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転生人形師は理想の嫁を追い求める。〜こじらせ人形師は実在女に「興味が!」モテない〜  作者: 白ゐ眠子
第三章・子息子女は大騒ぎ!

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第48話 自重は無理だと知った。


 それは授業の終わりの出来事──。

 ミヤが急にシュウを怒鳴った。

 私は本日の板書をインベントリに片付けながら二人の様子を眺めた。


(一体何を言い合っているの?)


 教室内の生徒達も真上で行われる口喧嘩を眺めつつヒソヒソと噂話に講じていた。無能と有能な男の子達が喧嘩しているとか、今の内に二人を引き剥がすとか何とか、未だにシュウの事を無能と宣う精神だけは呆れてしまうが、私の関心は二人の様子に向かっていた。

 するとシュウが何を思ったのか、黒鉄塊をダルモ・ヴィ・リスカ騎士爵子息に向けつつ片目を瞑って何かを行った。その何かとはよく分からない。結果だけ見るとシュウを睨んでいたダルモ殿が急に呻き大きな音を立てて額を机上に落とした。

 それを見たミヤは頭を抱えて溜息を吐いている。ミヤはシュウが何を行ったのか正確に理解して注意した。直後、ダルモ殿がスクッと立ち上がった。ダルモ殿は自分の身に起きた事象にきょとんとしつつ、周囲の友達から笑われていた。


(一体何をしたの? 見た感じ、凄い速さで魔力の塊が飛んだように見えたけど)


 魔力感知を有効にして確認すると一度目では分からなかった変化が見えた。すると今度はシュウが窓を開けて黒鉄塊を上空に向けた。

 直後、魔力ではない水塊が黒鉄塊から吐き出された。その速度は先ほどと同等。

 窓際に立っていた高位貴族の子息子女達は呆然としつつ空を見上げる。


「え? 今の何?」

「鳥が落ちた? ここから魔法を?」

「見えなかった。何したの?」


 魔力感知持ちがギリギリで視認出来た軌跡。

 感知出来ない者からすれば驚異でしかない。

 それを魔力も練らず撃ち出したシュウは何故かミヤと共に驚いていた。


(造った本人が驚くって何なの!?)


 どうもシュウ自身の想定外があったようだ。

 今度はシュウの身長と同じ長さの黒い杖が出てきた。形状は歪の一言に尽きる。

 美しさの欠片もない不可思議な形だった。

 ミヤはそれを理解したうえで怒っている。

 シュウは黒い杖から足のような物を取り出して窓枠に置き慣れたように構えた。


「超長距離まで見えるわ。ほれ、双眼鏡」

「もう! 一発だけだよ?」


 怒っていたミヤはシュウから黒い塊を手渡されると渋々それを覗き込む。

 しかも二人揃って窓際に立ったまま。


(一体何をしているの?)


 その行動は実に不可解で無能が何かしていると周囲の者達も囁いていた。ミヤもシュウもそんな有象無象の言葉に耳を傾ける事はせず、例えようのない表情で窓外を眺めていた。

 黒い塊を覗き込んでいたミヤは驚きながら、


「この双眼鏡、魔法的な補助は?」

「使ってない。補助無しで倍率だけ限度知らずにあげている事かな。このスコープは補助ありだけど」

「何枚レンズをはめてるの?」

「覚えてないな。丁度良い感じで東部に攻め入っている帝国兵が居るから火弾で撃ち抜いてやるわ」

「どれだけの距離を撃つつもりなの?」

「ピンともこないな。っと、吐くなよ?」


 意味深な会話を続けている。


(帝国兵? 東部というとセリィヌ辺境伯?)


 シュウの口から帝国兵と火弾という言葉から私を含む生徒達は首を傾げた。一体何をしているのか? それが私達の共通認識だ。

 直後、シュウは深呼吸を繰り返し一瞬だけ息を止めて何かした。黒い杖の先から出たのは目で追えない速さの火弾だった。


(え? い、今の何?)


 黒い杖は金色筒、赤い魔石を埋め込んだ筒を真横に飛ばしていた。

 黒い塊を覗き込んだままのミヤは頬が引きつったままシュウを横目で見つめる。


「吐くって? あ、ヘッドショットしてるし」

「脳漿どばぁだな。殺しの忌避感が無いわ」


 ミヤの言ってる意味が分からない。

 シュウの言葉から殺した事だけは分かった。


(教室に居ながら何をしているの? 脳漿?)


