第36話 親族との会談。
シュウは凄いなぁって思う──。
私が不安で不安で堪らない御爺様との拝謁で平然としているから。多少はオドオドしていても、私に比べて言葉をハッキリと伝えていた。
(本当なら私も同じ態度で臨まないとダメなんだけど、困った事に毒を盛られた過去を思い出すから、どうしても直視が出来ないんだよね)
その時の恐怖が中々拭えないでいた。
それは四歳の折、御爺様達とこの部屋で茶会を行ったのだ。そこには当然、姉様達も居て、私が飲んだ器に盛られていた。毒見役の器は安全で私の器だけに盛られた毒だった。実にエグい事をやってのける姉様だと思う。証拠が無いから、受け流すしか私には出来なかったけど。
(ああ、父上が見てる。ここに母上達が居ない事が救いではあるけど、キツいなぁ、お腹が)
その間も話は進み、シュウはようやく連絡魔導具を父上から授かっていた。
「これは継承権を有する者のみに与えられる国宝かつ貴重な品である、大事にするように」
「は、はい!」
「解析出来るなら解析してもいいわよ?」
「姉様はなんて事を言うのですか」
「アークよ、ミシェルの言葉には私も同意する」
「お父様まで!?」
「今までは解析出来なかった者が多かったのだ、これを機に見てもらうのも手であろう。これは建国の祖が造り出した魔導具だ。仕組みが分かる方が修理も助かるだろう」
「で、ですが」
父上って頭でっかちだもんね。
シュウの父上も同じだとか言ってたけど。
するとシュウは魔導具をジッと見つめ、
「暗号化魔法が相当に古いですね。乱数だけなら計算すればすぐにでも、復号化が完了しました」
「な、なんと!?」
「術陣は魔力を触媒とした指向性通話魔法と映像送信魔法ですか。無線式で特定宝石に送り双方向と成す。宝石としているのは誤魔化すため」
「そんな機能が載っていたのね」
ブツブツと真横でとんでもない事をやってのけた件。流石の私もきょとんだよ?
「とはいえ平文か、傍受される事は無いと思うけど、高強度暗号化魔法を追加して指向性秘匿通話を構築、映像は従来通り視界に投影と魔石での映像送信は維持っと。術陣そのものにも高強度暗号化ののち空間属性魔石に付与して、ペンダントの枠はミスリルと白金で形状変換して裏面に紋章を刻印して完了」
ひ、平文ってなに?
シュウは左手の上で連絡魔導具に似た何かを造り出していた。それを見た伯母上は満面の笑みになり叔母上は呆然となる。
父上は愕然とし御爺様達は伯母上同様に楽しそうだった。それぞれの反応をよそに真横できょとんとするのは私だ。
シュウだけは真剣な表情になっていた。
「今後はこちらに差し替えた方がいいかもしれません。通常品ですと会話内容が漏れていた可能性が高いです。音声解析魔法を通すと拾えましたので」
「そ、それは誠か?」
「はい、試しに魔導具を通して母様の魔導具に送った時の音声がこれです『笑いすぎです』『別にいいじゃない。息子の晴れ姿だもの』」
「確かに言っていたわね、漏れてたかぁ」
シュウは音声解析魔法を風魔石に与えていたようで、魔導具の解析中に試していたらしい。
そして更に真剣な表情に変わる。あ、ドキッとしたかも。なにこの不思議な感情は?
「それと音声解析魔法の作者はアリク・ヴィ・クリア準騎士爵となっておりますが、心当たりはございませんか? 作成時期は五年前となっておりますが」
「そ、そ、その者の名は!?」
例の教育者じゃないのぉ!?
父上も頬が引きつっている。
怒りも露わという感じだけど。
(今は姉様達へと報告を行う者となっているけど、まさか全てを知られていたの?)
何処に向かうかとか、今日の転移依頼を出す事とか聞かれていたから、寮に踏み込もうとしたって事よね。それと不審者の件もあっという間に伝わって、処刑したのはそれがあるかも。
(機密漏洩罪が確定よね、これは?)
