第57話 火中の栗を拾った、
セリィヌ辺境伯領までルイスを迎えに──。
行った時、たまたま屋敷の前にて第一王女が母親こと正妃様の父親と面会して願われた。
俺はその時に知った、正妃様が子爵家の御出身だということを。側妃様は辺境伯家の御出身で同時に見初められたという。それがどういうわけか家格無視で順序が逆になっていたのだ。
(これは俺の身にも降り注いできそうな話だな、実在女と関係を持つのは正直気乗りしないが同時はやめておいた方がいいわ。前例は必ず覆すが俺のモットーだし)
理由を聞けば正妃と側妃の順位は子供を宿した段階で決まるとあった。同時期に二人と関係を持ち、排卵時期の関係で側妃様は御懐妊しなかったとの話だ。皮肉な事に両者とも主従関係があったから一時期は揉めたそうだが、今はそこそこ仲が良いとの事だ、それも表面上だが。
(その内に宿す感情は別にして、だな。皮肉な事に主従関係が悪さしたからか知らないが継承権を持つ人形師に選ばれ無かったのはキツい話ではあるな。後宮内はギスギスしていそうだ)
サーシャの母様が表に出てくる事はあまり無いが、公務そのものは行っており常に何処かしらの国境線近くに居るとの話だ。職業は剣士。
戦う側妃というのも不思議な話ではあるが、正妃様が騎士との事で王太子殿下の御身を護っているのも正直微妙な話である。
願われた時にルイスとルイスの両親も居たので共に白けたまま対応した。
「孫のやったことは許されないかもしれない、ですが、許されない事だとしても、あの仕打ちは酷いと存じます!」
「あれは殿下自身で招いた種だろ」
「殿下は操られていただけです!」
「言い訳としては最上級だが、それで自身の罪を無かった事には出来ないぞ。ユルイ元子爵」
セリィヌ辺境伯の言い分がもっともだわ。
間諜と知ってか知らずか招き入れた罪は重い。それで孫が侵されて大怪我を負ったのだ。
ユルイ子爵は奴の捕縛時に取り潰しとなり、正妃様に無関係を貫き通されて平民に下った。
正妃様は伯爵位をお持ちで実家とは異なる家でもあるため、それが出来た。
「うっ、ぞ、存じております」
その言葉を聞いた俺は会話に割って入った。
「これは貴殿が間諜を招き入れて貴殿の孫を染めたという話ですからね。その結果が殿下を半死半生にまで陥れる行いだっただけ。それも禁輸品の火薬を手に入れて用いた。どちらが悪いかは火を見るよりも明らかでしょう。それで被害に遭って孫が可哀想だから助けろとは虫が良すぎる。それを貴殿は理解しておいでか?」
「くっ」
何でそこで苦渋なんだ?
これは分かってないな。
その後も話が二転三転して無理と返した。
そもそも神父が居るのに出来る話ではないだろ、可能なら俺を捕縛してこいと命じられただけだろうからな。そのまま帝国に連行して色々やらせたいに決まっている。
そういう思惑を看破した俺は先の件と併せて報復行動に出た。しばらく内部で遊んでいろ!
