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転生人形師は理想の嫁を追い求める。〜こじらせ人形師は実在女に「興味が!」モテない〜  作者: 白ゐ眠子
第一章・転生したら異世界でした

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第13話 親の子と呼べるか否か、


 ひと仕事を終えた母様が驚いた──。

 それは俺が書いた元素周期表を見たからだ。

 異世界金属とされるミスリル、オリハルコン、その他諸々を除く帝国製周期表の削られた部分を全て埋めつつ書き上げ、お絵かき次いでにテーブル脇へと置いてあった紙を母様が拾ったのだ。


「私が帝国貴族からゆす、いただいた物を埋めたの?」


 今、ゆすりって言おうとしたよな?

 この母は何気に武闘派なのかもしれない。

 見た目的に舞踏派でも通りそうだけど。

 俺は落書きしながら母様の問いに応じた。


「書物に分散して書かれていました」

「なるほど、ね」


 即興の言い訳は無事に通ったな。

 異世界の知識なんて絶対言えないから。

 それはともかく俺の作画技能は問題ないみたいだ。


(黒髪ロングの女子高生、何処かで見た事あるんだよな。誰だっけ? もしかすると俺の理想かね? 理想の嫁はこの子って感じで)


 ステータスに無い前世の技能。読書術とか算術とか長い間に身につけた物は例外らしい。

 隣で見ていたサヤでさえ茫然自失だしな。


(サヤはインクが無くならない万年筆に驚いている?)


 それは俺の返答を聞いた母様も同じだった。

 しばらく黙って書き続けるとインクが切れてきたので、収納魔法を陰詠唱してインベントリから漏斗付き予備インクを取り出して詰めた。

 すると詰めている様子を見ていた母様が、


「シュウ、それは何?」


 興味ありそうな表情で横から覗き見る。

 人形以外にも興味があったのか。

 丁度良い分量が収まると漏斗の向きを変え、余剰分を植物紙で拭いとる。万年筆の蓋をネジで止め、滲み出るまで待った。これはキャップ付きだからインクが漏れ出る事も無い代物だ。

 一応、インクだと言葉が通用しないので顔料と答えたけどな。


「顔料補充型の筆ですね」


 答えた俺はインクが滲み出た事を確認するとサラサラと文字を書き、キャップをはめて母様に手渡した。母様は受け取りながら万年筆をジッと見つめる。


「顔料補充型。一般的な筆って顔料を先に浸けて書くものよね、サヤ?」

「そうですね、奥様」

「それを補充していつでも書けるというのは」

「大変便利に御座いますね」

「そうよね、考えたわね」


 二人して楽しそうに見つめている。

 顔料は市販の物でもいいから補充容器と万年筆だけを作ってみようかな。今のままだと母様に持っていかれそうな気がするし。


(芯材はジュラルミン、ペン先はミスリル、表面はミスリルで編んだ繊維と白銀の樹脂で覆って魔力の通りが良いように。ネジ裏には魔石を埋め込んでサヤは色違いの碧色で)


