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転生人形師は理想の嫁を追い求める。〜こじらせ人形師は実在女に「興味が!」モテない〜  作者: 白ゐ眠子
第二章・入学前の大騒ぎ!

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第38話 息女にも敵わない。


 翌朝はミヤを伴って王都に向かった──。

 本日のシュウは領地に残って城やら(やかた)やらの魔光球設置に忙殺されるとの話だ。

 一方の私は王都観光を行うためシャルとリーシャを伴いミヤを元気づけようとした。

 元気づける。シュウとの婚約は示せないため『ごめんね』とだけ伝えると、察したのか哀しそうな表情を浮かべていたのだ。


(見た目は男の子の本物の女の子)


 おそらくミヤはシュウに惚れているのだと思う。初めて会った時は挙動不審になっていてシュウからお礼を言われるとモジモジと頬を赤く染めていたから。だが、ミヤがそんな反応を示したものだから隣に立つ父親からお尻を抓られていたけどね。ホント、困った領主だわ。

 王都の一角に到着した私達は手配した馬車に乗り込む。


(新しい連絡魔導具だから、監視と追跡はないみたいね。やっぱり通話が漏れていたとみて間違いないね、ホント、困った姉様だわ)


 その際に周囲を探索したところ、いつものように感じる不愉快な視線が無かった。大概、私が動けば追跡するように何かが居る。

 食事に向かえば給仕に扮して毒を盛ったり。

 休息で水場に向かえば上流で毒を流したり。

 視察でお茶をいただけば毒が入っていたり。


(何度となく毒殺しようと動けば嫌でも耐性が付いてしまうのよね。シュウが言ったように)


 それは婚約云々がステータスなる鑑定情報に載ると知り、見られないよう偽装を施してもらう際に教えて貰った事だ。私自身に毒耐性が生えていて最大にまで伸びているという。

 連日のように毒・毒・毒を浴びせられたらそうなるのは必定だ。それを知ってからは毒が怖くなくなってしまった、私には効かないから。

 しかも、だ──、


(二つの恩恵、一つは聞いていた通りだったけど、もう一つは教えて下さらなかったのよね。それをシュウから聞いて本当に良かった)


 私にもあったのだ、魔力感知が。

 教えられるまでは認識出来ないとの話らしいが、隠していた意図が読めなかった。それを叔母上に問うたら『触って感じる必要があったんだ。見えるだけだと感覚は鋭くならない』という教育方針を告げられた。

 それには伯母上も苦笑気味に頷いていて、シュウだけがきょとんとしていただけだった。

 シュウは見えて感じる事も出来ると言っていたから訓練自体が伯母上達と異なるのだろう。


(追跡はない。このまま御用達店に入ればいいわね。姉様達の本日の予定は父上から聞いていたし、早々出くわす事は無いと思う)


 それからしばらくして馬車が止まった。

 私は青白い顔のミヤに酔止魔法を与えながら様子見する。酔いやすいって言ってたの忘れていたわ。とはいえ貴族の子女がこれでは先が思いやられるわね。


「大丈夫?」

「ええ、何とか持ち直しました」

「きつかったら言ってね?」

「すみません、ご心配をお掛けして」


 元気がないのと調子が悪いのが一緒にきている感じだろうか。するとミヤは何を思ったのか魔力を練りつつ両手の上で何かを造った。


「で、出来ればでいいので、これと同じ物を造っていただけませんか? そうすれば酔いませんので」


 それは小さな白い馬車だった。

 よく見れば全体が精巧に作られていて、車輪から何からが滑らかに動く。しかも車輪と箱が直接繋がっておらず、箱の下に白い金属枠が。

 金属枠の下に捻れた金属と大きさ違いの棒が二つ。板状金属が重なって車軸を覆っていた。

 実に細かな芸術品だけど、これを造るの?


(私の魔力でギリギリ? やってみない事には分からないかな? シュウのようにインベントリ内を意識して、同じ物を認識)


 直後、認識した物と同じ馬車がインベントリの中に造り出された。

 やれば出来るじゃないの私!

