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転生人形師は理想の嫁を追い求める。〜こじらせ人形師は実在女に「興味が!」モテない〜  作者: 白ゐ眠子
第一章・転生したら異世界でした

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第11話 提案は有意義なもの、


 魔導師が選ばれるかと思ったら──。

 母様と同じ人形師だった件。まぁこれはこれで別に良かったけど、母様の喜びようはハンパなかった。跡継ぎ出来たとまで言われ、長男を怯えさせたほどだ。母様は問題ないと長男を諫めていたけれど。何が問題ないのやら?

 洗礼日の翌日、


「今日からは工房で遊びましょう」


 朝食時の母様は満面の笑みでテーブル前に座る俺へと提案してきた。工房、それは母様が仕事を行うとされる、人形部屋の事だろうか?

 母様の工房は屋敷地下に存在し、洗礼を受ける前は危険だからと立入禁止になっていた。

 これも母様が置きっぱなし放置という条件が前に付く危険だろうな、きっと。こればかりは実際に訪れてみない事には状況が分からない。

 提案された俺は母様の笑顔の奥にある圧力に屈して頷いた。


「う、うん」

「決まりね! 楽しみだわ〜」


 すると母様の様子を見ていた父様が(いぶか)しげに問いかける。


「大丈夫なのか、ミイ? まだ洗礼後だろう」

「大丈夫よ、貴方。洗礼後であってもこの子なら問題ないわ」

「そうなのか?」

「私の目に狂いはないわ」


 ミイとは母様の愛称だろう。

 三十代後半の両親仲は相変わらずだが父様の心配は昨年の問いかけが原因のように思える。

 幼子に魔法は早い、訓練前の子供を工房へと連れて行く事が信じられない様子だった。


「ま、まぁ、ミイがそう言うなら」

「任せて、この子は凄い事をしてくれそうだから、私も期待しているのよ」


 どうも母様は書庫の件を家令と侍女一名のみに伝え、他には示していないらしい。期待の一言で家令に目配せし、母様に仕える侍女と共に何らかの準備に向かったから。


(かかあ天下、ではないか)


 心配気な父様と楽しそうな母様。

 家の中の権限は父様より母様の方が上のようで誰もが逆らう事が出来ないみたいだ。父様も必要以上に追撃しないあたり、夫婦以上の上下関係が両親の間にあるのだろう。

 嫁の尻に敷かれた辺境伯。母様自身は権力を使っているようには見えないが周囲の反応がそれを物語っていた。

 極一部、次女だけは反応が異なったけど。


「いいなぁ〜。シュウ君」

「こら、ミウは学校でしょう」

「うん」


 スウ姉さんに諭されて渋々という様子だ。

 おそらくミウ姉さんは入る事が許されていないのだろう。それはスウ姉さんも同じのようで諭しながらも羨まし気に俺を見つめていた。

 長男と次男の兄達は我関せずで朝食を召し上がっていたけどな。兄達は戦闘職の前衛であり後衛に位置するスウ姉さんとは立場が異なるから。生産職では母様とミウ姉さんだけだし。

 俺もその中に入るがまだ言うほどの知識は無い。異世界の知識はあるが、この世界の知識と呼べるものはそんなに無かった。


(ミスリルとか言われてもどんな物か分からないしな。作ろうとしても無理だったし)


 まさに異世界金属って感じの代物だ。

 現物はちらほらと屋敷のあちこちに見えているが、どういうわけか無機鑑定しても理解出来るものではなかった。


(銀イオンではない電子的な物が加わった?)


 そんな印象を鑑定時に思ってしまったのだ。

 よく分からない俺の疑問は置いといて。

 朝食後、母様に抱っこされた俺は工房までの順路を覚えていく。この屋敷、屋敷というか城は何気に大きく、あちこちが入り組んでいた。


(侵入者を迷わせるため、かな?)


