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転生人形師は理想の嫁を追い求める。〜こじらせ人形師は実在女に「興味が!」モテない〜  作者: 白ゐ眠子
第一章・転生したら異世界でした

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19/83

第19話 新たなる出会い、


 しばらくの間、工房に居た俺は──。

 魔導具の外から中の様子を眺めつつ微調整を始めていた。それは人格と記憶、名前の指定とかな。名はシャルと名付けた。


「皮膚が生成され始めたな、このまま髪が生えて歯が白に変化したら完成だ。記憶は母様指定のものを植え付けて性格はミウ姉様と同じ温厚でいいか。職業は侍女、恩恵は淑女接待を与えて」


 しかもこの魔導具で作った人形は成長する。

 魂が宿るとかではなく使った素材によって変化するらしい。途中で見た人工臓器なども本物ぽくなったしな。人との区別は強度と力だけだ。

 それ以外はほとんど人との差が無い。

 まだ俺の理想とはほど遠いけど、処女作としては最高の部類だろう。

 ただな、


「母様なら絶対使うよな」


 この魔導具だけは使うと思う。素材指定を間違えない限り成長するから。


(オリハルコンとミスリルは鉄板だな)


 作業を行いつつ独り言を呟くと背後から声がかかった。


「そうねぇ、使いたくなってきたわね」


 俺は振り返りつつビックリした。


「わぁ!?」


 母様はしてやったりの笑顔で俺を抱きしめた。


「様子見に来たのだけど上手くいって良かったわね」

「母様、驚かさないで下さいよ!」


 背中に当たる大きな胸。

 実の母と思っていても落ち着かないっす!

