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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

ココロノート

作者: M ZERO

もしも、願った物が叶うなら――――


 一本のボールペンを握り、机に開かれたノートにペンを走らせる一人の少女。


 少女の周りは賑やかだ。だが、少女はその輪には入らず、まるで自分には無関係かの様に一切視線も向けることは無かった。


――――ここは、少女が通っている高校の教室。


 少女の周りの同級生達は、仲の良い友達同士で集まって楽しく会話をしている。では、何故少女は一人でいるのか。


「見てよこれ、また一人でノートにポエム書いてるよ」


「うわ、本当だ。良くこんな気持ち悪いポエム書けるね」


「あっ……」


少女が書いてたノートが取り上げられてしまった。そのノートにはポエムがどうやら書かれている様だ。クラスメイト達はそれを気持ち悪いポエムとして晒し上げた。


「夏の日差し、まぶしい日光。ほんのり焼ける肌に体操着を着て、皆で楽しくスポーツをする。だってさ!」


「あはは!! 何それ、楽しくスポーツってあんた友達いないのに出来るわけないじゃん!! 」


少女を馬鹿にするクラスメイト。クラスの中では派手なグループで有名な二人組だった。少女はいわゆるイジメと言う物を受けていたのだ。周りのクラスメイトは誰も助けようとも、止めようともしない。それどころか――


「だっせぇ。お前良く学校に来れるな? いい加減自分がこの教室に居るだけで迷惑なの気付けよ」


「ちょっと優しくない? ここに居るだけじゃなくて、そもそも存在自体が迷惑だから早く消えて?」


周りのクラスメイトも便乗して少女をイジメていたのだ。それでも少女は屈しなかった。


「私のノート、返して。」


「嫌だと言ったら?」


威圧するかの様に派手な二人組の内の一人が問いただす。


「返して。お願い。」


一切表情を変える事無く少女は視線を真っ直ぐ向ける。冷静で淡々とした口調で。


「もういいわよ。本当あんたはつまらない」


――――あんたつまらない。


「どうして私が貴女達の次のターゲットになっているの? 私はあの子とは違う。どう頑張っても私は卒業するまでこの学校に通い続けるし、死なない」


少女は少し鋭い視線へと変えた。その僅かな感じだがその表情には怒りが感じられる。


 少女のいるクラスは31名のはずであった。だが、今は30名しかいない。ここにいるクラスメイト以外には何処にもいない。不登校もいない。そう、自殺したのだった。

その自殺したクラスメイトの名は「有海(ありみ) 楓」


 彼女は少女とは違い明るい性格であり、少女をイジメている二人組とは仲が良かったのだ。では何故、その二人組と彼女は仲が悪くなってしまったのだろうか。それは、ある日彼女が少女を庇ったある出来事からだった。


――――今から3ヶ月前の新学期。


 4月の桜が咲いてる頃。教室には新しいクラスメイト達がいる。皆は新しいクラスに馴染める様に近くの席の子と会話をしていた。当然少女だけは一人、ノートにペンを走らせていた。


「ねぇ、それ何書いているの?」


少女が見上げるとそれは、前の席に座っていた少し派手ながらも顔の整った美人な女の子に話しかけられていた。すると、その女の子は少女のノートに手を取った。


「ふーん、ポエム好きなんだね? あたしには何が良いポエムで何が悪いポエムとか全然分からないんだけど、あたしはこのポエム好きだよ」


女の子は少女のポエムを褒めてくれた。


「え、ありがとう……」


少女は戸惑いながらもお礼を言う。


 初めて誰かに自分のポエムを褒めて貰えた。それだけが少女にとっては嬉しかったのだ。その後、少女が書くポエムを女の子はその光景を眺めていた。


「楓じゃん。何してるの?」


「三咲。この子のポエムを見てたの。結構センスあると思ってね」


派手な二人組の内の一人が楓に話しかけていた。三咲と呼ばれる子は金髪に胸元まで真っ直ぐ伸びるロングヘアーに、化粧はいわゆるギャルメイクと呼ばれる濃い化粧に派手なつけまつげをしていた。そして瞳には青色のカラコンをつけている。楓とは違う見た目だった。楓はナチュラルなメイクに目の辺だけ少し濃い目のメイクをしている。


「あんたポエム好きなんだ。アタシは三咲。三条 三咲。宜しくね」


三条 三咲。さっきまでポエムを馬鹿にしていた二人組の内の一人の子の名前だ。


「三咲はあたしと幼なじみ何だ。三咲もそのギャル化粧辞めたら良いのに」


「アタシは楓と違って美人じゃないし、このくらいやらないと外を歩けないの!」


二人のやり取りに少女はクスッと笑った。


「そういやあんた名前はなん――」


「おっはよう! あっ三咲と楓じゃん! 同じクラスで良かったー。ってそこで二人何してんの?」


三咲が少女に名前を聞こうとした瞬間に、クラスでは1番派手な格好をした子が教室に入ってきた。彼女はクラスで1番逆らえない相手であり、スクールカーストでは1軍と言われるクラスの頂点の存在であり、その存在は同期生どころか同学年全員に知れ渡っている。そんな彼女は自分の席に鞄を置くと、楓と三咲の場所へと行く。当然だがそこには少女もいる。


