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転生人形師は理想の嫁を追い求める。〜こじらせ人形師は実在女に「興味が!」モテない〜  作者: 白ゐ眠子
第二章・入学前の大騒ぎ!

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第23話 新生活の空気感、


 一瞬で記憶が蘇った──。

 何の因果か前世の女友達が男の子で生まれていた。しかも凄い身近な場所で下着を作っていた。サヤは妹とか言っていたが、何らかの理由から隠していたようだ。

 そんな驚きを示されたデビュタントはミヤの驚きの所業で無事に閉幕した。


(酸化銀で念写か、見る目が違うとは思っていたけど転生した途端に本領発揮したようなものだな。流石に数が数だから俺も手伝ったけど)


 酸化銀を用いて小さな姿絵を残した。

 数は高位の貴族家のみ、俺とサーシャとシャルは一枚に収まったが、残り九十九家は個々に念写していった。あれも一応、酸化反応と熱分解で消えないよう、表層に防止魔法を付与したから永久に残るだろう。それに見合った貨幣が王宮から子爵家に流れるとの話だったからな。

 それとデビュタントの日からサーシャとシャルが同じベッドで寝るようになり、俺とミヤが隣同士のベッドで寝るようになった。


(寝顔だけは女の子っぽいよな、寝顔だけは)


 これは単純に同じ学校へと通う友達として。

 人形師には錬成師が付き従う決まりを尊重した結果だと母様は仰有(おっしゃ)った。

 そして本日は入学試験の前日だ。


「私の錬成師を用意して下さるのですね」

「そうなるかな、全ての準備は終えているから完成まで待っていてくれ」

「はい、分かりました!」


 今回はサーシャに付き従う錬成師を俺が用意する事になった。ようはシャルの同型を献上するためにな。例の魔導具も今は複数台が稼働していて人格形成を行う赤子が絶賛製造中である。男女別、種族別で計四体。


「これが例の赤子ですか?」

「表皮が生成されているからもう少しだな」

「この子は女の子なんですね」

「そちらには男の子もいるぞ」

「ミヤに何処となく似てますね」

「ミヤには見本になって貰ったからな」

「ぼ、僕が見本なのぉ!?」

「あとで報酬を与えるから我慢してくれ」

「あ、頭を撫でてくれるなら、いいよ?」

「それだけでいいのか?」


 その機能は乳を吸う事と排泄のみだ。

 身体機能は最初から制限を設け、成長と同時に限定解除していく事になる。

 各臓器も魔導具に委ね、空間属性魔石を混ぜた骨格と思考魔核だけを組み込んだ。

 身体が成長していけば人格と魔石成長を促す仕組みが稼働するようになる。それまでは骨に魔力が蓄えられる仕組みとなっている。

 乳は専用の哺乳瓶で飲ませる予定だ。

 赤子から生えてくる歯の硬度を考えると乳母の胸に可哀想な被害を与えかねないからな。

 結果が出るのはしばらく先だろうけど。


「シャルの定期検査もあと少しで終わりだ」

「本当に育ちましたね、私より大きいです」

「髪が伸びて可愛くなったよね」

「今、嬉しそうに微笑みましたね?」

「本人には声は聞こえているからな」


 残りは動物型が二体だ。

 動物型は狼とし指揮機能を持たせている。

 子も成せるから人形というか生物だよな。

 人型は子が成せないよう制限を加えている。

 制限を解除すればこちらも可能だが、教会が目を光らせている以上は出来ないようにした。


(チョーカー云々も教会の決まりだから仕方ない、か。諜報員は皮膚と同じ色のチョーカーを付けさせるしかないな。自動伸縮付きで)


 教会、それはこの世界の神を祀る宗教だ。

 その本拠地はこの世界の最果て、三国の各所に複数の神殿を持つ大きな組織である。

 そして人形と人を区別したがる倫理感の塊。

 神の恩恵で出来る人形を良しとしないのだ。

 人が神になるものではないという説法で。

 それがあるため表層的に隠す事は良しとしても首輪が必須となっている。人形に人形だと認識させる義務も当然ながら与えられている。


(言いたいことは理解出来るけど、堅いよな)


