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転生人形師は理想の嫁を追い求める。〜こじらせ人形師は実在女に「興味が!」モテない〜  作者: 白ゐ眠子
第一章・転生したら異世界でした

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第14話 親の心と子の心と妹心。


 僕が書庫にて書物を読んでいる頃の事──。

 父様の執務室では小さな騒ぎが起きていた。

 一方の僕は読書中に監視魔法で様子見中。


「これをあの子が」

「はい、御当主様」


 それは僕が用意した銀板の事だろう。

 父様は唸りながら一枚一枚を各方向から向きを変えて見つめていた。そして売りに向かった婿の件と共に、僕が教えた事情を問いかけた。


「本当に金ではないのだな?」

「お嬢様はそのように仰有(おっしゃ)っておりました。黄銅という合金との話です」

「黄銅? 聞いた事のない名称だな」

「何でも銅と亜鉛なる金属を混ぜた物だとか」

「亜鉛は聞いた事がある。おしろいに使われているからな。しかし銅と亜鉛を混ぜると金のような輝きになるのか」


 この世界のおしろいは鉛と水銀を使ってないんだね、良いこと聞いた。化粧をする年齢になったら試してみようかな? これでも女の子ですから。


「お嬢様は錬金術をお持ちですし、パンケーキなる菓子の発案者でも御座います。もしかすると私共の知らない知識を持っているのかもしれません」

「うむ。彼奴もそれに目をつけているようだしな、だが」

「はい、室内に置かれた物、例えお嬢様が恩恵で造り出した物であろうとも」

「我が家の資産に含まれる。それを売りに出すというのは考えものではあるな」


 なるほど、屋敷で作った物は資産になるか。

 仮に外で作ったらどうなるのかな?

 それだと僕の資産になるんだろうな。

 僕の魔力を元に作っているから。

 そうなると銀板なども資産価値があるよね。

 証拠品にもなるけど片付いた後に鋳溶かせば延べ棒くらいにはなるからね。

 すると父様の執務室の扉がノックされる。


「入れ」

「失礼します」


 扉を開けて入ってきたのは、とてもおっかない顔立ちのナヤ姉だった。単に母様譲りの強面なだけだけどね、性格は温厚だもん。

 おっぱいもDくらいはあるかな?

 我が家の女子は全員がノーブラノーパンだからね。僕だけは化学繊維が出来た段階でパンツを作って穿いたけど。ノーパンのままってやっぱり嫌だよね、転けて義兄に見られるとかね。

 今は半ズボンだから隙間から丸見えってそうではなくて、ナヤ姉は銀板を示されワナワナと震えていた。


「治っていなかったのですね」


 そして怒りを隠しつつ溜息を吐いた。

 父様はナヤ姉の言葉を聞いて問いかける。


「どういうことだ?」

「元々は彼を更生させるためにお付き合いをしていたのです。手癖が悪く、あちこちで問題を起こしては騒ぎになっていましたから」


 おっと、これは父様も寝耳に水かな?


「そ、そのような奴だったのか?」


 というか婚姻前に家柄とか調べてなかったの? 男爵家って時点でお察しなんだけど。

 父様の場合は丸投げ感が強いね?

 良い年頃の娘だから自分で考えろ的な。

 貴族としてそれはどうなのかって話だけど。

 家令も困った顔になってる、僕もだけど。


「はい、私の言う事なら素直に聞いていましたので、油断したのでしょうね──」


 ナヤ姉のこの言い分は上手いこと利用されたクチかな。言う事を聞いていた、つまり聞いたフリして逆玉を狙った的な。我が家は女所帯だから婿を取らねばやってられないもんね。

 今は母様が妊娠したから次はどうなるか分からないけど、夜中の母様の鳴き声が相当だったから、おそらくは男の子が生まれると思う。

 家に居ないのは教会で寝泊まりしてるから。

 

