第26話 たわむれの暇潰し。
チラッと見てしまった──。
偽装を剥がしたシュウ様のステータスを。
(僕の恩恵が中身に収まってたんだけど、明らかにチートだよね? 魔力量まで無制限って)
見られた事に気づいたシュウ様は僕の頬をツンツンと突いているが、凄く納得いかない!
神が居るなら不公平だって言いたくなるよ。
この差は一体なんなの? ま、まさか?
(罪の有無? そ、それだと、納得せざるを得ないかも、ぼ、僕自身が原因でもあるし)
勝手に怒って勝手に反省する、まだ始まってもいないのに、僕だけ情緒不安定だよ。
その代わり試験内容は完璧だった。
読み書き算術は小一レベルだし、歴史も書物から暗記した物がほとんどだった。マナー試験は食事法とか王位継承権に関する基礎知識が主だった。隣で頬を突っつくシュウ様が四位で、反対側で頬に指を当てているサーシャ様が五位だって事も、事前に教えていただいたしね。
(サーシャ様も筆記が終わったんだね。突っつくよりも撫でてよ〜、ダメ? あ、サーシャ様が振り向かせた。僕も女の子なんだぞぉ!?)
横目でチラッと睨んでみても簡単に去なされる、しばらくは僕の頬を差し出すしかなさそうだ。時間が過ぎるのを待つのは大変だぁ。
§
筆記試験の後は昼休憩となった。
初等学校のラウンジに移動した僕達は、
「ミヤにはステーキをやるから元気だせ」
「餌付けされてるみたいだけど、食べる」
「餌付けって、まぁ育つといいな」
シュウ様が持参した料理をいただいた。
といっても堅パンで具材を挟んだサンドイッチだけどね。僕には牛ステーキ入りを、シュウ様は牛バラ肉入りを、サーシャ様には牛ハム入りのサンドイッチを。
「そうだね、育つといいね」
「どちらの意味での育つでしょう?」
「どちらって身長だよな?」
「そ、そうだね」
そこはおっぱいって言いたかったけど。
サーシャ様も気づいているのか苦笑した。
シャルとリーシャのサンドイッチも同じ物を手渡しているが今は黙々と食事を行っている。
(こうやって見ると人形には見えないね)
ちなみに、このラウンジはサーシャ様の貸し切りとなり誰もが入れない一室となっている。
本来ならば高位貴族しか入れない一室だが僕自身は特例で入れて貰えた。シュウ様の専属錬成師の立場が活かされているともいう。
そして食事中の話題は、
「午後の実技って何をやるんだっけ?」
「簡単な魔法試験ですね。実戦魔法と補助魔法を選ぶというものです」
午後からの試験に関してだった。
それと聞くと実戦が浮かぶよね。
「実戦だと雷撃が無難かな?」
「それは試験会場次第だろう?」
「私達は補助の方ですよ? 実戦は戦闘職の方々が行う試験ですので」
「そういえば非戦闘職だったね、僕達」
「身も守る程度に使えたから忘れていたわ」
「お二人は例外中の例外ですね」
サーシャ様が苦笑しつつ僕達を見たが、確かに例外中の例外かもね。お屋敷の訓練施設で最上級魔法を二人揃ってぶっ放したから。
僕が落雷でシュウ様が火柱で。
武官達の目が点が印象的だったな。
六歳児が行使出来る魔法ではないね。
「補助となると何があったっけ?」
「収納魔法だろうな、兵站向けだから」
「あとは転移魔法もですね」
「失伝魔法を例に出さなくても」
「今は失伝ではないので問題ないですよ」
「転移は転移先次第だな。但し、地図魔法との多重行使が出来ないと詰む」
「僕も多重行使出来るけど魔力量で詰む」
「多重行使が出来る時点で羨ましいです」
仮にこのラウンジに他の子供が居たとしても会話の内容が高度過ぎてついていける者は居ないだろう。
ともあれ、その後の僕達は呪文をシュウ様から教えていただき、収納魔法を会得した。
(ゲームの見た目だぁ!? 僕の魔力量だと上限値を設けても五トルは収まるのか)
