第49話 怪我の功名って奴か、
俺のやらかしは隠れる事なく──。
告げ口という悪質手法で教師に伝わり晴れて無事、停学処分と蟄居になった。
「これで王位継承権が消えてくれれば万々歳」
「まぁた、そういう事を言う」
「悪意に染められた場所が性に合わなかっただけだよ」
「それは分かるけどねぇ」
ミヤとサーシャは被害者扱いで寮に残り、俺は教師達から異質な生徒扱いを受け、陛下の沙汰ののち退学となる予定だ。
「で、その問題物は何なの?」
「セリィヌ辺境伯から報告は上がってない?」
「ええ、魔導師部隊が一方的に負けていた小競り合いで敵将の頭が爆発して帝国兵が恐怖に染められて撤退した報告でしょ?」
「それが、これの結果だよ」
「その杖がなんだっていうの?」
まさに前代未聞の問題児、よく分からない魔法で友達の怪我させた。よく分からない魔法で治療した。異物は受け入れ難しと味方になる者を取り込み、反対意見を封じて潰しにかかった。
「問題は別の拳銃にあるけど、帝国将兵を狩ったのはこの狙撃銃なんだ」
「え?」
「細長い金筒、先を見たら赤い魔石が尖った状態で収まっているでしょ」
「ええ」
「魔石は初級が込められていて魔力は最上級に匹敵する分量が圧縮されているんだ」
「初級で最上級の魔力? そんなの行使出来るわけが」
「そう思うよね? 実は瞬間的に一点集中させたら高速で飛ぶ弾に変化したんだよ。この拳銃、小さな鉄塊だけどこれも例外なく近距離から中距離までなら撃てるんだ。この狙撃銃は中距離から超長距離なんだけどね」
これらも校内の全てが帝国に染められた影響下だ。染められた者は染められた事に気づけるわけもなく一方的に弾劾する。殺せと叫ぶ者が居たし。
それを聞いたサーシャと学長が叫んだ奴を不敬罪で同時に殺していたけど。
そうして今は自室で母様の尋問を受けていた、シャルは控えたままだが。
すると母様は難しい顔で俺の右手を引いた。
「はぁ〜、これは聞くだけだと分かり辛いわね。蟄居となっているけど限定的に城壁まで連れて行こうかしら」
「ここからでも出来るよ。わざわざ危険を犯してまで外に出る必要はないし」
しかし、叔父上の命令は絶対であるため俺は首を横に振る。母様といえどそれを撤回する事なんて出来ないから。
「そうなの?」
「射出音も鳴らないし軌跡も掴めないしね。射点も魔力隠蔽されているから掴めないんだ」
「その言葉の意味を教えて貰わないと分かり辛い話ではあるのだけど」
「ものは試しに見てみてよ」
「これは?」
「魔法を使わず長距離を覗き見る道具だよ」
「そうなの? え? え? え?」
双眼鏡を受け取った母様は窓から外を覗く。
スコープ越しに映っているのは偶然か必然か知らないが帝国軍の軍勢だった。いつの間に集まっていたのか分からない。おそらくこれも別の間諜が報告して潰しにかかっている証拠だろう。簒奪一歩手前では?
