その4「アナタの欲望--解き放ってあ・げ・る☆」
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--それから少し時間が経って、場所はプールに付設する更衣室兼ロッカールーム。
更衣スペースに入るすぐ手前のシャワーブースでは、今日の練習を終えた村上三姉妹が、濡れた競泳水着を脱いで熱いシャワーをそのしなやかな裸身に……
というのは「嘘」で(全員まだ自主練で泳いでます)、水泳部コーチの児玉が、その筋肉質な裸体を晒してシャワーを頭から浴びていた……って、お前かよ!!(注:なお、もちろんここは男子更衣室です)
しかもそれだけではない。物語の「視点カメラ」的にはその鍛え上げられた広背筋しか映っていないが、「マイク」の方は何やら怪しげなうめき声を拾ってくる。
「ハァ……ハァ……小早川くんの競泳水着姿……ハァ……ハァ……」
何分、「視点カメラ」が映さないので、何をしているのかは分からないが、とりあえずハァハァ呼吸は荒く、何だか小刻みに身体も動いている。繰り返すが、この視点からでは何をやってるのかはさっぱり分からないのだが!
「野性味のある三姉妹もいいが……ウッ……やはりあの美貌に気品ある物腰……ウッ……そしてモデルばりのスタイル……た、たまらん……ウッ……ウウッ……」
だから「ウッ」とか何やってんだよ!?と、さすがに読者諸氏も疑問を感じたであろう(すっとぼけ)、まさにそのとき!
(…………ッ!?)
更衣室のプールとは逆側の扉がガシャっと開く音がして、何者かが室内に入ってくるのを感じた児玉は慌てて加速していた動きを止める。何せカーテン仕様のシャワーブースは、天井部分が開いているので声や音は筒抜けなのだ。
それにしても一体誰だ? そもそもこの時間帯は水泳部にしか開放されておらず、となれば女子しかいない以上、ここを訪れる生徒がいるのはおかしい。あの「清水宗春」とかいう少年? いや、それなら「プール側」の扉でなければおかしい。なら、一体誰が……?
と、不審に思ったその瞬間、入り口のカーテンがガバッと開かれ、驚いて振り向いた児玉の視界に飛び込んで来たのは--!
この場には場違いにも程がある、茶色い帽子と同色のトレンチコートを着た、マスク&サングラス姿の「不審者」であった!?
「なっ、何だお前はッ!?」
「フッフッフ~♪ 知りたいのなら教えてあげちゃおう☆」
何で「男子更衣室に」こんなあからさまな不審者が!?と混乱する児玉を更に驚かせたのは、その不審者の得意げな声が明らかに「若い女性」のものであったことだが、しかし本当のその驚きは、その後にこそ待っていた!
ガバッッッ!とまるでマントを翻すかのように、一息でトレンチコートを脱ぎ捨てる不審者。冷静に考えれば左手一本でとかとんでもなく器用な気もするが、そこはあくまで演出の都合だ!
それと同時に右手でマスク&サングラス、更に帽子も一気に外して(これも演出の都合)、衣装の下に隠されていた不審者の「正体」が明らかになったその瞬間、今度こそ本当に驚愕した児玉は、「なああああああああっっっっ!?」と大きく叫んでしまった!
何故ならば、そこに姿を現したのが20歳ぐらいの派手めな美女で、身体付きもボンキュッボン!のプロポーションの持ち主であったから--というだけではない! 何より児玉の目を惹き付けたのは、そのウェーブのかかった紫色の髪の隙間からのぞく二本の「触覚」……については、まったく気にも止めていなくて(笑)
大きく見開かれた児玉の瞳に映っていたのは、その謎の美女が身に纏っていた、ド派手なレインボーカラーの「競泳水着」であった! ちなみに「セクシー競泳水着」とでも言えばいいのか、胸元の部分がぱっくり開いて豊かな谷間を見せつけているぞ!