 母様は真っ赤に染まる俺に気づきつつも、


「ふふっ。名前はシャルっていうのね。顔立ちからして、シュウの妹ってところかしら?」

「そ、そうなるかな」

「親として兄として頑張りなさい」


 微笑みながら抱きしめる力を強めた。

 これはわざとかな? 俺はタジタジとなりつつも思い出すように報告した。


「うん、それと例の奴、シャルに付いたよ」

「それって、食事から?」

「大気と食事から魔力を得る方法を採ったら成功したみたいでさ」


 前々から話していた諜報員向けの対策だ。

 試験的にパンを胃へと転送魔法で送ったら消化と共に魔力へと変換されたのだ。滓の処理も普通に行われていた。シャルには悪いけどな。

 味覚も当然あるから美味い不味いは分かる。

 嗅覚と痛覚もあり、毒無効となっている。

 そもそも人形だから当たり前だけど。

 母様は結果を知り先ほど以上に抱きしめた。


「シュウ、よくやったわ!」

「わぁあ!」


 抱く力と反発力でアタフタしてしまったよ。

 しばらくすると完了通知と共に水が抜かれていった。内圧が下がって内部乾燥を終えると蓋が自動で開く。


「綺麗な女の子が生まれたわね」

「うん、シャル。目覚めていいよ」


 俺が名前を呼ぶと起動シーケンスに入ったのかピクッと眉根が反応した。眼球も上下左右に動き呼吸も始まった。口元も少しだけ緩み、


「ん、んん、あ、兄様と母様」


 俺と母様の顔を見るなりそう呼んだ。

 俺との関係を兄妹としていたからかもな。

 シャルは身じろぎするとスムーズに起き上がる。女の子の裸だけどこれは仕方ない。

 母様は俺の背後から移動しシャルを抱き起こす。


「問題ないみたいね」

「母様、ありがとう」


 そして問題が無い事を把握すると下着を着せていった。残りはシャル自身が服を着ていく。

 下着だけは記憶には無かったようだ。

 母様はインベントリから羊皮紙を取り出し、


「あの人には私から伝えておくわね」

「お願い、母様」


 笑顔で工房から出ていった。

 チラ見した限り、戸籍だった。

 元々作っていたような見た目の、な。

 収納魔法も一度教えたら普通に使ってるし。


「無理だって言った矢先に出来てしまったな」

「父様って頭でっかち?」

「悲しい事にそうらしい」

「兄様、可哀想」


 特別にあつらえた人形の成功例として。

 嫁がせる予定の無い娘として。

 自身が認めるに足る人形が出来た時のために用意していた物だったのだろう。兄と呼ばれせる指定はそのためとしか思えないからな。

 なお、シャルは人形だと認識している。


「それはそうと兄様、お腹のこれはどういうことですか?」


 認識しているから違和感に気づいたらしい。

 簡単に溜まるような物ではないけどな。

 俺は下着の事といい補填出来てなかった学習を行う事にした。


「ああ、それは記憶に無かったか、食べたり呼吸をするだけで魔力になるんだよ。お腹が張ったり、痛くなったらトイレにゴーだ」

「人形にその機能要ります?」


 先ずは疑問系のきょとん。


「毎回、胸を開けて魔石交換よりはいいだろ」

「そ、そうですね」


 引きつり気味の哀しい顔。

 痛覚耐性は最大でも皮膚を割く痛みはあるからな。眠っていてもそれは感じるようだ。


「生殖機能もあるぞ、子供は出来ないけど」

「兄様、もう少し慎みを持って下さい!」


 怒りながら真っ赤に染まる顔。


「真っ赤になる人形って凄いなぁ」

「兄様!」

「はいはい、怒るな怒るな」

「撫でたところで──仕方ないですね」


 怒りつつも楽しげなシャル。

 頭が気持ち良いんだろうな。


「それと成長するから廃棄もないぞ?」

「!? ホ、ホントですか!!」

「身体の経年劣化は避けられないから、定期検査だけは必要だがな」

「ずっと一緒に居られるのは嬉しいです」


 人形にとっても人形師にとっても廃棄が一番堪えるからな。愛着があればあるほど、な?


(とりあえず学習機能と喜怒哀楽も問題ない)


 一応、眠らなくてもいいが、学習を最適化するための睡眠機能も設けている。


「父様が見たら人形か疑うだろうな」

「その時は実力行使します」

「流石に殺すなよ?」

「簡単に死ぬような父様ではないですよ」

「まぁ辺境伯としてはそれなりだもんな」


 普段は力のセーブをしているが護衛としての技能も持っているから父様くらいなら簡単に持ち上げる事も可能だ。剣術技能も俺と同じように上級まで持っているからな。

 一先ず、侍女服を着たシャルを連れた俺は、


「時間も時間だし、寝るか」

「寝るって同じ部屋ですか?」

「兄妹だし問題ないだろ」

「そ、そうですね。触れたらダメですよ」

「何処に触れるって言うんだ?」

「そこは慎みを持ってください」


 工房を出て居室のある十二階まで転移で移動した。地下一階から一気に十二階へ、その踊り場で煙管を吹かす父様とこんばんわした。


「うわぁ!? シュ、シュウか。ん? その子は誰だ?」


 夜風に当たりながらって風流だねぇ。

 が、父様は転移してきた事に気づいてない。


(鈍感が過ぎるとこうなるのかぁ)


 俺も同じ面があるから気をつけよう。

 一方のシャルはカーテシーで自己紹介した。


「初めまして、父様。シャルと申します」


 今回は身内だけだから家名は無しだな。

 他人の前ではシャル・リィ・ディライトという名前になるけども。


「と、父様?」

「母様から聞いてないの?」

「えっと、人形が増えたとか言っていたが」

「はい、私がその人形ですね」

「はい?」

「兄様の手でこの世に生まれ落ちた人形です」

「に、人形?」


 このパターンは現実逃避に行く奴かな?


「これを見たら人形だって分かりますよ」

「兄様!?」


 だから俺は仕方なしで作業風景を念写した植物紙を示した。生まれる前の骨格と生まれた直後の姿でな。シャルは真っ赤に染まったけど。


「は? 金色の骨? 裸の女の子?」

「それがシャルだよ、本人は真っ赤だけど」


 流石に臓物系は避けた。

 ことあとは父様と兄様の遅い夕食だからな。

 (やかた)からの戻りが遅かったから。


「そ、そうか、うむ。成功したんだな」


 実例を出された以上は反発も出来ないわな。

 何で父様が反発してるのか、その理由は母様しか知らないけど。

 俺とシャルは所在なさげな父様に一礼して居室へと移動した。パッと見は人形には見えないもんな。こればかりは仕方ない反応だった。




 命令で動く人形ではないって凄いね。

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