サーシャ様なら五〇トルも収まる。
シャルやリーシャも同じように二〇トルが収まるという。
それを知ると魔力量を極限まで増やす方が得だって分かるよ。今は全員が成長期だから今後はもっと収まるって事だしね。
成人で迎える成長限界が楽しみだな、成長限界に達すると魔力量の上限が決まるから。
(ポケットの万年筆だけは片付けておこう、指揮棒で真似る事も出来るし)
それとこれは秘匿魔法に入るそうなので陰詠唱で鍵言だけを発するようにと注意された。
仮に真似して使える者が増えても注意点に気づけないから危険なのだそうな。魔力量の上限を意識出来ないからね。僕とシュウ様なら上限値を意識出来るからサーシャ様の限界値も読めるもんね。普通は上限なんて読めないからね。
§
昼食後、筆記試験を受けたメンバーが校内の訓練施設に集まって実技試験が始まった。
僕達が所属するのは北部に隣接する者達が集まる場所だった。サーシャ様は王都の所属となるのでお隣に移動した。他にも東部、西部と集まり、計四グループでの実技試験が始まった。
「補助魔法と実戦魔法の試験を行います。順番に出てきて、名を名乗りつつ魔法行使を始めて下さい」
詠唱云々と発しないのは無詠唱が出来る者が居るからだろう、シュウ様は陰詠唱のみを行うそうだが普通は詠唱する者が多いと思う。
ただね、その際に噛ませ犬君が現れたんだ。
「俺はお前を認めないからな!」
「へいへい、頑張って下さいね」
それはいつぞやのポロ珍子息だった。
それと一応、この学校には平民も居て、特例で試験を受ける事が可能だという。
判断基準は魔力量ではなく恩恵なのだろう。
有用な恩恵持ちなら教会から送り込まれるとの話だ。教会の思惑がありありと伝わるけどね、お近づきになって情報を得る的な。
現にシュウ様の背後から熱視線を送って、
(うわぁ、ヤンデレが居るぅ)
僕が引くような表情でクネクネしている。
あんな子も当たり前に居るんだね。
シュウ様は有象無象と認識して完全無視を決め込んでいるが、隣の僕を見るなり「同類」と発してきた。それってどういう意味!?
そんなひと悶着の間も試験は進む。シュウ様の前には噛ませ犬君が居て、ドヤ顔で詠唱を行い、ちっぽけな炎魔法を飛ばしていた。
ひゅるひゅると音をさせる小さな炎。
「どうだ! これが俺の魔法だ!」
「はいはい、その前に前みろ前!」
「何が前だ!」
ドヤ顔の炎は照準不明だったからか、
「炎の行く末くらい認識しろ〜、サーシャ!」
「殿下の御名を気安く呼ぶな!」
「はい? あ!」
サーシャ様の方向に向かってしまい、シュウ様が無詠唱での水弾を飛ばして事なきを得た。
忠犬が過ぎるのも考えものだね。
「助かりました、シュウ」
安堵の表情を浮かべたサーシャ様はシュウ様に謝辞を伝えた。その様子を見た噛ませ犬君は自身の立場をわきまえずサーシャ様を諫めた。
「殿下も!? お止め下さい、そのような下賤な名を呼ぶのは」
流石の反応に、周囲の子息子女は頬が引きつり、あまり身分を示さないシュウ様ですら困り顔で苦言を呈してしまった。
「お前、騎士爵がどういう身分か分かって言っているのか?」
「俺は殿下の騎士だと思っている! だから騎士爵家が一番上だ!」
おぅ、これはダメなパターン。試験官も首を横に振り、何かを羊皮紙に記していた。
不合格だろうね、きっと。
「下賤ってお前の事を言うからな?」
「なんだとぉ!? たかだか辺境の」
「辺境伯が田舎貴族とか思ってないよな?」
「それが何だって言うんだ!」
噛ませ犬君は今にも掴みかかろうかという状態に変わり、呆れ顔をみせたシュウ様は水縛魔法で身体中を括りつけ、浮遊魔法で放置した。
キャラ的に面白いから残してもいいかな?




