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転生人形師は理想の嫁を追い求める。〜こじらせ人形師は実在女に「興味が!」モテない〜  作者: 白ゐ眠子
第三章・子息子女は大騒ぎ!

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第44話 不穏な気配が消失したよ。


 入学初日は最初から不穏だった──。

 隠されているはずの情報が当たり前に広まっていたり、シュウ様を一方的に省くような動きを示したり、あり得ない嘘に踊らされる者が多かった。

 その上、


(デビュタントから日数は経ってないのに、どうしてここまでおかしな事になっているの? 状態異常があり得ないほど出てるし)


 人物鑑定を行うとクラスの半数が魅了状態と出る始末だ。残り半数は僕やシュウ様と同じく辺境貴族の子息子女がほとんどだった。

 おかしくなっているのは全員が王都に住まう者達、サーシャ様の周りの男子達なんて魅了に染められた可哀想な者に成り果てていた。


(一体何が起きているの?)


 教師が入室したあとも不可思議な事が起きる。教師の罪歴が酷い事にも驚いたが教師のステータスが書き換わった事にも驚いた。


(技能は再取得不可、魔力も空っぽだ!?)


 気づける者は居ない。誰もが教師の言葉に耳を傾けて一心に見つめている。

 サーシャ様は様子がおかしいと気づいている、この雰囲気に覚えがあるのだろう。

 そうして授業が開始されると全員は羊皮紙を取り出し一心不乱に板書を始める。

 僕とサーシャ様は植物紙を取り出して流すように書き記す。シュウ様は黒板を見ているだけで板書していなかった。無能と言われたことを肯定するかのように何もするつもりが無いらしい。


(見ただけで覚える魔眼だもんね。あとで念写すれば、はい終わりって言ってたし)


 授業内容も初級魔法はどう使えば良いかとか基礎的な内容が多かった。僕からすれば復習程度の内容だ、それはシュウ様も同じだ。

 最上級魔法の行使可能な僕達からすればこの授業は児戯にも等しい。

 すると教師が、


「今から火魔法を実践する」


 そう、言って黒板にある数字と同じ数の火球を出そうとした。えっと魔力無しで魔法行使って出来たっけ? 出来ないよね、大丈夫なの?

 教師の詠唱を聞いていた僕は疑問と共に水魔法を即時行使する準備だけ行った。

 しかし、僕の不安は杞憂に終わる。


「このように三つの火球が出たな。あとは考えた通りに動かす事も可能だ。例えばこれを飛ばすなんて事も!」


 教師が長々と詠唱した直後、三つの火球が出てくるくると回っている。そして何を思ったのか手を振るようにシュウ様めがけて飛ばした。


(悪人ってこういう事もするのぉ!?)


 僕は咄嗟に魔法を打とうと準備するとシュウ様がニヤリと笑い、飛んでくる火球を簡単に避けた。避けた後の火球が何処に向かったと言えばポロ珍君、騎士爵子息達の真上に漂っていた。その状況に教師は挙動と違うと自身の右手を愕然顔で見つめる。

 笑顔のシュウ様は教師を眺めつつ、


「先生、いくら気に入らないからって自分より上の爵位を持つ家の生徒に、火球を飛ばすのは準騎士爵の先生でも目に余ります。学長に報告を入れましたので、衛兵が来る前に退室準備して下さい」


 教師に対して最後通牒を突きつけた。

 教師は愕然としたままシュウ様を睨む。


「ば、馬鹿にするな! お前のような無能の七光りは黙って授業を聞いていればいいんだ。大体、陛下も陛下だ、こんな無能に継承権を与えるなんて頭がおかしいとしか。与えるならカイナ殿下とすればいいものを」


 睨んであり得ない事まで口走る。

 それを聞いた生徒達も同じように同調する。

 するとシュウ様は満面の笑みに変わり、


「その暴言、いただきました!!『ば、馬鹿にするな──カイナ殿下とすればいいものを』不敬罪の証拠として提出しますね。やっぱり音声記録が無難ですね、言質としても、これ以上にない証拠となりますので!」


 右手に風属性の魔石を持って教師達や生徒達の暴言の数々を再生していた。


(録音魔法まで用意してるぅ!?)