屋敷の照明も赤色に変化しサイレンが鳴る。
緩衝地帯中の国境を越えたようだ。
「これは凄いわね。軍勢にしても肉眼で見えない遠方を見る事も、即座に招集をかけないと」
「多分、間に合わない。先の戦争のように」
「先の機動力が我が国に向いたのね」
「宣戦布告せずに攻める野蛮国家だね」
「困った国だわ」
スコープ越しで見ると徐々に距離が詰まってきている事が分かった。あと少しすれば肉眼でも視認が可能になる速度だ。
現段階で集めたとしても間に合わない。
母様の人形は先の戦争から数が揃えられていないしな。水銀に汚染されて廃棄して数体しか残っていない。それを好機として襲ってきても不思議ではないのが帝国の狡猾さなのだろう。
「とりあえず、軍勢の中で滅するべき相手を教えて」
「え、ええ、一番奥、金兜の、帝国将兵」
「了解、弾は風弾を選択して装填、照準補助を起動して照準を合わせて、ふぅ〜」
「え、頭だけ落ちた?」
「無事死亡を確認、次は」
「え、ええ、左右両翼に陣取る銀兜、先ほどの将兵は大将だったのだけど?」
「そうなんだ。なら先に銅兜を片付けるよ。銀を狩っても止まらないからね。異常事態に気づかせない事には戦意喪失しないから」
て、ことで淡々と獲物を狩っていく。
全て風弾のみで行う。撃った直後は風の塊だが近づくと風刃に変化して泣き別れ刑となるのだ。火弾なら突き抜ける水弾なら突き抜けつつ水の膜で覆う、土弾なら突き抜ける前に分散して散弾のようになる。
効果は見ていないがそういう風に付与した。
「敵軍が異常を察知して速度が落ちたわ」
「最後に土弾をぶち込もうか」
「え、ええ」
母様は茫然自失だな。
どちらかと言えば安堵している風でもある。
これを見ると蟄居も必然かもな。そうしないと滅びを招いていたから。
弾も手動装填から弾倉に変更した。
最後は右へ左へ土弾を広範囲に発射した。
時間差で土弾の弾幕が出来上がる。
鎧を一瞬で突き抜ける石礫。
「散弾の広範囲展開を確認、敵死傷者多数」
「幸か不幸か、救われたわね」
出来て良かったのか疑問に思っていた銃。
これが必要というように造り出された。
昔は全然出来なかったのに不思議だわ。
技能にも狙撃術が生えてしまったし。
今なら弓矢でも射殺す事が可能かも。
小型ボーガンも造っているしな。
「そのまま撤退したね。父様が遅れて兵を」
「伝令を寄越すわ、撤退したって。それとこの道具、各辺境伯領に配備していい?」
「それって双眼鏡の事だけだよね?」
「出来るならそれも、と言いたいけど」
「これは訓練が要る代物だよ?」
「訓練はどんな道具でも必要よ?」
「というか母様、これを使うならシャル達に任せた方がよくない? 各種技能を補填すれば出来ない事はないし」
「あ、それもそうね。失念していたわ」
わざわざ人の身で使わせる必要はない。
人の身なら暴発だってあり得るからな。
人形師が人形を忘れるのは困りものだけど。
シャルは苦笑したまま母様に進言する。
「母様、お任せ下さい。兄様は例外ですけど私にも同じ事は可能に御座います。むしろ兄様よりも遠方に居る者を裸眼で手動照準する事も可能ですので」
「ね? 人の身には過ぎた武器でも」
「人形の武器にすれば問題ないわね!」
今回の問題は子供が人の身で危険物を使った事が要因だ。それなら人形に持たせて戦わせた方がいいだろう。この国は専守防衛が基本となっていて攻め入る事など行わない。精々、友好国へと助けに向かう事が限界だから。
問題は教会という組織だけ。
「登録云々はどうするの?」
「それなら問題ないわ。人形は登録させろと言うけど、人形の持つ兵装までは関知しないの。帝国が兵装登録を拒んでいる以上は我が国もドゥリシア王国も突っぱねる事が可能だわ。もしそれで文句を言ってきたら帝国に登録するよう命令しろと返せばいいわ。拒否すれば敵と見なして教会を追い出せばいいし。これはドゥリシア王国も賛同するでしょうしね」
なんだ、帝国も拒否しているのか。
片方は許して片方は不許可なんて出来ない。
そんな事をすれば教会は犬だと認める事になる。この問題はそのままドゥリシア王国にまで飛び火して、対帝国軍・対教会軍という構図に早変わりだ。それは教会としても望んでいないだろう事は明らかだった、神が許さないから。
神の言う〈中立であれ〉その教えを教会が無視したら存在価値が消え失せる。
この一報は陛下へと到達し晴れて無罪放免となった。大軍相手に国を護った功績。
敵の用意した冤罪で覆る事は無理だった。
「退学が遠ざかるぅ」
「困った子だわ」
意図せず祖国を救った件。