 ちなみに、シャルの噂はあっという間に拡がり、母様は帝国に知られないよう神父を相手に『お腹に収納魔法を施している』と説明したそうだ。食べた物が排泄されるわけではなく専用亜空間に収まっていると無事に解釈してくれたらしい。教会経由で帝国にバレるのは確定だ。

 この教会は『人形は世界中で使うべき』という、帝国寄りの危険思想を持っているからな。


(単に帝国貴族から喜捨されているだけだろ)


 情報を漏らせばもっと捧げます的な。

 先の戦乱でも知らぬ存ぜぬだし。

 本当に困った組織だよ、この教会は。

 それからしばらくして新人形が完成した。


「見た目は銀髪碧瞳のミヤだな」

「ミヤを女の子寄りにした感じ?」

「そ、そうだね」

「何で引きつっているんだ?」

「な、なんでもないよ」

「名はリーシャ、サーシャ呼んでやってくれ」


 サーシャは緊張した面持ちで名前を呼ぶ。


「ええ、リーシャ目覚めなさい」


 目覚め方はシャルと同じだ。

 肝心の声音は前世のミヤだな。

 性格はサーシャを見本とした。

 高潔でありながら喜怒哀楽がハッキリしている王女殿下だ、この記憶も母様が用意したから反応は言うに及ばずである。


「ん、んん、姉様?」

「姉様って?」

「そういう指定らしい」

「そうなんだ」

「こ、この声」

「どうした?」

「ううん、なんでもない」


 ミヤは気づいたな。

 気づくよな、前世の肉声だから。愕然としつつも微妙な表情で見つめているミヤ。

 女の子の裸体かつミヤの顔。


「見慣れていても黙って回れ右しような」

「う、うん」

「ふふっ、私は下着を穿かせてきますね」


 サーシャは何か知っているのか微笑みながら起き上がるリーシャの元へと歩んでいった。

 ミヤは所在なさげに視線を漂わせていた。

 俺はシャルの定期検査が完了したので下着を収めた籠を持って魔導具の隣に立った。


(成長速度は人間の子供とトントンか。魔石容量も成長で増えて、身長も数セル(cm)伸びているし、ガチで特殊個体になったな)


 俺の目の前には裸のシャルが居る。

 シャルは気にせずチョーカーと下着を着けて普段着としている侍女服を身に纏った。自動伸縮は正解だったな、成長に即しているし。

 それはリーシャに手渡すチョーカーと下着、侍女服も同様だ。人形の服は生活魔法〈清浄〉が自動発動するので汚れる事はない。



  §



 翌日の試験当日──。

 俺はミヤとシャルを、サーシャはリーシャを伴って王都へと訪れた。王都へと訪れる方法は前もって依頼を出していた転移だな。


(早速使い熟していらっしゃる)


 俺も単身で転移は出来るが、人目に付くと面倒なので宮廷魔導師に委ねる事にしている。

 当然、サーシャは帰都したも同然だから、


「私がご案内致しますね」


 率先して馬車乗り場へと案内してくれた。

 ただ、この世界の馬車って揺れるんだよな。

 街道とかは石畳だから仕方ないが、箱に車輪が着けられただけの乗り物だから酔止魔法は必須だった。人形の二人は気にもとめていない。

 酔うという機能不全は起きないからな。

 酔ったのは乗り慣れていない俺とミヤ。


「「うっぷ」」

「大丈夫ですか? 二人とも」


 乗り慣れているサーシャは平然としている。

 今は魔力量を抑えめに使っているから懸架装置を用意するのはしばらく先になるだろう。

 ミヤは欲しいと思ってそうだけどな。


(酔止魔法をかけてやるか。そういえばミヤも乗り物酔いが酷かったもんな、繊細なお嬢様)


 そのお嬢様は見る影もなく可愛らしい男の子に生まれているのだから、今世でも気の良い友達で居た方がいいだろうな、きっと。


「あ、楽になってきた」

「背中さすってやるよ」

「う、うん。優しくね」

「それ以外に何があるんだ?」

「ふふっ、仲がおよろしいですね」


 前世からの付き合いがありますから。

 こうなった経緯だけは思い出せないけど。




 主人公とヒロインの再交流が始まる。

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