「え? マジ? 何であんたが同じ教室にいんの?」


「知り合い?」


三咲が訪ねる。


「前のクラスで同じだった。それに何で三咲と楓がここに座ってんの? あっそうか、楓がここの席だからか」


「うん。楓と話してたんだ。そしたらこの子がノートに何か書いてたからちょっと気になって……」


三咲はここに居た理由を誤魔化した。


「三咲?」


楓は何で誤魔化したのか察してはいない。


「あんた気持ち悪いポエムまた書いてんの? うっわぁ、文字までもが気持ち悪い。これ見て思わない? 楓」


「あたしはこのポエム気持ち悪いとは思わないよ。逆に――」


「アタシは気持ち悪いってより嫌いかな」


「流石三咲ー、分かってるじゃん。楓は国語が苦手だからそもそもちんぷんかんぷんだったかもね。ごめんね」


楓が何か言いかけたのを、三咲はそれを防いだ。


「それより楓と美久、今日帰りにカラオケ行かない? 久しぶりにオールしよう」


「三咲それ良いね。楓も勿論行くでしょ?」


「ごめん! 今日弟の面倒をお母さんから頼まれてて今日は早く帰らなきゃ行けなくて。明日だったら行けたよ」


「じゃあ明日にしよっか」


美久が明日にカラオケオールすることにした。


美久は自分の席に戻っていった。すると様子を伺うかの様に三咲は少女に話しかけた。


「ごめんね。美久があんたの事を嫌いなの知ってて、ポエムの事を貶したりして。アタシは別に気持ち悪いとも嫌いとも思ってはいないから」


三咲は申し訳無さそうに少女に気を使った。


「どうして美久に話し合わせてるの? 美久と三咲は同じ中学だったのなら別に気を使う必要無いと思うんだけど」


「楓は私立行ってたから知らないだけで、中学の時に一人美久に逆らったら標的にされた友達が居たから……。その子は不登校になっちゃって、今も外に出ないらしい」


「美久ってそんなに荒れてたの。小学校の時とは大分変わったのね」


三咲と美久は同じ中学出身。楓は中学は公立では無く、私立に行ってたらしい。本人曰く、私立は真面目な子が多いけど陰湿なイジメが多かったと。


それから今日のホームルームが終わった。


――――ただその時に事件は起きた。


「ちょっとトイレ行ってくる。待ってて」


「いってらー」


美久がトイレに行き、日直だった楓と少女は黒板と教室の掃除をしていた。教室に今いるのは、数人の同級生と楓と三咲と少女だけだった。美久が教室から居なくなると教室の空気は少し和らぐ。


「楓……アタシは前の美久に戻って欲しい。楓もそうと思わない?」


「それは思う。美久が威圧的な態度を取るのに何か理由があるの?」


「不登校になった子がいるって話たじゃん? その子は美久の彼氏と浮気してたの。いや、本当は美久が付き合う一ヶ月前から付き合ってたんだ。その事を美久が付き合った半年後に知って激怒して、それ以降からあんな威圧的な態度を取るようになっちゃったの。アタシはその事は美久から聞かされるまで知らなかった。他の子達は知ってたみたい。アタシが1番美久と仲が良いから知らされて無かったのだろうけど。それから、美久はイジメをする様になっちゃったの」


美久は過去に友人関係と恋愛関係に悩まされていた。真相は友人と彼氏に騙されて蹴落とそうとしていたのがバレて逆に周りの友人もその彼氏と友人にイジメてたらしい。そしたら、友人は不登校に、友人の彼氏だけは美久の画像をネットにばらまき、あろう事か更衣室での着替えてる姿までもばら撒かれた様だ。後に警察に捕まり、今は少年刑務所にいるらしい。