 それを聞いた教師と同じく批判した生徒達は顔面蒼白となり魔石を奪おうと動く。


「か、貸せ! お前達、奪ってしまえ!」

「「「はい!」」」


 命令されて動いたのはサーシャ様の周囲に居た男子達。それを見たシュウ様は笑いながら魔石を消した。


「残念、学長の下に飛ばして差し上げました! 自分がやらかした行いは魅了に染められた生徒共々処刑場で反省しろや、カイナ様達を染め上げて帝国の傀儡に仕立てようとした間諜が!」


 ああ、間諜だったの?

 サーシャ様も愕然とし生徒達も正気に戻ったような悲鳴を上げる。命の危険を察したかな?


(状態異常が消えた。染められた男子以外は。魅了と看破したら消えるのか)


 第一王子と第一王女は傀儡要員だったのね。

 すると教師は怒りも露わな表情になり、


「ば、ばれたのなら仕方ない、この場の全員を魅了で染めてでも、お前を消してやる!」


 技能行使に及ぼうとした。

 あれ? 失っているような?

 それを見たシュウ様は数本の手錠を取り出しながら笑顔で返答し、襲い来る男子達にポンポンと付け、男子達は人形のように突っ伏した。


「残念、今のお前は赤子にも劣る。そのまま指を咥えて衛兵が来るのを待つんだな。こいつらもこれで、お前と同類の無能力者だ」


 無能力者、その意味に気づける者はどれだけ居ただろうか。無能が何か言ってる的な反応がほとんどだけど僕は気づいた、あれはやばい!


(はめただけで魔力と体力と技能が消えた!)


 なんて物を造ってるのぉ!?

 この時の僕はあるはずのない玉がヒュンとなった錯覚を覚えた。シュウ様はそのまま教師の腕にも転送魔法で手錠をはめた。教師は一瞬の事過ぎて理解出来ず、床に突っ伏した。

 シュウ様はあっさりと男子達を背負い愕然とする生徒達を無視して壇上へと降りていく。


(お米様抱っこしてるぅ。一人は浮遊魔法で浮かせてるしぃ)


 降りた先で検分するように所持品を調べだした。サーシャ様はようやく状況が読めたのか慌ててシュウ様の元に駆け寄って問いかけた。


「シュウ、これは何!?」

「犯罪者向けの手錠だけど?」

「手錠?」

「手枷と言った方がいいか」

「で、では、この手枷の効果は何!?」

「これは冤罪を除く、その者が持つ罪歴に反応する手錠で、はめられると技能と魔力と体力を根こそぎ強制剥奪する魔導具なんだよ。鍵穴の上にある魔石に奪った魔力が圧縮保存される」

「はい?」

「主に罪人専用魔導具だな。王家に類する者や善人、偽善者が付けても剥奪は起きない。体力を奪うのはただの衰弱魔法だけどな、圧縮保存した魔石を外せば国益になると思うぞ?」


 問いかけたはいいがきょとんとする内容だった。生徒達も異質な者を見る目に変わる。


(化け物って言いたいみたいだね)


 無能から化け物へと昇格したシュウ様。

 意を介さず、教師の所持品を検めだす。


(もう授業どころではないね?)


 僕が前に出て教えた方がいいかもしれない。

 というか僕もサーシャ様の隣に移動した。


「所持品に帝国へと通じる通信具か。無線があるのな、電力は電池ときたか」


 そしてシュウ様の隣に座り、中身を検める。


「帝国って、つまりはそういうこと?」

「可能性は高いな。周期表も帝国製だったし」

「あれかぁ。重曹の発端も帝国だったね」

「帝国には錬成師が多いとみて間違いないな」

「多くても行きたくないけどねぇ。実家よりブラックが過ぎる可能性が高いし」

「言い得て妙だな。こいつもブラックが嫌で間諜として出張っているようなものだし」

「そうなんだねぇ」


 そんなやりとりをしている間に授業時間は終わった。発端は教師の暴動だったけどポロ珍君は全責任がシュウ様にあるような熱視線をぶつけてきていた。授業の邪魔をするな的な、ね。




 やらかすつもりはなくても寄ってくる。

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