 シュウの言葉を聞いたミヤはあっけらかんと応じ黒い塊をシュウに返そうとする。


「価値観がこちら側だからじゃない?」

「そうかもしれん。ミヤは?」

「現実味がないね」


 シュウは収納術の中に黒い杖を片付け、床に落ちた金色筒を机に置いた。机の上には形状の異なる同一の筒が複数個転がっていた。

 ミヤから黒い塊を返してもらったシュウは窓を閉めてミヤと共に椅子へ座る。

 それを見た私は好機と思い、


「なんです? 今の黒い杖は?」


 思ったままに問いかけた。

 私達の理解を超える代物を示されたのだ。

 私には知る権利もあれば伏せる権利もある。

 シュウはミヤと目配せし困惑顔となった。


「一言で言うと特級クラスの危険物。戦いにおいて各種戦術が暴力的に破壊されるほどのな」

「は、はい?」


 この時点で頭に入ってこない。

 危険物? 各種戦術が破壊される?

 するとミヤが困り顔のままあっけらかんと、


「先ほどもやっちゃったよね。帝国将兵をこの場に居ながら瞬殺だもの」


 宣った。今、帝国将兵って言った?

 それを瞬殺したって? 帝国将兵っていえば身体強化魔法だけが使える化け物よ?

 複数の人形相手で勝てる化け物揃いよ。

 そんな将兵は少数だから我が国は国力差で勝てているけどそれが増えたら太刀打ち出来ないのに。なのにミヤはそれが瞬殺されたと言う。

 それで瞬殺、常識が崩壊する音が聞こえた。


「え、えっと、魔力は練ってませんよね?」

「練る必要は無いな。圧縮魔力を一瞬で解放するような物だから」

「リボルバーでも出来そう?」

「照準補助を使えば何とか」

「あれも補助ありだったっけ?」

「流石に距離がありすぎるからな。ちょっとのブレでズレるなんてザラだわ」

「流石はサバゲーの狙撃手だね」

「やり手観測手が何を言う?」


 私の驚愕をよそに楽しげに語り合う二人。

 言葉の意味がよく分からない。

 シュウは私に対し金色筒の正体を明かす。


「まぁ単純に説明するとだな。この薬莢──」


 えっ? 魔石に付与した魔法を瞬時解放?

 瞬時解放の圧力で魔法弾を撃ち出す?

 しかも全て初級魔法。


(た、戦いの概念が覆る!)


 何度でも再利用可能で距離は実質関係ない。

 何よりその威力が強大で弾が大きくなるほど破壊出来る範囲が広くなる。

 それを聞くと最初に言った「暴力的に破壊される」が現実味を帯びた。


「──まだ試してはいないが、大理石に穴を穿つくらいは出来るだろう」

「戦争に用いれば帝国すらも圧倒出来るけど敵を多く作るからおすすめしないかな? 驚異的な力の前では簡単に化け物と呼び、陰では揶揄するように無能と呼ぶような敵達と同じだよ」

「うっ」


 ミヤの皮肉はシュウの説明を聞いて青ざめた生徒達に突き刺さった。ミヤもシュウと同じように、危険性を理解しているように思えた。

 一先ずの私は皮肉で怯んだ事を良しとし、


「シュウはやむにやまれず公開出来ない実績がありますもの。敵対して勝てると思うなら是非にでも戦ってみたら如何ですか、ダルモ殿?」


 一方的に睨む相手を名指しして微笑んだ。

 私自身も腹に据えかねていたものね。

 シュウも塊を握りしめ私の提案に乗った。


「ならやるか、俺は魔法を使わずこれで相対するわ。流石に最上級魔法をぶちかますとダルモ殿が一瞬で消し炭になってしまうからな」

「だ、だ、誰がやるかぁ!!?」


 だが彼は叫びながら逃げ出していく。

 シュウは塊を握ったまま鋭い視線で射貫き、


「逃げたら殿下の騎士失格だぞ。殿下の提案を無下にするな!」


 ダルモ殿の右足に流血無き風穴を開けた。


「ギャーッ!」


 これが、この弾の威力。

 次弾は制服の穴を除く右足の穴が消えた。

 戦慄する教室内、敵対したらどうなるか。

 嫌でも理解させられてしまった。




 恐怖政治をしようとは思っていなかった。

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