「あんたは美久に負けないでね」


「は?」


「ん?」


三咲が後ろを振り向くと美久がいた。


「三咲、あたしに負けないでねって何? しかもそいつと何話してんの? 」


「違うの美久、あたしが日直だったから三咲にあの子に掃除用具借りてきてて頼んでたの」


「ん? そういうこと? あれ?美久聞き間違いでもしたのかな? って何これ。楓これあいつのポエムのノートだよ。気持ち悪いポエムばっかでマジ鳥肌立ちそう」


黒板を掃除していた楓に美久は少女のノートを見せびらかす。


「美久、あたしはそのポエム好きだよ」


美久は楓が想像もつかなかった返答が返ってきて驚いている。その光景を三咲は怯えていた。


「楓、あんた何言ってるの?」


「美久、何で人を馬鹿にする発言ばっかりするの? 昔の美久はそんな事しなかったじゃん! あたしは昔の美久は好きだったけど、今の美久は何か別人みたい」


「私立に行ってた楓には分からないでしょう! 美久がどんな事を思ってたか何て。あんたが私立行くのは仕方なかったけど……」


美久と楓の言い合いになり、教室の空気は凍りついている。


「三咲、三咲は美久と楓どっちの味方?」


美久は三咲に問う。当然三咲は直ぐには返事が出来ない。


「もしかして、楓も三咲を使って美久の事を騙そうとしてる?」


「え? 美久何言って……やめて!」


楓は美久に壁へ押し付けられた。美久は相当怒ってしまってた。三咲は何も出来ずにいた。


「三咲、もう一度聞くけど三咲は美久と楓、どっちの味方?」


「そ、それは……もちろん…………美久だよ?」


「三咲そうだよね? 三咲もこっちに来なよ? 辛かったよね、楓のいいなり。ちょっと懲らしめちゃおう」


「あはは、それ良いね! 美久どんどんやっちゃお!」


三咲の心は限界だった。笑ってるのか泣いてるのか悲しんでいるのか嬉しいのか、良く分からなくなっていた。


「お願い辞めて! 辞めてよ!」


楓は服を脱がされ美久はスマホを取り出しカメラで写真を撮った。そうまるで中学の時に自分がされてきた事をしようとしていた。そして、その一時間後、校門に立たされた楓は見知らぬおじさんが乗ってきた車内へと連れ込まれた。


その30分後、美久は満足したかの様に三咲と二人で帰っていった。


「あ、あの……」


少女は楓に何か言おうとしていた。でも、楓は表情何一つ変える事無く一点を見つめていた。


「大丈夫? ごめん、私のせいだよね」


「……良いよ、貴女は悪くない。でもどうしよう、私妊娠してたら、流石にシャレになら無いよね、あはは…………はぁ、まぁ持ってて良かったピル」


すると楓は直ぐにピルを飲み、こう放つ。


「私は別にこんなの慣れてるの。だって今まで何人者相手をしてたから。私立であった陰湿なイジメて私がされてたのね。でもね、私は大丈夫だった。普段からこれを飲んでたのもあったのかも知れない。さっきのおじさんもびっくりしてた。私は処女として投稿されてたみたいだけど、実際は違い過ぎてね。あはは、私は彼氏がいたこともあるし大丈夫だよ」


大丈夫とは良いながらも楓の精神は壊れていた。


「あの……もし良かったらこのノート貰って下さい、少しでも元気が出る様に、全力でポエム書きましたから」


と言って少女は楓にノートを渡す。


「ありがとう。このポエムも素敵だね。あたしは恵まれてるなぁ、貴女がポエム書いてくれたからあたしも嬉しいよ」


「ありがとう。じゃあ……」


少女と楓はそこで別れた。


――――数日後


少女は冷たい体となって発見された。


少女は美久の元彼の手によって殺されていた。勿論美久はそんな事を頼める様な関係では無い。では誰が彼を雇ったのか、それは……


「これは……」


「ごめん。美久はこの子だと思ってて……本当にごめん! 俺また刑務所だろうな。いや、次は死刑かも知れない」


「ううん、大丈夫。あたしが頼んだもの。でも、まあいいっか」


「ごめんな三咲……」


彼を雇ったのは三咲だった。三咲の精神は破壊していた。美久を殺してほしい、そう頼んだのは三咲だった。確かにこの少女と美久は体格が似ていた。髪型も似ている。


「そこで、何しているの? 三咲と宗介君……」


「楓? え?どうして……」


「これって、まさか三咲が?!」


「違う。違うのこれは……」


「俺が間違えてこの子を……だから三咲は悪くはない!」


宗介君は三咲を庇った。


「そう、この子がもうこの世には居ないんだね」


楓は悲しそうにしていた。


「ごめん……ごめんじゃ済まされないのは分かってるけど」


「ううん。むしろ良かったのかも知れない」


「どういうこと?」


三咲は全然把握が出来ていない。それは宗介君も同じだった。


「この子の名前は有海 楓。今日から私がこの子になる」


「楓、どういうこと? どうして?」


「私が巻き込んだのが発端だけど、良いの。私も私の人生を終わらせようとしてたから……。だからこの子は有海 楓。ここに生徒手帳を置いて置けばバレない。それに私には、両親は生まれた頃からいないから」


楓は楓の生徒手帳を少女の近くに置いた。




――――そう、今教室でイジメられている少女は有海 楓。クラスメイトは死んだと思っている彼女が、今は少女だったのだ。そして、少女の名は「本宮 瑠奈」

今、ここにいる楓は本宮 瑠奈として人生を変えていた。




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