その9「ちなみに和名だと『地這い巨大虫』な!(豆知識)」
今度は宗春が大ピンチな続きです!(笑)
その9「ちなみに和名だと『地這い巨大虫』な!(豆知識)」
「わっ!? うわあああああああぁぁ!!」
いくらジャージ越しとはいえ、ウネウネ動く触手に巻き付かれるとかおぞましい以外の何物でもない! たまらず悲鳴を上げる宗春だったが、あろうことか触手は続いて上着の下へと潜り込み、更にはその下に着ていたTシャツの中にまで侵入を--!?
「そ、そんなッ!? 僕まで『そういう対象』なの!?」
キイロさんみたいな美少女ならともかく、僕のピンチシーンなんか誰得なんだよ!?とショックを隠せぬ宗春のお腹に、粘性を帯びた触手がピタッと貼り付いたそのとき--!
(--ッ!?)
にゅるん♪とぬめった感触と同時に、じわん……と何かが染み通るような感覚がして、思わず宗春は目を見開く! な、何、この感覚!? しかも触手に触られた所から、じわじわと何かが広がってくるような--!?
--あーそうか、ただのイモムシじゃなくて、こいつは「キャリオン・クロウラー」もどきなのか。道理で触手とかついてるわけだ。
(そ、そのキャリオ……って、何なんですか!?)
不意にコメントしてきては何やら一人納得した様子の玉神に、慌てて宗春が問いかける。となるとそこは「ゲーヲタ」のサガで、玉神はウキウキとした様子の早口で答えた。
--「キャリオン・クロウラー」はRPGに出てくるイモムシ型の怪物じゃな。ゲームでは屍肉を漁る掃除屋として主に迷宮を彷徨っているが、生きてる物も見境無く襲うかなり危険な存在じゃ。まぁこやつはそこまで凶悪では無いようじゃが、ただ最大の特徴は受け継いでるみたいじゃの。
(と、特徴……って?)
--「触手に接触するとマヒさせられる」ということじゃ。触手から分泌されている粘液でマヒさせ、相手を動けなくしてから食べるのがこやつの捕食パターンなわけよ。とはいえ、《神衣》の加護があるキイロには効いて無いみたいじゃし、こちらの方もゲームほど凶悪な毒性ではないみたいじゃが、ただムネリンは生身の人間だからなぁ……まぁしばらくは動けないんじゃね?(・∀・)
(そんなアッサリ言わないでくださいよ! それじゃあ僕、食べられちゃうじゃないですか!? 何とかしてくださいよ、玉神様ッ! こないだみたいに《神気》で浄化するとか!!)
そう言われてみると確かに身体の自由が利かなくなってきているのを感じて、焦って頼み込んだ宗春に対し、玉神の返事は実にあっさりとしたものだった。
--言ったじゃん。神社から距離がありすぎて無理って。まぁ安心せい。しょせんこいつは「もどき」なわけで、「食べられる」って言っても、あってせいぜい「性的な意味で」ぐらいのものだからさ☆(・ω<)
(全然、「ぐらい」なんかじゃないですよ!!!)
脳天気な言葉に思わず叫ぶ(ただし思念で)宗春だったが、しかし玉神はといえば全く気にした様子を見せず、それどころか「説明役は果たした」とばかりにとんでもない事を口にする。
--というわけで、巻き込まれるのはゴメンだから、ここらで回線切るね☆ それじゃあムネッチ、達者でな~♪
(ちょちょちょちょっと待ってッ!? この状況で撤退とかいくら何でも無責任すぎでしょ!? この怪異、一体どうするんですか!?)
--あー、まぁそれについては「心配いらない」と思うぞ。ということで、アディオス・アッミ~ゴ☆
と、軽薄極まり無い口調で玉神が告げた直後(しかも何でスペイン語!?)、本当に宣言した通りに、玉神と繋がっている感触はプツッと宗春の中から消え失せた。
そりゃあもう、容赦の欠片も無いレベルで……
(ホ……ホントに見捨てられた……)
仮にもそこは神様だし、何のかんの言っても最後は助けてくれるんだよね??--という甘い期待をサクッとばかりに打ち砕かれて、さすがに宗春は茫然となる。もしも身体が動かせていたら、それこそ「_| ̄|〇」というポーズを取りたいぐらいだ!