 思い立ったが吉日って事でインベントリ内を意識して成物錬成してみた。出来上がった物は二セット、白銀が母様の万年筆と補充容器、碧がサヤの万年筆と補充容器だ。

 それをインベントリから取り出すように、


「他にもありますから差し上げましょうか?」


 二種類の万年筆を母様とサヤに手渡した。

 母様とサヤは手渡されると同時にきょとんとした。


「い、いいの?」

「その筆は私の物ですから」


 自分の物を持ち去られると少々困るので。

 この万年筆には魔石が付いているからな。

 万年筆といいつつ杖にもなる特殊仕様だ。

 母様は杖になるとは思ってもいないけど。


「私もよろしいので?」

「お世話になってますので」

「ふふっ。早速恩恵を使いこなしているわね」

「そうで御座いますね、奥様」


 母様とサヤは微笑みだけで謝辞を送る。

 息子と主人の贈り物が嬉しかったのだろう。

 その後の母様は大量の植物紙にも興味を示したが、組成が何か気づいたのかドサドサという物音と共にテーブル上へと紙束をのせていた。


「この紙も書きやすいわね。これからの製図はこれを用いる事としましょうか」


 そして見本の数枚を金庫へと収めていた。

 おそらくこれは母様が持つ技能が作用したようだ。複製術と見えたしな。魔法で何回か複製を行い続けると技能として身につくとある。

 魔力の続く限り多くの物品を造り出す。

 人形も数種類有る割に総数で見れば数体程度しかないのもこの技能に依るものなのだろう。

 すると母様は万年筆を握り、何かに気づく。


「ん? この筆、魔力の通りがいいわね」

「一応、杖代わりになりますからね」

「これが杖に?」

「目を凝らして見ると繊維が有りますよね?」

「た、確かに見えるわね」

「それはミスリル繊維ですね。先もミスリルで魔力との親和性が高い物にしています」

「なるほど、考えたわね」

「これが杖にもなる筆ですか」

「これならいつも常備出来る道具にもなりますので。蓋をはめた状態で振ったら、この通り」


 そうして俺は驚く母様達の目前で照明を点けた。陰詠唱ではなく無詠唱だけど母様とサヤだけは俺の魔導蒐集の詳細を知っているからな。

 魔力無制限などは隠しているが、その恩恵があるお陰で色々可能になった事も示したから。


「王宮に持ち込む事も可能になるわね」

「そうで御座いますね、奥様」


 王宮とは王都にあるお城の事だろう。

 この国の国王の住まい兼執務を行う場所だ。

 俺が出向く事は早々無いが母様とサヤは頻繁に出向くという。それでも年に数回程度で夏場限定との事だ。社交界か何かだと思うけどな。

 その間の父様は領地から動かず外ばかり見ている。これも辺境伯故の義務があるのだろう。

 照明を消した後は各属性魔法の粒をポンポンと表してみた。この世界の属性魔法は火、水、土、風、雷、無属性魔法は光、闇、空間だ。

 他にも生活魔法があるが杖を使わずとも使えるので今回は示さない。サヤは属性魔法を覚えている事に驚きを示し母様は嬉しそうに微笑んだ。

 そして杖の効果に満足し、


「これならお父様にも献上出来そうね」

「大変喜ぶと思いますよ、奥様」

「シュウ、もう一つ色違いはあるかしら?」

「何色がいいですか?」

「そうね、黒銀は可能かしら」

「黒銀ですね。私の持つ筆も同じですけど」

「これは黒銀だったのね」


 追加でもう一本用意する事になった。

 残りの要望は黒銀以外に〈杖と剣と天地を割る樹木〉の紋章を加えた。

 これはこの国の王家の紋章との事だ。

 筆のネジ部の小さい部分に紋章を彫った。

 凄い小さいが見ただけで紋章と分かる。

 それを見た母様は満足したのか嬉しそうに何度も頷き、黒いワンピース・ドレスに着替えたのち抱きしめた。


「シュウ、ありがとう!」

「わっぷ!」


 ノーブラだからか柔らけぇ。

 ってそうではなくて!

 母様は何か悩みがあったのか、助かったとでもいうような表情だった。


「親孝行息子で良かったわ」

「それで良かったんですか?」

「ええ、これでいいの」


 母様の考えは分からない。

 今は悩みが吹き飛んだのか清々しい表情のままだったから。サヤも訳知り顔で微笑みを俺に向けているしな。おそらく、子供の知らない何かがあるのだろう。

 ちなみに、昔作った杖を母様に示すと更なる驚きを得た。


「この金属は何!?」

「ここに書かれてるチタンという物ですね」

「これが現物なのね、この魔石は?」

「空間属性に類する魔石です」

「これが空間属性魔石」

「与えている魔法は転移ですけど」

「「転移!」」


 実は先ほどまでの暇な時間で杖に新しい魔法を付与したのだ。以前は何も無かった杖だったけど。これが空間属性魔石だから出来た事でもあった。転移魔法は失伝されていたが書物に残っていたので、解析したうえで改良を施し付与を行った。得られる効果は地図魔法で認識した範囲、屋敷の中なら上階に上がる事も可能だ。

 転移に失敗して壁に埋まるなんて事もない。

 隠れて試したから間違いない!




 自発的に驚きを与える。

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