一度、泳がせて捕縛させた方がいいかも。
私がそう思っていると、
「ご存じのようですね、たちまちは証拠が無いので捕縛は難しいでしょうが、折を見て対処に出られる事を進言します。それまでの間にこちらに慣れておく方が賢明でしょう」
シュウも同じ意見を述べてくれた。
何か心臓の鼓動が速くなってるんだけど!
どうしたの私? 頬が熱い。
御爺様はシュウの進言を受けて思案する。
「確かに一理あるな、ミシェル」
「はい、お父様」
「試験的に会話してもらえるか?」
「承りました、シュウ?」
「母様、こちらを。詠唱呪文は簡略化しましたので、手に持ったまま送る相手の名を呼んで【通話】と発して下さい。止める時は【終話】です。名前が被る時は家名を含めて下さい。稼働魔力は超微量ですのでそこまで影響は出ません」
「それだけでいいの? シュウ、【通話】」
「このように揺れて着信を伝えます。【通話】と発すれば受け答えが可能です」
「確かに聞こえるわね、同時に。しかも私の姿まで視界に投影されているわね」
「同じ音声を解析すると『KGTWLJGR』という、よく分からない単語で聞こえます」
「その魔法が一切通用しないということか」
「止める時は【終話】で切れます」
「視界に映っている映像が止まったわね。数秒間〈切断しました〉って文字が出たわ」
なにそれ凄い!?
今までは止める時も詠唱が必要だったのに。
一言発するだけで済むなら緊急時でも問題ないということになるし、何か影響が出てる時でも相手の状況を伝えられるし。
しかもそれだけでは無かった。えーっ!?
「それと、叔母上にも」
「私も?」
「母様、私と叔母上の名前を連続で呼んでみて下さい」
「え? ええ、分かったわ。シュウ、シエル、【通話】」
「「【通話】」」
「え? 左右の視界に二人の見てる姿が?」
「私もシュウと姉様の見てる姿が!」
「一度に二人までの同時通話も可能です。左右に前方の景色が、音声も左右で伝わる仕組みですね。片方が【終話】すると片面だけの通話が切れ、両目に映像が切り替わります」
「確かに今はシエルが見てるサーシャが居るわね。大丈夫? 顔が赤いけど」
「だ、だ、大丈夫れす」
機能改善だけでなく機能拡張までしてるぅ。
その効果を知るや父上と御爺様は同時に頷き御婆様は優しい微笑みをシュウに向けていた。
シュウは連絡魔導具を複製し御爺様を順に配る。私も受け取ったのち古い物を父上に返す。
「今後はこちらを用いる事としよう」
「そうですね、お父様。旧来の物は封印措置を行います」
これで姉様達に私の行動を監視されなくて済むなら、私の学校生活も楽になるかもね。
毒に脅かされる事も減ると思うし。
シュウには感謝してもしきれないよぉ。
それこそ嫁いでもいいくらい。
何て思っていたら、
「それと姉様?」
「ええ、決まりね」
「サーシャとシュウの婚約を認めて下さいますか、お父様、お母様」
「うむ、構わぬよ」
「ええ、申し分無いわ」
えーっ!? 私はぽかーんだよ。
シュウは知っていたのかそっぽを向いてる。
叔母上はお腹を抱えて笑いを堪えてる。
こ、こうして私とシュウは婚約した。
婚約披露宴は学校を卒業するまで行わず、成人前の卒業式に合わせて行う事になった。
それと卒業後に婚姻する事も決まった。
「最後に、シュウ」
「母様?」
「婚姻と同時に私の爵位も継いで貰うからね」
「は、はい?」
伯母上の爵位、それって大公だよね。
普段はあまり名乗らない爵位だけど。
婚姻と同時にシュウはオルト大公になる。
私はそのまま大公夫人って事なのね。
急展開の婚約話。
死亡フラグ、知らない子ですね。