だが、絶望している暇もあらばこそ、「獲物」にマヒ毒が回ったのを察した怪異は、それに呼応して触手の動きを活性化させる。そう、まるで「じゃ、本格的に『食べちゃい』ますか♪」とでも言いたげな感じに--!!
「や、やめて……こっ、こんなの……いやだあぁぁぁぁ……!」
ウネウネと動く触手が宗春の素肌を這い回る。その「女子」と言っても通りそうな顔を、羞恥と恐怖に色濃く染めて、狼藉を続ける触手を前に宗春がたまらず悲鳴をあげた--
そのときだった!
「……アー、モウ、シッカタ無いナー」
「…………えっ?」
突然聞こえた「やれやれ声」に、思わず叫びも止まった宗春が、どうにか動く首を声の方向に傾けた瞬間、その視界に飛び込んできたのは--
バチコーーーン!!とばかりに横殴りにされて、そのままゴロンと腹を見せてひっくり返ってしまった、実に情けない怪異の姿であった!
「えええええええええええっっっっ!?」
おかげで触手は引っぺがされたものの、いきなりの展開に驚愕する宗春。だが、それ以上に愕然としていたのが、それまで獲物(それも美少年!)が増えてウハウハしていた、淫魔アゲハであった!
「な、な、何で何で何でぇぇぇぇぇぇ!?」
思わず取り乱したアゲハに向かい、ニンマリと微笑んでみせたのは誰あろう!
スポッと触手の拘束から抜け出したかと思うと、一瞬で胸元から杵を取り出し、そのまま流れるような動きで怪異をぶん殴った張本人--言わずと知れた《黄色のバニー戦士》キイロ・毛利・ジョンブリアンだ!
「ホントはモウちょいイロイロ聞き出したカッタケド、ムネリンのテーソーにはカエられナイネ☆」
そう言って、呆気にとられた様子の宗春にパチリ☆とウインクすると、キイロは再び怪異の方へと向き直る。
そして手にした杵をまるでゴルフクラブのように構えたかと思うと、「チャー……シュー……」と謎のつぶやきを漏らしながら、上半身を捻りつつ杵を大きく後ろに振り上げ--!
「メーーーン!!!」
パッカアアアーーーーーーン!!!
ブンッ!とキイロが振り下ろした杵が、ひっくり返って動けぬ怪異の腹にぶち当たったかと思うと、そのまますくい上げるようにして空に吹き飛ばす!
そして怪異の巨体は、まるでゴルフボールよろしく、斜め前方に向かって飛んでいったかと思うと、
ボッチャーーーーーーーーーン!!!
と、大きな音を立ててため池に墜落! 哀れ、泳げぬ怪異はしばらくジャバジャバともがいていたが、じきに力尽きたらしく、そのままブクブクと水の底に沈んでいった--(合掌)
「ア……アタシの怪異が……こんな……あっさり……」
あまりのショックに、茫然自失のアゲハであったが、そのとき、不意にとてつもなく「ヤバイ気」をすぐ近くに感じて、ビクッ!?とばかりに硬直する!
そして、恐る恐る振り向いたアゲハを待ち構えていたのは、ウサギというよりはむしろ、獲物をいたぶるネコを思わせる、ニマ~♪としたキイロの笑顔であった!
「サ、ソレじゃあハクジョーしてモらいましょッカ♪ アナタ、『ムネリンのクラスのカンケーシャ』ダヨね?」
「ななな、何でそんなことが分かるのよ!?」
あからさまにドキッ!とした表情になるアゲハに、まるで推理を披露する探偵のように、キイロはニマニマ笑って続ける。
「ダッテ、キイロが『ムシがキライ』ってフェイクを信じてるジテンで、ガクエンのカンケーシャでカクテーだモノ。ソシテ、『イモムシがニガテ』って言ったのはそのクラスのバスでダケ。キイロのバスでは『テントームシ』って言ったモン」
「んなあああっ!?」
「デもって、そのハンノウが答え合わせネ。全部グーゼンってカノーセーもあったケド、ホント、ワカリやすくてタスかるワー。色々ペラペラ話してクレタシ、オカゲデだいぶ分かっチャッタ♪ フ~ン、何か『計画』がアッテ、ダカラキイロたちがジャマなのカ~♪」
しまった!と今更慌てて口を塞ぐアゲハに、更にキイロがズイッと圧をかけていく。
「ココ最近の怪異ソードーにはクロマクがいるッテ、ウスウス勘づいてタカラ、キットこのギョージも何かシカケテくるッテ思っテたんだヨネ。ソシタラ、ビンゴ! ダイセーカイ! デ・モ」
そこでキイロは一瞬言葉を切ると、今や真っ青な顔をしたアゲハに向かって、更にズズイッ!と圧をかけ続ける。
「アナタみたいなコモノが『真のクロマク』ってコトはナイよネェ? サッキ『アタシたち』ッテ言ってタシ」
今度こそ本当にギクゥゥゥ!?となったアゲハに、トドメとばかりにキイロがズズズイッ!と強力な圧を加えて--!