「フフ、どぉ? アタシの『競泳み・ず・ぎ』☆ 知ってるわよぉ、アナタ、『競泳水着』がだ~い好きなんでしょ? もちろん『性的な』意・味・で☆」
謎の競泳水着美女からの問いかけに、児玉はギクッ!と硬直すると同時に、汗がたらりと背中を流れ落ちる。
そう、それこそは「女子水泳部のコーチ」として、決して知られてはいけない児玉の秘密であった! 幼い頃から水泳の世界に打ち込んでいた彼は、物心ついた頃から周り中が競泳水着の女性だらけ。初恋の相手もスイミングスクールの女性インストラクターだったのだから、いつしかそんな風になってしまったのも仕方が無いことだ。世の中の水泳男子はみんなきっとそう!(@作者の個人的な見解です)
ただ、一つだけ児玉の名誉のために弁護すれば、だからと言って彼は競技者時代から三ツ矢水泳部のコーチとなった今に至るまで、一度もセクハラ的な行為をしたことはない! 水泳部の男性コーチといえば、エロ創作の世界では「指導」と称して水着女子にお触りを……とか「凝りをほぐしてやる」とか言ってマッサージを……とかそんなのばっかなイメージだが、彼はそんな気持ちはグッと堪えて「健全な指導者」であり続けていたのだ。
そりゃまぁ、たま~に練習後のシャワールームでちょ~っとばかし「発散」するときもあるが、それぐらいは多めに見てあげて欲しい! まぁ碧衣が知ったら絶対キレるとは思うけど!(苦笑)
「フフッ、そんな顔しなくていいのよ? エロいよねぇ『競泳水着』。濡れてテカった薄々の生地が、身体にピタッとフィットしちゃって、あんなの目の前で見せられたら、そりゃあ触ったり、撫で回したりしたくなっちゃうよねぇ♪」
「そ、そんなことはない! 俺は、そんなよこしまな目であの子たちを見たりは……!」
「え~? アタシの競泳水着見てそんなに〇っきくしてるのにぃ? 我慢なんかしなくていいんだから☆ はい、ムギュッ♪」
「~~~~~~~ッッッ!!!」
いきなり美女に抱きつかれた児玉が、ムニュッ☆と潰れた巨乳の感触、そして何より身体に貼り付く水着の生地のスベスベとした滑らかさに絶句する!
「ほ~らも~っと〇っきくなった♪ じゃあ、アナタが溜めに溜めてきた《欲望のエナジー》、今からアタシがた~っぷりと吐き出させてあ・げ・る☆」
そう耳元に蠱惑的にささやきかけると、美女は腰の辺りに回した右手を焦らすような動きで「下」へと伸ばす。
そして「お目当てのもの」を探り当てると、優しくそれを包み込みながら、胸板に押しつけた水着の胸をゆっくりと上下にスリスリさせて………………
…………
…………
…………
「ハイ、いっちょあがり♪ うんうん。さっすがガタイがいいだけあって、すっごく濃いのがたっぷり取れたし☆」
どうやら失神しているらしく、魂の抜けたような顔でその場に崩れ落ちた児玉を見下ろしながら、謎の美女--淫魔アゲハはウフフ♪と笑う。
よっぽど溜まっていたのだろう。「仕事」の方はあっさり済んだし、結果の方も上々だ。欲を言えば、これだけ「濃厚な物」ならビーカーなどでなく「自分の身体で」受け止めたかったけど、まぁそんなことをしたら浮田にキレられるのは必至なので、ここは我慢のしどころだ! 真面目に仕事してるアタシエラい!(エヘン☆)
(ただ一つだけフクザツなのは、コイツ明らかにアタシの胸より「水着の方に」興奮してたよねぇ?? ちょっとプライド傷付くんですケド!?)
ただの競泳水着じゃつまらないと思って、せっかく胸元を大胆に開けたエロ仕様にしたというのに、こいつの視線は谷間じゃなくて水着を見てたし、胸板に押しつけた時だって、アタシの美乳よりむしろ「水着生地」の感触の方に悦んでたし!?
……何だかムカついてきたので、〇〇〇を蹴り飛ばしてやろうかと足を上げるアゲハ。だが、その足が〇〇〇を蹴り抜く寸前、アゲハの頭が後ろからボコッとしばかれた!
