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転生人形師は理想の嫁を追い求める。〜こじらせ人形師は実在女に「興味が!」モテない〜  作者: 白ゐ眠子
第一章・転生したら異世界でした

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第12話 提案は裁き的なもの。


 数日後の誕生日に僕は洗礼を終えた──。

 僕は両親が求めていた錬成師に選ばれた。

 それは決まっていたのかどうか分からない。

 ただ、追加でもう一つの恩恵が得られたから良しとした僕だった。とはいえ洗礼後も変わらず書庫の虫なんだけどね。


「得られた恩恵は静物錬成、無機物ならイメージするだけで造り出せる。錬金術は元素を造るだけだけど、それをすっ飛ばすのが静物錬成って事なんだね」


 というか書庫でしか過ごせないともいう。

 僕に魔法を教えるはずのサヤ姉は仕事の合間合間でしか教える事が出来ない。辺境伯家の子息と僕を交互に教える約束との事だから。

 一応、教えるに足る姉も家には居るのだけど、旦那がゲス過ぎて近寄りたくなかった。


「男を見る目だけは無いよね」


 誰に似たのか分からない。

 父様もそんなに性格は悪くないからね。

 母様は若干キツい見た目をしているだけで性格は温厚だ。そんな両親の娘として生まれ何処をどう間違えたのか、変な男を拾ってきたのが我が家の長女だったりする。


「僕が生まれた時点で結婚していたし」


 経緯は分からない。

 婿入りしているから実家の事も分からない。

 鑑定結果ではデイト男爵家の三男としか読めなかった。

 ナヤ姉の語りでは領内の王立魔導学校で出会ったとあったから辺境伯の寄子であるのは確かだと思う。どの程度の家か知らないけど。

 そんな役に立つのか不明な次期当主の事は置いといて、溜息を吐いた僕は書庫の一角に金属テーブルと椅子を作ってみる事にした。


「魔力量的に出来るか分からないけど、僕が座っても壊れない椅子が出来たらいいな。流石にずっと床に座り続けるのも辛いしね」


 独り言を呟きながら一人がけの椅子をイメージする。魔力を練り続けると僕の左隣に金で出来た椅子が現れた。テーブルも同じく金だった。金なんてイメージしてないのだけど?


(あ、違った。金じゃなくて黄銅か)


 錬金術なら合金とする前の素材で用意する事になるから手間が減る分、面倒ではなくなるかな。ただ見た目が金に見えるだけあって見る目の無い者が見たら売りに出す事が読めるけど。


(例えるなら義兄とかね。くすんだ黄銅を売って大恥掻きそうだね。それで僕に喧嘩をふっかける。幼子に喧嘩をふっかける事自体が大人げないけど)


 中身が子供のまま大人になった感じかな?

 義兄とか愚兄とか兄運の無い僕は何かがある度にそれを思い浮かべてしまう。忘れる方がいいのだけど書庫の入口でこちらを見ているんだよね。読める行動をこれから行おうとして。


(いつの間に来たんだろう? あれ)


 食事を豊かにする重曹を作って以降、何故かつけられているもんね。幼子の小さな尻を追う義兄って凄い変態みたいだけど。


(盗られる前提でいた方がいいかな。幼子の言い分なんて、誰も聞こうとは思わないし)


 僕はそんな義兄の視線に気づきつつも魔力を回復させるため、書庫から離れてトイレに向かった。義兄は気持ち悪い笑みで僕を見送った。


(やだなぁ〜、見る目が無いエセ貴族って)


 廊下の角を曲がったのち気配隠蔽を行使して戻ってくると、予想通りの行動に出ていた。


「金を生む末妹か、馬鹿には出来ねぇな」


 それは金じゃないよ、黄銅が金に見えるって本当に見る目が無いんだね。これだと義兄が継いだ途端、僕の実家が無くなるなんて事が起きそうだな。騙されて買わされて資産の全てを悪徳商人に持っていかれるというね。


(ああ、どうにかして持ち去ろうと考えてる)


