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転生人形師は理想の嫁を追い求める。〜こじらせ人形師は実在女に「興味が!」モテない〜  作者: 白ゐ眠子
第二章・入学前の大騒ぎ!

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第29話 乙女心は適材適所、


 外で一騒動が起きていたようだ──。

 幸い、シャルに後付けした機能が上手く作動した事で門前払いが成功した。シャルにも事前に付与する事を伝えていたから、今回はそれを用いたのだろう。


(透視と思惑鑑定、危険察知は正常動作、と)


 それは定期検査の折、魔窟とされる王都へと向かう前に回避の意味を込めて与えた機能だった。透視は眼球に与え扉や壁の奥にある異物を調べたり人体や道具の中身を把握する用途がある。思惑鑑定は技能の一つとして追加した。

 どんな思惑があるか悪意ありなら危険察知で回避行動に出るというものだ。心を読むというより瞳の動きや表情、呼吸数から状態を把握する魔法だな。表情が変化しない相手には効かないが、一般的な子供なら十分賄える魔法だ。

 するとサーシャがきょとんとしたまま、


「シュウ、何か先ほど外で騒ぎが?」

「サーシャの兄達が来たらしい」

「え?」


 俺に問うてきたのでありのままに伝えた。

 今はミヤの好みに合わせて家具を作っているからな。前世の好みと変化が無ければいいが。

 室内の雑貨から何から黒一色という病んでいるような好みだ。その中の自分が白いって事がミヤにとってのステータスとか言っていたな。


「シャルが居ないって事にして追い返したみたいだ」

「カイナ兄様とカミナ姉様が来ていたのね」


 シャルの応対を知ったサーシャはブルリと震えて青ざめていた。仲が悪いって聞いていたがこの反応が出るのはそういうことかね?

 デビュタント以降、王宮に帰ろうとしなかった事もそれが原因だろう。

 そんなサーシャを見つめる俺は気休めかもしれないが配慮だけは行った。


「今回の設置が終わったら、一度領に戻るからしばらく顔を合わせる事は無いと思うぞ?」

「う、うん」


 先ほどまで元気だったのに今は恐れる幼子のようだ。いや、幼子なんだけどな。普段から大人顔負けの立ち振る舞いだから、勘違いし易いだけで。

 すると厨房に居たはずのミヤが顔を出す。


「うわぁ!? なにこの真っ黒な部屋は!」


 室内を見回すミヤは呆気にとられていた。


(お? この反応はハズレだったか?)


 そう思った途端、飛び跳ねるように喜んだ。


「ぼ、僕の好みを本当に分かってるぅ!」

「反応が紛らわしいわ!」

「ふぇ?」


 たく、身体は男でも中身は女のままかよ。

 実在女とは言い切れないから判断に困るが、ミヤはこれでいいか。転生性転換ってこんな感じなんだな。同類が他にも居ませんように!

 満足顔のミヤはあれこれ造り出す。


「黒いシーツと枕カバーを用意して、黒い絨毯を敷き詰めて、カーテンレールを窓枠にあてがって、カーテンとレースカーテンも黒にして」


 レースカーテンまで錬成しているわ。

 布生地錬成に慣れすぎじゃないですかね?

 直後、ミヤが錬成しているレースカーテンを見つめたサーシャは急に表情が明るくなった。


「ミ、ミヤ、その生地はどういう物なの?」

「ああ、これ? 透かし模様を編み込んだ薄布だよ。これは花柄が中心だね。下着にも使われている生地だよ」

「わ、私にも作り方を教えて!」

「もちろん!」


 暗くなった表情が笑顔になった。

 俺には分からない何かがミヤには分かるのだろう。流石は元女の子、乙女心は把握済みか。

 相性としてもぴったりだな、この二人が結婚するなら、シャルと共に盛大に祝ってやるか!