 そうして馬車を降りると同時に父上へと連絡を入れ二頭の馬と御者を寄越してもらう事にした。

 怪訝(けげん)なまま応じてくれたけど。


(これは献上? いや、私とミヤの共同合作だから違うかな? どうだろ?)


 だからシュウに問えば『もう造ったのか、試作品だから献上は別で造ればいいぞ』と苦笑気味の返答を得られた。この一言でシュウが何れ造るつもりでいたとも読めた。

 一先ず、きょとんとする御者には王宮へと戻ってもらう事とし、私達は店内に入って父上が手配した御者と馬が訪れるのを待つ。

 私達が訪れた店舗は王都随一の菓子屋だ。


「ミヤが提案した物と同じかもしれないけど」

「ここまでアレンジされてるなんて素敵です」

「そうなの?」

「はい!」


 ミヤはそれを見るだけで元気になった。

 やっぱり女の子だもんね、見た目は男の子だけど。しかも店内に入店したら男性はお断りと言われて困り顔になり、私が性別を示したら安堵していた。こういう店舗は割とあるからね。

 王都の菓子屋は男性禁止店が多いから。

 主なる原因は甘い物が苦手なのに、店内で甘すぎると文句を言った騎士爵の噂が王都中に広まったから。その騎士爵は姉様が連れた者だったそうで、大恥をかいたから即処刑となった。

 私はパンケーキを上品に食すミヤを見つつ、


(これで受け流してくれるといいけど。いえ、ミヤも可能ならそういう話に持っていくのもありかもしれない。この子は叔母上の言う護るべき頭脳を持っているとの話だし、先ほどの小型馬車もシュウが苦笑いするほどの物だったし)


 ミヤの父親に与えるべき罰を思い浮かべた。

 罰として末娘を差し出す。私はミヤの目前で遮音魔法を行使しつつ伯母上に連絡を入れた。

 結果は、満足のいく物となった。

 伯母上もそのつもりでいたとの話だ。

 領主には内緒で夫人に話を通すという。

 ミヤの婚姻と同時に領主の交代も含めて。

 権限は息子、ミヤの弟に委ね、力を削ぐ。

 夫人も主人の行いに腹を立てていたらしい。

 容姿まではいい、娘達が望んでいるから。

 でも籍まで男にするつもりはないとの事だ。


(あとの公認は卒業と同時に行う、と)


 そうでなければステータスに載ってしまう。

 ミヤは覗き見る恩恵を持っているから。

 ギリギリまで男の子を演じてもらい公開と同時に驚かせるのもありだと思う。


(第二夫人で喜ぶミヤの姿が目に浮かぶ)


 これはあくまで利益、国益のためだ。

 確かにシュウと共に居るとドキドキはするけど、恋とか愛とかまだ分からないしね。

 パンケーキを食べ終え会計を済ませると、外に御者が馬と共に待っていた。

 私は周囲をキョロキョロと眺めインベントリ内から白い馬車を取り出してみせた。

 御者は突然現れた白い馬車に驚くが私の手振りに気づき慌てて馬車に馬を繋げる。

 その間の私達は馬車の扉を開いて中に入る。


「室内はどう?」

「問題ありません」


 ミヤは私の右手を取り馬車に乗せてくれた。


「乗るときは少し揺れるのね」

「これも走り出したら効果が現れますよ」

「そうなの?」

「しばらくしたら分かります」


 シャルとリーシャはおっかなびっくりなまま馬車に乗り込む。御者も同様に座った。

 するとミヤはインベントリからクッションとブランケットを取り出して椅子に敷く、椅子だけは硬いままだったらしい。今回は試作品だから今度は内部を含めて考えないとね。

 中は至って質素な見た目になっているから。

 しばらくすると馬車が動きだし、


「凄い静かね」

「全然揺れませんね、リーシャ様?」

「乗り心地が違いますね、シャル様」

「車軸にも一工夫してますからね」


 馬車の中の会話だけがハッキリと聞こえた。

 ミヤの自信溢れる顔はともかく、同じ物をシュウも造ろうとしていたと知り、この二人の頭脳は護るべきだと改めて実感した私だった。




 パンケーキ巡りはその後も続く。

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