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転生人形師は理想の嫁を追い求める。〜こじらせ人形師は実在女に「興味が!」モテない〜  作者: 白ゐ眠子
第一章・転生したら異世界でした

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第21話 お披露目会の珍騒動、


 そうしてデビュタント当日が訪れた──。

 当日を迎えた俺は妹となったシャルを伴って着替えの準備を行う。一応、シャルを兄姉に紹介したら人形だと信じてもらえなかったけど。

 父様の時と違って写真を示すわけにはいかなかったから重戦士でもあるコウ兄様を片手で持ち上げてもらって強引に納得していただいた。

 力持ちの女の子とだけ認識すれば人との違いも明確だろうと思ったからな。代わりに兄様達から同じような人形を求められた。

 それは『護衛侍女として必要』と母様が仰有(おっしゃ)っていたからだ。俺の場合、サヤという侍女が既に居るがサヤは事情があってデビュタント以降は俺の護衛を辞めるという。

 大変哀しい事だがこれも致し方ないだろう。

 そのため、すぐにすぐ用意が出来ない事と、同様の人形を王宮に献上するまでは保留するとの話で妥結した。兄様達もそれで納得した。

 今度は母様の目の前で工程を示さないといけないわけだ。師匠の目で見たいともいう。


「兄様、用意が出来ました」

「俺も準備出来たよ。お? シャルも似合ってるね。侍女服と違って可愛らしいよ」

「ありがとうございます、兄様」


 シャルは銀髪ショートヘアが映える、黒いドレスに身を包んでいた。黒が国色ということもあるが、この日は王女殿下も訪れるとあって黒でも地味なドレスだった。王女殿下と勘違いされないよう頭に載せたティアラも俺特製のガラス製だ。殿下のティアラはミスリルだから違いを明確にしてみた、よく似合ってるな。

 俺に褒められて頬を染めるシャル、傍から見たら人形とは認識出来なくなりそうだ。


「呼び出しが掛かるまで待っていようか」

「そうですね、兄様」

「手洗いは済ませたか?」

「済ませました! そういう事を聞くってどうなんです?」

「機能しているか確認するため」

「無事に機能しております!」


 一応、王都に向かう際は人形と示すための黒銀チョーカーをはめられるそうだが、それも俺が作った。シャルの素肌は人の皮膚と相違ない肌触りだから安易に赤の他人には触れさせたくないだけな。

 下着もパニエとドロワーズを着せ、少し膨らんだ胸元には母様が興味深げに覗き込んでいたケイ素ブラを身につけさせた。五歳児なのに変化が出るとは思いも寄らなかったけど。

 ケイ素ブラは母様と王都から来るとされる従姉に手渡す事にもなるため、サヤに予備を手渡しておいた。サヤも欲しそうにしていたから差し上げた。

 ただ、待ち時間は無駄に長く、


「最終確認、呼び出されたら二人で出て行く」

「自己紹介を行い、ひな壇で待機する」

「王女殿下と挨拶を交わして」

「家格の高い家から挨拶を行っていく」


 俺はシャルと共に確認と予行演習を行う。

 椅子に座った俺とカーテシーで挨拶を行うシャル。失態は許されないため、念入りに行う。

 父様の権威を損ねると何があるか分からないからな、この領だけでなく他領からも訪れるとあっては頭痛の種でしかないけど。これも本来ならば王都で行うべき話なのだが、この国では誕生日が真冬かつ最後の者が居る領地で行う決まりらしい。