(それもあと十年は先だけど)


 嬉々として編み物を始めた二人を眺めた俺は室内灯がロウソクだった事もあって半透明の空洞入り水晶球を成物錬成で造り出し、照明魔法を水晶内面に付与したのち、ミスリル線を噛ませつつミスリル板で封じた。複製して保管と。


(たちまちは電球風になるが仕方ない)


 その後、浮遊魔法で身体を浮かせ天井付近に接合部を埋め込んだ。電球風の水晶へと光魔石をあてがうと光ったので照明笠と共に接合部へとはめ、魔力封じ付きの樹脂で固めたミスリル繊維を天井から壁面、壁面から扉脇に打ち付け、光魔石を収める箱を扉脇へと埋め込んだ。


(これで内部のスイッチ部に光魔石が触れたら照明の完成だな、あとは最後の結合だけっと)


 もう一度身体を浮かせて天井に戻り、接合部から顔を出したミスリル板へ樹脂の一部を押し込んで圧着した。


(同様の部品も見本を用意した後に複製して)


 という一人作業をゴソゴソやっていると真下で編み物をしていたはずの二人と目が合った。


「シュ、シュウ様? いきなりそれをする?」

「シュウ、それはどういう物なの? 一瞬だけ室内が明るくなったんだけど?」


 ミヤは呆れ顔でサーシャは興味津々だった。

 二人の視線を受けた俺は床に降り、壁際のスイッチに触れる。カチリッ音がした途端、室内が一気に明るくなった。


「こういう魔導具の方がいいだろ。壁際の箱の中に光魔石を入れる条件が付くけどな」

「わぁ!? ロウソクよりも明るいです!」


 喜んだのはサーシャだけ。

 ミヤは前世の知識から疑問気な表情だ。


「それなら雷魔石がよくない?」

「電圧下げる手段が見つからないだろ」

「ああ、だからその手段なんだ?」

「それに浄めにもなるし一石二鳥だろ」

「なるほど、確かにそうかもね。室内が綺麗なままになるし」


 疑問気だったが納得してくれたようだ。

 そもそも帝国にもありそうな電灯は必要ないと思う。折角、魔法中心の世界なのに好き好んで機械文明に依存する必要は無いだろう。

 油臭そうだしな、行ったことはないけど。


「てなわけで、全室に施工してくるな」

「僕も手伝おうか?」

「サーシャの面倒を見てやってくれ、その方がいい気がするから」

「う、うん、分かった」


 これも適材適所というやつだ。

 頼もうと思えばリーシャも居るしな。

 というか廊下にも付けないといけないのか。


(玄関先のシャンデリアはロウソク部分を入れ替えるだけでいいか。ロウソク代が光魔石代に変化したけど、これは折を見て集中管理式に交換しないとな)


 考えれば考えるほどやることは山積みだ。

 それでもこの屋敷は最新技術で建てられた建物らしいから、今回のこれで本当の意味での最新技術の屋敷になったよな?

 たちまちの作業は一階玄関から開始だ。


「先ずはシャンデリアを下ろして」


 シャンデリアの鎖の隣に魔力供給のミスリル線を四本通し、余剰線を鎖と同じ位置にケーブルドラム式で片付けた。これは鎖を巻き取ると同時に長さが変化するようにしただけな。

 シャンデリアは長さを把握するために下ろしたので、元に戻したのち線の長さを調節した。

 ドラムの脇には光魔石を収める大きめの箱を用意し四カ所のスイッチを増設した。ロウソクの数は全部で十二本、三個ずつで光量を調節すれば良いだろう。再度、シャンデリアを下ろして四本のミスリル線をそれぞれに三等分し、個別に樹脂で覆いつつシャンデリアの見えない位置へと隠すようにミスリル線を通す。

 ロウソク台の代わりに接合部を埋め込んだのち、それぞれの線を圧着接着して電球こと魔光球を捻りながら収めた。

 最後にシャンデリアを戻して、ボソッと呟きつつスイッチを段階的に押した。


「結構労力を使うよな、これは」


 一つ目、三等分にされた三カ所が光る。

 二つ目、隣同士の三カ所が光る。

 三つ目、その次の三カ所が光る。

 四つ目、残りの三カ所が光る。


「これだけでも明るさがハンパないな。普段は二つ使いで奇数日と偶数日で分けるか」

「それがいいと思うよ、魔石の節約になるし」

「ロウソクと違って明るさが異なりますしね」

「わぁ!? サーシャか、ビックリした」

「シュウ様、僕も居るよ!」




 自重を知らない新入生。

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