(やはり、ブチかますか。えっと、教会本部の場所は最果てと言っていたが帝国国内じゃねーか。帝国国内の最果て、いつの間にか占領されていたって事だな、完全な敵か。最果ての神殿直上に目印をマーキング、複製した誘導ミサイルに空間迷彩を施しつつ帝都の端に配置、監視カメラの動きが死角に入ったら全弾発射! 見事に教会本部が木っ端みじんと。帝国製の火薬だ、存分に疑心暗鬼になって内乱していろ)
今回は帝国製の金属を模倣した躯体に火薬を放り込み、魔法で出来る範囲の誘導弾を造り込んだ。炸裂直前には魔法的な形跡を全て滅する仕組みを入れているから視認した時にはもう遅いってな。これで仮に騒がれても疑われるのは帝国だ。残骸の形式番号から疑われるからな。
これも無線波を魔法的に利用して、あちらにある古臭い端末に神官アカウントでログインして調べまくった。神官アカウントと言いつつ四桁の暗証番号、しかも全て一つに固定でザル過ぎた。外部は検問所などでガチガチだが内部はザルって抜かれないと油断している証拠だな。
ただな、
(見覚えのある称号持ちが居たわ、あのバカはこの世界に転生したのか。それが帝国に利用されているとは皮肉過ぎる。自分の造ったシステムは完璧と豪語するところは相変わらずだけど使う側が無知ってところに意識を向けていないのは毎度の事ながら滑稽だわ、助かったけど)
どういうわけか元サバゲー仲間がこの世界に居た。高一の頃に紛争地帯に出かけたまま死んで、この世界に転生して各種紛争を招いているのだからやりきれないが。中途半端な知識とか自意識が無駄に高いところ、ツメが甘いところも相変わらずだった。それが功を奏したけど。
奴の悪い癖は完璧と豪語したら改良も何もしない事だ。当然、反省もしないから周囲に責任を押しつけて、トンズラする事まで読めた。
とはいえ情報を抜き取ると履歴が残るので視認したうえで帝国試作用形式番号を拝借した。
結果、教会本部は阿鼻叫喚となり帝国憎しという展開になった。要らないと分かると消しにかかるのは帝国の常套手段だから、それを利用したまでだな。
それはともかく、案の定、気持ち悪い笑顔の神父から「だから言ったではないですか」と言われ連行されていった。
これも教会の教義に反する物言いで異端審問にかけられたに等しい言動だ。人形の部位を人に宿すのは禁止という決まりが存在するから。
(その教会本部も今は大荒れだけどな?)
それと同時に教会本部を見ると分派的な文言が見えた。本部と言いつつ本当の本部は別にあるという扱いだろうか? それを調べるとドゥリシア王国の地下深くに存在していた。
(ああ、これは見なかった事としよう)
存在していたが、内部に住まう者からニコリと微笑まれた。ゾクッとしたな、代わりに恩恵が追加されていた。お礼とでも言いたいのか?
(マジか、悪質分派を消した、お礼なのか)
こんな事ってあるんだな。気まぐれか?
(まぁいいか、すげぇ助かるし)
得られた恩恵は〈状態鑑定〉人形と人を問わず正常と異常のそれぞれの違いを比較出来る。
しかも魔眼まで変化して〈蒐集鑑定眼〉になっていた。これで常時、正常と異常が見分けられる事が出来るということだろう。
四つ持ちとか騒がれるから隠蔽するけど。
(無理と返したがやらないとは言ってない!)
今のままではサーシャが不穏分子達に悪者とされて反乱されでもしたら堪らないからな。
御旗の片割れが残っているから、そちらが動いたら国内は内乱と化してしまう。
一先ずの俺はルイスを連れて王都に転移し、
「ホント、大変だな。お前も」
「ああ、火中の栗を拾ってまで孫を救いたい気持ちも分かるけどな。時と場所を弁えたなら」
「話は変わっていたかもな」
「神父の耳目がある場では」
「一緒に裁かれろと言っているのと同じだな」
「それでこのままどうする?」
「王宮に上がれって爺様から言われてるわ」
「ああ、軍務大臣だったか?」
「孫が特士校に入るから、自慢したいんだと」
「大変だな、お前も」
そのまま王宮へと送り届けた。
ルイスと一旦別れた俺は街に戻り、第一王女の居る治療院付近を彷徨った。そして治療院から出てくる頃合いを見計らい、あまり使いたくない闇魔法を彼女に対してあてがった。
(これで正常っと。ただなぁ魅了にも似た効果が最初だけ現れるからやりきれないけど。王侯貴族にすると一時的か、平民は継続なのにな)
一瞬、目が合ったが、そらした俺だった。
何処から何処までが思惑なのか?




