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転生人形師は理想の嫁を追い求める。〜こじらせ人形師は実在女に「興味が!」モテない〜  作者: 白ゐ眠子
第一章・転生したら異世界でした

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第15話 学びのひととき、


 先日示したチタン杖──。

 あれは母様預かりとなり、俺は万年筆で簡単な魔法を行使する。母様預かりとなった経緯はあれだな、父様が信じられないとか宣って母様が作った話で落ち着いたのだ。

 幼子が杖を作ったとは信じられない父様。

 頭でっかちなのは母様よりも父様だった。


「頭でっかちの領主、大丈夫かなこの領地?」

「そういう事を言うものではありませんよ、シュウ様」


 おっと、思った事が口から漏れてしまった。

 今はサヤのマナー講習を受けている最中だ。

 本来なら魔法訓練を行う予定だったが「全ての魔法を覚えてしまった以上は不要」と母様が判断し教養に重きを置かれたともいう。


「はい、すみませんでした。サヤ先生」

「よろしい。次は陛下と謁見する際の身振りを覚えていただきます」


 他にも一人で生きていくための剣術訓練とか指揮力を身につけるための戦術訓練なども行う事になった。追加で統治術講習とかな。

 剣術とか戦術はともかく統治術などは領地経営を行う上で必要な技能だ。

 本来なら三男の俺はそのまま平民に下るはずが、母様が何らかの根回しをした関係で「平民に下る事は無い」と断言されてしまった。

 それを聞いたロウ兄様は戦々恐々だよな。

 次期当主であるはずなのにポッと出の、否。

 末弟がそういう立場に収まると聞けば。

 母様はロウ兄様に対して微笑みながら、


『嫡男の貴方が気にする必要はありませんよ』


 とても意味深な一言で安心させていた。

 嫡男、その一言で安心したロウ兄様は俺に「頑張れよ」っと返して父様と共に(やかた)へと降りていった。屋敷もとい城とは別にある館。

 それは領民達が訪れる役所だった。

 館には文官達がひしめき、城には武官達がひしめく。その両者に対して的確に指示を出す事が領主の責務という。


(俺なら人間の女が信用出来ないから、全て人形達だけで済ませるだろうな。但し、サヤは除く)


 別にサヤが好みだとかそういうものはない。

 俺はサヤの一挙手一投足をつぶさに眺める。


(謁見の身振りを覚えるって、イメージ記憶で挙動までもトレースしてしまう自分が恐ろしい)


 蒐集眼を無意識的に使い、動きの挙動から筋肉の使い方までイメージ出来てしまう。見よう見まねで身体を動かすとあら不思議、同じように身体が動いてしまった。それは自分自身を操り人形のように動かしている感覚だろうか?


(サヤには魔眼の事は気づかれてないけど、完璧だと驚く顔は印象的だな)


 ただ、跪いて頭を垂れるだけなのに、その挙動の一つ一つに決まりがあるのだから、国王陛下との謁見がいかに面倒か分かる話でもあった。

 それは午後の剣術訓練でも同じ事が起きた。

 サヤは侍女服のまま俺の前で長剣を振る。

 今は身体が出来上がっていないから行うのは素振りによる型を覚える事だけだ。


「しょ、初級をもう覚えられたのですか? 身のこなしが初心者とは思えませんけど」

「うーん? なんか出来たっぽい」

「ぽいって」


 身体が出来てないから型を覚えた。

 型を覚えたからといって実戦向きではないけどな。これを実戦でどう組み合わせるかが鍵でもあるから。単純に剣を振り回すだけなら素人止まりだ。生き抜くために必要な技能だから最低限でも身につけるだけなのだ。俺の場合は生産職だから恩恵による技能補正は掛からないしな。

 魔法は技能補正なしでも問題は無いけど。

 初級の型流しが完璧だったためか、今度は中級の型も見せてもらう事になった。

 その際にサヤの長剣が気になり、


(なんか刃こぼれが目立つな)


 恩恵技能の魔具鑑定で形状と劣化具合を調べた。どうもあと数回は打ち合うとポキッと折れる直前である事が分かった。

 サヤの振り方を覚えている最中の俺は思うがままに成物錬成を行使した。


(それならインベントリ内で作るか。芯材にタングステン、剣の表層にミスリルを内側にタングステンの鎖とミスリル薄板で組み立て──)

 

 刃が一本の長剣になったら強化魔法を稼働させ、結合部のミスリルで補強して折れない代物とする。柄頭のネジ部に空間属性魔石をはめて強化魔法を付与。剣身の解除はネジを緩める。


(──最後に剣を収めるための革袋式剣帯を用意して完了っと)


 その間もサヤの中級の型は流れていく。

 動きは日本の居合い術のようなものかな?