「痛あっ!? いきなり何すんのよ、センセェ!?」
顔を確認するまでもなく、魔の物である自分にそんな失礼なことをするような人物は一人しかいない。涙目で抗議するアゲハに、その人物--三ツ矢学園教師・浮田直人は、ぶ厚い魔道書を片手に(どうやらそれでしばいたらしい)冷ややかな声で吐き捨てた。
「……アホかお前は。せっかく気絶してるのに起こしてどうする」
「そこは大丈夫だよぉ。た~っぷりエナジー抜きとったから、当分目を覚まさないって。ほら見てみて! こ~んなにだよ、こ~んなに♪」(ドヤッ)
「………………まぁそれについてはよくやった」
まるでネズミを捕ってきた猫のように、褒めて褒めて♪と採取した「それ」を見せてくるアゲハに、浮田は内心ではそんなもん見せるな!と思いながらも(注:あくまで「エナジー」です。念のため)、おざなりに頭を撫でてやる。まぁいわゆる「飴と鞭」というヤツだ。
「えへへ、でしょでしょ~♪ だからさぁ、ご褒美に今晩はた・っ・ぷ・り……」
「--さて、では早速《怪異》を生み出すとするか」
調子に乗るアゲハを無慈悲にスルーして、浮田はバサッとマントを翻す。なお、このマントには《認識阻害》の力があり、おかげでここまで誰にも見とがめられずに侵入できた。もちろん学園の教師である浮田がここに来ること自体は別に問題無いが、自分が「怪異事件」の黒幕なことを気付かれるわけにはいかない以上、当然の用心であった。
……って、え? アゲハのトレンチコート姿もかって?? いやアレは本人の趣味だ。「隠密行動っぽくてカッコイイ!」らしいが、まぁバカのすることだからツッコまないでやって欲しい。
と、少し話がそれたが、浮田の方は別に格好いいからマントを翻したのではなく、その下から何やら液体の入った「フラスコ」を取り出してくる。その中の液体は普通の人にはただの水にしか見えないだろうが、分かる人的には何やら禍々しい気を発している。
「センセ、それ何??」
相変わらず計画の詳細は知らされていないアゲハの問いかけに、そこは理科教師の血が騒ぐのか、浮田はフフッと笑って説明する。
「これか? これは昨日私が採取しておいたここのプールの水だ。それに複数体の《なりそこない》どもから抽出した《妖気》を溶かし込ませた、言わば《魔液》だな。これをその男から採取した《欲望のエナジー》と混ぜ合わせて--」
ちなみにここのプールは、部活が終わった後の時間は福利厚生の一環として、併設されているトレーニングルームともども教職員に開放されているため、水の入手は容易であった。それをベースに作った《魔液》をドクドクとビーカーに流し入れると、ビーカーを持ったアゲハが「アン☆センセにたくさん注ぎ込まれちゃう♪」とバカなことを言って身をくねらせるが、そこは当然ガン無視だ。
「よし。では続けて--」
《魔液》と《エナジー》を混ぜ終えた浮田は、腰に下げていた杖を取り出し、魔道書の該当ページ--《水魔創成の魔術》を記した箇所を開いて、呪文を詠唱し始める。
低い詠唱の声が続くに従い、液体は次第に反応を始め、やがては沸騰するかのようにグラグラブクブク揺れ動く。そして「頃は良し」と見定めた浮田が、まるでアメーバーのように蠢き始めた液体に向け、右手の杖を打ち振るった!
「出でよ、《水の怪異》! その鬱屈した欲望を解き放ち、美味なる獲物共を相手に思う存分叶えてくるがよい!」
ガカッ!と魔道の杖が煌めき、解き放たれた魔力の光が蠢く液体の表面に当たる! そして次の瞬間--ザバッ!という水音と共にビーカーから飛び出してきたのは、
児玉の秘めた欲望から生まれた、おぞましき《怪異》の姿であった!
暦通りの方は明日から仕事だと思いマスが
明日も更新しますのでお楽しみに☆