 そうとしか思えないほど右へ左へと行ったり来たりしていた。普段から通り慣れた母様はともかくこれを覚えるのは至難の業と言わざるをえないだろう。それこそマッピングしておかないと詰む。


(地図魔法が確かあったような、あった)


 城の中間ではあるが今更ながら地図魔法を行使して現在地を探る。だが中間と思っていたのに実際はまだ上層だった。この城は広すぎる。


(全十七階、てっぺんの尖塔を含めるとそんなに高いのか。高台に立っている分、余計に大きく見える。これも権威の象徴なのかもな)


 地図魔法を行使した手前、覚えるのは諦めた。最短で行き来が可能なら助かったりもするが、これだけ広ければ体力の無い幼子一人で行き来する事は出来ないだろう。

 しばらくの間は母様豊満な胸を感じながら降りるしかないだろうな、柔らかい。後ろを歩くサヤの胸もいいけど母様の方が弾力が凄くていいなぁ。実在女には興味無いがこれは別かも。

 それからしばらくして、


「着いたわよ」

「うわぁ〜」


 俺は母様の工房へと辿り着いた。

 そこは途轍もなく広い空間で、端から端まで山のような金属と有機繊維、作りかけの人形などが置かれていた。母様は作業前に何が何であるか一つずつ示してくれた。


「これが人形の表皮よ。魔物から採った素材を培養して作った物なの」

「これが骨格よ。こちらの物は動物型、こちらが人型ね」

「これが臓器にあたる物ね」


 等々、見れば見るほど興味溢れる代物が多かった。それを一緒に見ているサヤは気持ち悪いのか青ざめていたけれど。有機的な素材って血が付いてなくても厳しいのかもな。

 妙にネバッとしてて光沢があって、匂いこそ無いが、素手で触るには抵抗がある的な。

 母様が一通りの説明を終えると、俺を近くの椅子に座らせたのち表情を改め、魔力を全身に漲らせた。


(これからお仕事を開始するって事か、ん?)


 その様子を黙って見ていた俺は、一枚の羊皮紙に気づく。俺の斜め前の壁というか右隣に立つサヤの胸で見え辛い物でもあったが。

 椅子から身を乗り出し奥の壁を視認する。

 傍から見たら胸を凝視してる風にも見えるけど、そこそこ大きな胸が邪魔に思えただけな。


(あれは周期表か? 水素と銀、銅と鉄までは把握済みか。他は穴あきだな、意図的に消されたようにも見える。著者は帝国の誰かか)


 著者欄に名前はなく帝国製とだけ記されていた。意図的に消したのも不必要に知らせる必要が無いとの判断でもあるのだろう。金の部分の消し込みだけは念入りって感じがしたし。

 一方の母様は人形の組み立てに入ったためかこちらには気づいていない。

 俺はサヤに願い出て、


「椅子をテーブルまで寄せて貰えるかな」

「何かされるのですか」

「うん、見てるだけだと暇だし」

「承知致しました」


 俺が降りた椅子を近くのテーブルまで移動させてくれた。その間の俺は壁面にある羊皮紙を視認し、穴あき部分との差違を覚えた。


(羊皮紙は見辛いから、成物錬成を使って植物紙とインク補充の万年筆をイメージっと)


 洗礼後に与えられた〈成物錬成〉により手のひらの上に四つ切りサイズの植物紙と手頃な大きさの万年筆を顔料インク付きで造り出した。この恩恵は有機物、無機物問わず造り出せる恩恵だ。この恩恵は母様も持っていて、俺の反対側で金属骨を一本ずつ造り出していた。

 するとサヤがきょとんとしつつ、


「そ、それは?」

「植物の紙と、中にインクを入れる筆?」

「植物の紙?」


 質問してきたのであっけらかんと答えた。

 そして答えると同時に近くにあった定規を使い、枠を描き穴あき部分を埋めていく。

 放射性物質の枠は無く、全て異世界金属が埋まっていた。ミスリルはその枠にあった。


(ミスリルは銀イオンに魔力が加わった物なのか。だから、銀なのに銀とは異なると)


 色々読み解くと面白いくらい楽しめるよな。

 高二で理系を選択してて正解だったわ〜。


(そういえば、何で理系だったんだ?)


 ただ、思い出そうとしたら寒気がした。

 思い出すなという無意識の警告だろう。

 俺と母様の様子をきょとんと見つめるサヤだけが、妙な置いてけぼりを食らっていたが。




 シュウは完全に母似だな。

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