ。使わせるとはシャルに対して手解きしつつ示す事だ。覚え込ませるとは、それらの人形達の記憶を複製して次世代人形に与える事だ。シャルもリーシャも試作人形だもの。


(シュウは自分の訓練とか言ってるけど、その本質は人形が最優先なんだね。私も負けてられないなぁ〜)


 すると今度はミヤがひょっこりと顔を出す。

 地下倉庫に移動してガサゴソと中身を漁りだした。まさかミヤまでも使えたりするの?


「僕もやる! えっとリボルバーはあるかな」


 部屋の設置作業はもう終えたって事?

 入口でぼろぞうきんも落としていたが。


(今度はルイスまでも連れてきたんだ)


 しかもカミナ姉様まで連れてきてるし。

 そんな私の驚愕をよそにミヤは構えて、


(えぇ!? 様になってる。普段の残念女子が消えてるんだけどぉ!)


 計六発の土弾を的に命中させていく。

 するとカミナ姉様は布一枚の格好で私の隣に立ち、三人の行動を真剣に見つめ始めた。


「使っているのは身体強化魔法だけ?」 

「杖の魔石で魔法を発動させているね」

「それって無詠唱って事?」

「魔法陣だね。今のマリアは例外魔法以外は身体強化魔法しか使えないし」

「例外?」

「それはあとで教えるけど、あれは初級魔法を術陣に書き換えて魔石に付与しているの。その魔石の魔力で魔法を発動しているみたいだよ」


 魔導師の恩恵を使って把握する姉様。

 驚愕しつつも雰囲気は真剣そのものだった。

 私は分かる範囲で補足説明を入れていく。


「魔法陣作成って専門で習う物だったはずだけど? この中に使える人が居るの?」

「姉様の恩人だけだね。魔法文字を全て理解しているのは三人だけだけど」

「え? さ、三人とも年下よね?」

「年下だね。ルイスにも言ったけど、姉様の遅れはミヤとマリアが教えてくれると思うよ」

「ほ、本気なの?」

「本気だよ」


 というところでミヤが小型の杖からとても大きな杖に乗り換えた。何処から持ってきたの?

 私達を無視するかのように三人は会話する。


「ところでシュウ様、対物ライフルなんて使い道あるの? 大口径とか燃費が悪そうだけど」

「あのバカの事だから、あるだろ?」

「なるほど、それはあり得るね」

「普通にあり得ると思うよ。平然と戦車くらいは用意すると思う」

「海があるし艦砲射撃もしてきそうだよな」

「それはあるね、絶対撃ってくるよ」

「そういえば海軍ってあるのか?」

「一応あるね、ガレー船だけど」

「ああ、カレー煎を食べたくなった」

「面白くないマリアは飯抜きな」

「がーん! せ、せめてパンだけは恵んで!」


 大きな音をさせて訓練しながら平然と会話を行う三人。シャルとリーシャは気にせず別の訓練を始めていた。その空気を読まない様は造り主と同じ者のような気がしてならない。

 一方、これだけの轟音の中、


「ルイスはまだ寝てる」


 ぐーぐーと寝息を立てていた。

 大物だねぇ。流石は辺境伯の子供だ。

 目前の辺境伯の子供も大物達だけど。


「頻繁に小競り合いが起きてる領地に住んでいたから、これくらいの轟音は平気でしょうね」

「そうなるとあれも帝国と同じ魔法なの?」

「帝国のあれは魔法ではないですよ、姉様」


 姉様は洗脳術が解けてからは帝国に対する認識が変化していた。というより学習を始める前に舞い戻ったような感じだ。洗脳術の解放と同時に学んだ記憶が消え去っているからね。


「魔法ではないの?」

「ある特殊な薬品を利用した物らしいですよ。私も組成は知らないので明確にどのような物かは分かりませんが」


 それでも夢見心地で何をやってきたかは覚えているらしい。私に毒を盛ってきた事とか。

 再会した途端に何度も謝ってきたしね。

 血肉を分けた愚兄は相変わらずだけど。


「な、なら、帝国の手法を魔法で再現しているということ?」

「そうなりますね」

「そ、それなら、成人と同時に叙爵するの?」

「マリアはそうなりますね」


 やっぱり叙爵と思うよね。

 それ相応の功績を持っているから。

 だけど、その認識には間違いが存在する。


「但し、シュウは大公家をミヤは伯爵家を継ぐ事になりますね。私も降嫁が決まってますし」

「え、お、王位を継ぐつもりは無いの?」

「最初から無いですね!」

「そ、そんな。わ、私はなんてことを」

「異常事態だったんです、仕方ありません」


 今はそう言うしかない。

 全ては帝国の行いのせいだから。

 姉様を抱きしめた私は頭を優しく撫でた。




 本音を語る妹姫。姉姫は唯々後悔する。

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