 時々だが鞘から抜き出す的な動作もあった。

 一通りの流れが終わるとサヤは振り返りつつ俺の元に戻ってくる。


「以上が中級の型です。数が初級より多いので少しずつ行いましょうか」


 サヤはそう言うと長剣を納剣し俺の背後に移動した。型の動きを背後から誘導するつもりなのだろう。今は身長差があるからサヤは座り、俺の背中に胸を押し付ける事になる。


(柔らかい胸は集中力を削ぐから勘弁したい)


 そうなる前に同意を示しつつ忠告を入れた。


「うん。そ、それよりサヤ? その剣、そろそろ寿命だよ」

「はい? じゅ、寿命って?」

「あと数回、打ち合えば折れるみたい」

「何故それが分かるのですか?」

「鑑定した。それで、今度はこちらを使ってみてよ」


 そうしてインベントリ内から柄と同じ長さに分割された長剣と革袋を取り出して手渡した。

 重さはそこそこあるが、今の俺は身体強化魔法を施しているので、持てない事はない。

 革袋を手渡されたサヤはきょとんとする。


「こ、これは?」

「分割剣って言えばいいかな。組み立て式の長剣で普段は剣身と柄が別れているんだ──」


 と、説明しつつ柄頭をネジのように回す。

 回していくと鎖が柄の中に収まっていき誘導されるように剣身の一つ一つが組み合わさっていく。限界まで回すと剣身が魔力を帯び、組み合わさった境目がミスリル薄板によって見えなくなり、一本の剣身へと変貌した。


「嘘っ、バラバラだったのに凄い硬い」


 サヤは剣身の境目だった部分を叩く。

 カンカンと硬い金属音がするよな。


「強化魔法を施しているからね。使わない時は柄頭を逆向きに回すだけでいいんだ」


 強化魔法が稼働する前なら歪みはないにせよ軽い音がしたと思う。中身が空洞だから。

 強化魔法が稼働するとミスリル薄板が内外で伸び、結合して空洞ではなくなるのだ。タングステンの鎖の周囲にも強化の結界を張る的な。

 ネジを緩めると強化が一瞬で解かれ緩い状態に舞い戻る。強化魔法を動かす魔力もサヤが無意識に拡散させている表層魔力を吸収するから魔力不足に陥る事はない。意識して放出させる魔力でも吸収するが、拡散魔力の方が効率が良いので、その仕組みだけは秘しているけどな。


「あ、先ほどと同じ状態に戻りました」

「最初の内は慣れるのに手間がかかると思うけど、これなら持ち運びに問題はないでしょ?」

「そうですね、剣帯も普通の革袋ですし」

「腰に巻くなり太股に巻くなり自由自在だと思う。革紐の長さもこの金具で変えられるから」

「このような仕組みは見た事ありません!」


 長剣自体にも驚いていたサヤだが、剣帯の調節具に興味津々となってしまった。それは異世界のポーチ等に付けられている調節具だ。

 太股に巻く場合は長くなる部分を縛るかしないといけないが、どんなに太腹を持つ人であろうとも身につける事の出来る物となっている。

 調節具以外はベルトと同じで穴が開いてるけどな。これはこの世界にもある仕組みだった。

 一通りの説明を終えた俺は長剣に戻し、


「今度はこれで上級を振ってみてよ。中級ならもう覚えたから」

「は、はい?」


 きょとんとするサヤの目の前で中級の型をなぞる。覚えるだけなら誰でも出来ると思うぞ?




 見るだけで覚えるって反則では?

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