 六歳から通う学校も俺達とサヤの末妹は例外的に五歳から通う事が出来る。

 これは俗に言う早生まれ的なものだろう。


「長い挨拶行列が続くのか」

「これも貴族の務めです、兄様」

「分かってはいるが、何百人居るんだ?」

「五百十一人との話ですね。王都に住まう法衣貴族の子息子女を含め、全五百家弱の家が勢揃いとの話ですから」

「他領は今更って思うが王都からも来るのか」

「こればかりは兄様がご用意された杖の効果ですね。本当なら辺境へと向かうにはご法度との事でしたが、いつでも行き来が可能になった効果とも言えます」


 おぅ、母様ってば預けた杖を複製していたのか。それを王宮に献上して宮廷魔導師達が各家を巡って城へと連れてきていると。

 幸い、俺の場合は顔と名前・ステータスを含めて記憶出来るって事かもな。知りません分かりませんが通らないのが貴族という者だから。

 シャルの場合は母様が事前に学習させていたらしい。


「俺達のお披露目会はグッタリで終わるな」

「分かっておりますが、我慢ですよ。兄様」


 シャルもグッタリは覚悟の上らしい。

 人形でもこの気持ちが分かるのか。

 感情表現が豊かというか何というか。



  §



 デビュタントパーティーが開かれた。

 予定通りのご挨拶を終えた俺とシャル。

 シャルは事前に「人形」を付け加えて家名を名乗った。それを聞いた各家はどよめきを示し、子供等の両親達は母様に視線を向けていた。

 やはり母様が作ったと思う者が多そうだ。

 そして挨拶行列が無事に始まり、


「初めまして、サーシャ・リィ・オルトン第二王女と申します。私は従弟の貴方と出会えて光栄に思います、今後は共に切磋琢磨していきましょう」


 初っぱなから驚く事実を示された。

 隣に座っていた王女殿下が従弟と言った。


(何? 母様って王家なの? この銀髪って王家由来って事? 周囲を見ても銀髪が居ないのはそれもあるから? あ、人形師だ、この子)


 ということは俺にとっての従姉にあたるって事ね。受け入れるのは難しいが、受け入れなければ失礼にあたるよな。


「ご丁寧にどうも、こちらこそよろしくお願い申し上げます、殿下」


 俺とシャルは返礼しつつお辞儀した。

 お辞儀した直後、殿下から指向性の伝達魔法と遮音魔法をいただき、ウィンクと共に可愛らしい姿を示されてしまった。


「シュウ、私の事はサーシャって呼んでね? 立場上、私達は同位にあたるから」

「そうなの?」

「兄様、そういう事です」


 シャルだけは理解していたらしい。

 てことは継承権的な物もあるのか。

 未来の事は置いといて素直に応じた。


「分かったよ、サーシャ」

「ふふっ、よろしくお願いしますね」


 微笑みを向けたサーシャは魔法を解除しつつ一礼し、俺の前から隣に移動した。

 本来のご挨拶は俺が王女殿下ことサーシャに向かうべきなのだがシャル曰く、


「母様が元第一王女であり、サーシャの伯母にあたるそうなので優先順位は兄様にあるのです。サーシャは第二王女とはいえ、王太子と成られている叔父上の娘でしかありませんから」


 サーシャと同じ魔法を行使してコソコソと教えてくれた。シャルの魔法は俺の記憶を与えているから使えて当たり前だけど。


「元王女が辺境伯に嫁ぐ?」

「母様がベタ惚れだったそうですよ」

「それで降嫁したって事ね」


 今までの父様の反応から腑に落ちた。

 位的に母様が上の理由が。俺が金髪碧瞳だったならそうはいかないが銀髪碧瞳で生まれた以上は覆らない何かがあるのだろう。

 そこから先は苦行ともとれる五百十人との挨拶が続く、一人一人の名前と顔を覚える苦行。

 当然、同じ挨拶は隣のサーシャへと続いた。

 稀にサーシャから先に行った家もあった。

 サーシャは顔色一つ変えることなく応じていたが爵位を知って納得した俺だった。


(騎士爵家か、彼らは王家に忠誠を誓っているもんな。辺境伯の子息より優先順位は高いか)


 高いだけあってこちらを下に見る始末だ。


「リスカ騎士爵家が長子、ダルモ・ヴィ・リスカだ、よろしく頼む」

「こちらこそよろしく」

「たかが辺境伯の子息が殿下より上と思うな」


 コソッと捨て台詞を吐いていったから。

 上に思った事なんて一度もないけど?

 するとシャルがカチンときたのか彼が降りていくひな壇下に薄氷を敷いていた。

 そして見事にすっ転ぶ騎士爵子息殿。


「だぁ!」


 お見苦しいモノをお見せして。

 騎士服のズボンが緩くて落ちていた。




 オチはダルモ君に持って行かれた。

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