 その間の僕は覚えたばかりの念写魔法を用いて、その光景を別途用意した銀板に記した。

 魔力量はこれでギリギリという感じ。

 難癖つけられて余計な家に嫁がせられては堪らない。あれでも次期当主、両親の留守を預かる身である以上、僕のいたずらとか何とか言って追い出すくらいはやってのける。


(馬鹿にしないって言って、結局は大恥掻いて馬鹿にするよね。チタンとかを出しても銀って勘違いしそうだし、何か良い方法は無いかな)


 兄運の無さは前世からの業があるのだろう。

 前世ではそれが原因で彼が死んだから。

 原因の一つに僕の手伝いもあったけど、同じ目には遭いたくないと思うのは仕方ないよね。

 そうこうしているうちに義兄は身体強化魔法を用いてテーブルと椅子を持ち上げて出ていった。泥棒義兄の背中を黙って見つめる僕は念写魔法を魔力の限界まで行使し、たまたま通りかかった家令に手渡す事にした。

 こういう時の第三者的な。


「爺、ちょっといい?」

「お、お嬢様、何処から現れたので?」


 気配隠蔽したまま声をかけたからか、家令はビクッとなって振り返った。


(これは心臓に負担をかけちゃったかな?)


 僕は悪びれもせず、書庫を指さして答えた。


「中に居たの。それよりも僕が作ったテーブルと椅子が盗まれたから、ナヤ姉様か父様にこれを手渡してくれないかな?」

「こ、これは?」


 家令は何枚もの銀板を受け取ると、おっかなびっくりな様子に早変わりした。こういう証拠の残し方って割と無いのかな?


「覚えたての念写魔法で記録した証拠だよ。銀板の方がずっと残ると思って」


 肌やら色の薄い背景は銀の質感のまま。

 輪郭と各種明度は酸化銀で示されていた。

 銀の化学反応を用いただけあって結構綺麗に出てるよね。それが誰なのかって部分も明確に現れているし、銀板が四つ切りサイズだから持ちやすいという点もある。

 家令も廊下ですれ違ったからか、


「あれはお嬢様の金テーブルと椅子でしたか。商人へ売りに出すと仰有(おっしゃ)っておりましたが、許せませんな」


 怒りも露わな雰囲気に変化した。

 末妹とはいえこの家の息女だもんね。

 見た目は完全な男の子だけど。

 一応、金と言っていたので訂正はした。


「売りに出しても意味ないよ。あれは金ではないから」

「え? 金ではないのですか?」

「あれは黄銅って言えばいいかな。金に見えるけど、銅と亜鉛っていう金属の合金なんだ」

「そのような物もあったのですね」


 割と知らない者も多いようだ。

 静物錬成は造り出す者の知識量に影響するってあるもんね。錬金術も同じように。父様達が理解不能を示した重曹ですら化合物だから、そういう知識の有無が影響するともいう。


「僕も魔力が空だからお願い出来るかな」

「承知致しました」


 家令は怒りを押さえ込みながら父様の執務室へと急いで向かった。ほどよい大きさの銀板を大事に持ったまま。一応、余り物の羊皮紙を挟んでいるから、擦れて削れる事は無いと思う。


「どういう沙汰になるか知らないけど、屋敷の品物を盗んで売るのは犯罪だよ、お義兄様」


 銀板に記した念写も酸化作用を用いたから出来たんだもん。知らないまま覚えないまま書庫に放置では、お家のお先は真っ暗だよね。

 あんな役立たずな義兄が跡を継ぐのだし。

 何はともあれ、魔力を少しずつ回復させた僕は冷たい床に座りながら自分のお尻を撫でた。


「お尻が冷たい。無機物なら化学繊維とか出来ないかな? あ、いけたっぽい」


 金属がダメならクッションでいいじゃない。

 絵柄が何も無い真っ白なクッションが出来た。それなら最初からこれで良かったかもね。

 金属椅子ってお尻に優しくないし。


「ふかふかクッションとブランケットで寒さ防止にはなったかな。冬生まれって本当に損だよね。あまりに寒すぎて防寒が必要だと思うよ」


 用意したブランケットを羽織り、お尻にクッションを敷いた僕は読み終えてなかった書物に没入した。ほどほどに寒気を防いでくれるから助かったかも。




 義兄の行方、商人へと売りに出し以下略。

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