「──婚姻云々は男爵家の暴走で拾う羽目になりましたけど」


 あらら、捨て子同然の婿様なのね。

 まともな大人なんだから自立しろって思うけど、拾われて我が家で甘い汁を吸っていたと。


「なるほど、仮に離縁しようものなら」

「彼の実家は知らぬ存ぜぬでしょうな」

「ナヤにも汚点が付く、か」


 それは一度でも肉体関係を結べば汚点となるって意味だね。婚姻して関係して別れたら貴族との再婚は叶わない。僕も気をつけないとね。

 非常に難しい顔の父様と家令。

 反応を見たナヤ姉は真っ赤な顔で反論する。


「お、汚点は付きませんよ? まだ、ですし」

「まだ、とは?」

「それを娘に言わせないで下さい!」

「す、すまん」

「ということは寝所を共にしていないと?」

「爺の言う通り、私は鍵をかけた屋根裏で、彼は個室で寝ています」


 ナヤ姉ってばギリギリを護っていたのね。

 しかも宅内別居とはねぇ。屋根裏部屋って侍女達の寝所だよね? そこに住まわせてもらっていたんだ。身の危険を感じてって事かな。

 僕のお尻を追うような男だもんね。

 危険と思われても仕方ないかな?


「で、あれば、だ」

「ですね、離縁状を提出致しましょう」

「爺よ、手続きを頼む」

「承知致しました」


 こればかりは全員一致だね。

 父様は家令に命じ、寄子を管理する辺境伯家への通知を出すようだ。離縁状はどういう理由で別れたかを示すための書類だ。ナヤ姉の場合、肉体関係無しという事実が含まれるため汚点にはならない。事実婚状態と同じだからね。

 籍を同じくしてても、関係を結ばねば本当の意味での責務は全う出来ていない事になる。

 貴族の子女の責務は子を成し育てる事だ。

 直後、玄関先から唐突に声が響く。


「本当に家の前ですね。ビックリしました」


 気づいた僕は視線を玄関先へと移す。


「私の息子は良く出来ているわね。地図魔法を使えばあっという間に王宮でしょ?」

「では、やはり、王宮に?」

「ええ、杖を借りてから五日間で全て済ませてきたわ、あの子の将来を含めてね。サーシャとの婚約話が出た時は待ってって止めたけどね。あの子って女の子には興味がないから困りものなんだけど」

「胸やお尻には興味があるみたいですけど」

「そこは正常って事よね」


 それは困り顔のサヤ姉と初めて見る女性だ。

 銀髪碧瞳の人形のような容姿で気品が漂う。

 服装が上下の黒いツナギというのはあれだけど、それでも絵になるというか。サヤ姉も侍女服のままだから帰宅ってわけではないみたい。


「お陰で魔力も杖から拝借する分、自力で消費しなくて済むのは大助かりね。献上と報告も終わって、この杖も可能なら献上せよって言われて、必要数だけ複製してあげたわ」

「それは大変でしたね。無事に戻って来られて安心しましたが」

「心配かけたわね、でもこれで視察が楽になるなら問題ないわね。王国貴族しか使えないって言っていたから」


 サヤ姉達の会話は凄い意味深だよね。

 献上とあったり報告とあったり。

 すると家令とお二方が玄関先で出くわす。


「おや? サヤお嬢様と奥様?」

「爺はこれからお出かけなの?」

「はい、ナヤお嬢様の離縁に関して手続きを命じられまして」

「ナヤ姉様が離縁?」

「どういう事なのか説明なさい」

「はっ!」


 サヤ姉にはいつも通り返答していた家令だが奥様の一言には直立不動となった。

 奥様、というか辺境伯の奥様って事ね。

 そうして家令が説明を終えると、


「それなら戻って来る前に手続きしましょう」

「では馬車を用意して」

「その必要は無いわ、サヤの手を握って貰えるかしら?」

「はっ、では失礼して」

「爺、到着しても驚かないで下さいね」

「はぁ?」


 奥様が何かを呟いたと思ったら銀色の杖を何処からともなく取り出して、玄関先からパッと消えた。一瞬の事過ぎて何が何やらだよぉ。


(夢でも見たのかな? あ、馬鹿旦那が戻ってきた。大恥をかいたかな?)


 直後、玄関から室内に入ろうとしたが手続きが間に合ったのか扉が開かなかった。

 もしかして離縁状って書類は何らかの鍵を喪失させるための物なのかな? 屋敷の鍵は何処か不思議な仕組みが入っているから。




 無事に離縁、元婿養子の未来は何処(いずこ)

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