「サァ、ゼンブ答えルネ。ホントーの『クロマク』はダレで、ソイツが一体、何をタクラんでイルのカヲ--」
「ひっ……た、たすけてぇぇぇぇ!!!」
自分より頭一つは低いハズのキイロが、今や見上げるぐらいに大きくなったように感じて、猛烈なプレッシャーを受けたアゲハが、思わず涙目になって叫んだ--そのとき!
「おおーーーーい!! お前らぁ、大丈夫かぁぁぁぁぁッ!?」
「エ”? ソノ声はマサカ、チャコセン!?」
遠くから聞こえてきたその声に、たちまちビクッ!?と焦りモードになったキイロが、思わず後ろを振り向いた刹那! すかさずアゲハはボン!と煙に身を包んだかと思うと、本来の小さな姿に戻ってそのまま一目散に逃げていく!
「アッ、コラッ! ニゲんなッ!!」
シマッタ!?とキイロが呼び止めようとするも、当然止まったりするはずも無く、アゲハはまさに命からがらといった様子で、悪の女幹部らしい捨て台詞さえ残さないまま、あっという間にはるか遠くまで飛び去っていってしまった--
「……マ、イッか。マタチャンスはあるでショ。ソレより、《怪異ケッカイ》も消えチャってるシ、いくら《ニンシキソガイ》がアルとは言ってモ、チャコセンに見られタラ、ちょーっとメンドクサイことにナルなァー。ソレニ……」
そこでキイロは、芝生に転がったままの宗春に視線を向けると、珍しく困り顔になって続けた。
「ムネリンのバアイは、モーっとメンドクサイことにナッチャウだろうしネェ……」
(あッ……!)
そう言われて、宗春は自分の置かれた状況に気付く。
確かに他の襲われた女の子たちは気絶しちゃったみたいだから、怪異のことは最悪「熱中症で倒れて悪夢を見た」的に誤魔化せるだろうけど、自分は違う。痺れてるのはあくまで身体だけで、意識はハッキリしてるし、しゃべるのも特に問題は無いけど、となれば逆に「一体何があった!?」みたいな話になるわけで、そこらを追及されたらうまく誤魔化せる自信が無い。チャコ先生、追及厳しそうだし!(汗)
「ナニセタップリお肌をマサぐられちゃったブン、他の子ヨリモ長くシビレてソーダシ。ウ~ン困ったナァ……モウ時間無いシ、イッソ置いてッチャおッカ……」
「うわあああんん! そんなこと言わないで助けてくださいよぉぉ!!」
玉神に続いてキイロにまで見捨てられちゃうの!?と絶望的な気持ちになりつつ、必死に頼む込む宗春だったが--
「--ヤレヤレ♪ ソコマデ言うナラ、シカタがナイナァ☆」
その瞬間、いきなりキイロがニマッ♪と笑顔に変わったかと思うと、思わず「え?」となる宗春に向け、パチリ☆と可愛くウインクを決める。そして宗春の身体をヒョイ♪とばかりに腕に抱きかかえると、唖然とする宗春を見下ろしながら、イタズラっぽい口調で宣言した。
「ソレジャア、マズは『場所』をウツすとしまショーカ♪ ソシテソノ後は、キイロオネーチャンがマタマタ『ナンとかシテ』あげチャいマスね☆」
第7話「なろう」版は明日が最終回になります。
最後までお楽しみに☆




