その6「エ? ヤッパりソコは『おヤクソク』ってユーカ☆」
それでは今日からBパート(後半戦)スタートです!
その6「エ? ヤッパりソコは『おヤクソク』ってユーカ☆」
(この感じ!? もしかして、《怪異結界》ってヤツじゃ!?)
突然感じた、肌がざわつくような不吉な感覚! この学園に来てからすでに幾度も経験したその感覚に、宗春が思わずビクッ!となった--その瞬間!
すぐ隣に座っていたキイロが、ビュン!とばかりに駆け出した!
「え? キ、キイロさん!?」「急にどこ行くんや!?」
「チユミーはセンセーたち呼んでキテ! チーちゃんはオジューの番ヨロシク! ソレカラ--」
慌てて呼びかけた千景と知由美に、走りながらテキパキ指示を出したキイロが、続けて宗春を振り返る。
「ムネリンはキイロに付いてキテッ!」
「は……はいッ!」
弾かれたようにそう答えると、宗春は慌ててキイロの後を追う。正直さっきまでの疲労が残っているので(お弁当も食べてないし)、走るのはかなりキツイのだが、でもキイロに頼りにされたのが嬉しく、宗春は必死に後を追いかける。
戦力だって認めてもらえてるんだ。よーし! がんばってキイロさんをサポートするぞ!--と、意気込む宗春のその目の前で、
広場に点在する「ままごとハウス」の一つに、キイロがスポッと身体ごと飛び込んだ--そう、まるで巣穴に飛び込むウサギのように!
「えええええっ!?」
おかげでようやく追いつけたものの、キイロの意図が分からず混乱する宗春であったが、更にそのとき、いきなり「ままごとハウス」の中から、ジャージの上着が飛び出してきて!?
「…………うええええッ!?」
何事かと驚く宗春の前で、続いて下に着ていたTシャツ、お次はジャージのズボン、そしてパステルイエローの可愛いブラが……って、こうなったらもう状況は明らかだ!
「なななな、何やってるんですか、キイロさん!?」
たまりかねて宗春が「ままごとハウス」に叫ぶと、入り口から当のキイロがヒョコッと顔をのぞかせる。
「エ? 服脱いデルだけダヨ? ダッテ、変身シたらヤブレちゃうモン。学園ナラともカク、ココでソレはサスガに困るシ」
「だからと言ってこんなトコで!」
「エ~ソレトモォ」
ニマッと笑ったキイロはもう少し小屋から身体を出すと、豊満な膨らみを両手をクロスさせて隠した、いわゆる「手ブラ」状態な上半身を見せつける。そしてわざとらしく恥ずかしそうな表情を浮かべながら、チラッと宗春を上目遣いで見て、
「コンナお外デ、脱いだ方ガイイ?」
「わっ、分かりましたから、引っ込んでくださーーーい!!」
大慌てで宗春が目をそむけると、満足した様子のキイロはヒョコンと再び小屋へと戻る。そしてスニーカーに続けてソックスが飛び出し、最後にブラと同じ色をした可愛い系のショーツがふわりと舞って……!
ダメだ! こんなのどうしても目が追っちゃう! それに、今のキイロさんは、あの子ども一人入れるぐらいの小さな小屋の中で、その、な、「何一つ身に着けていない」わけでッ……(ゴクッ)
と、思わず宗春が喉を鳴らしてしまった、その瞬間!
「バニー・チェンジッ!!」
「うっ、うわああああああぁぁ!?」
たちまち溢れたまばゆい光に、宗春がたまらず悲鳴を上げる。「目が、目がぁ~!」とまでは叫ばなかったが、思わず芝生にひっくり返った宗春がようやく視力を取り戻した時、その目の前に立っていたのは--!
「大っきなおムネは元気のシルシッ!」
明るく弾むような口上に合わせて、くるり♪とその場で一回転☆ 続けて両腕を「ぞいっ☆」と構え、むにゅん♪とバストを強調した後で、胸元から一瞬で取り出した杵をバトンのようにクルクル回して--!
「キュートにトージョー☆ バニーイエローッ♪」
黄色いバニースーツを纏ったキイロが、唖然とする宗春に向けて、ビシッ!と可愛くポーズを決める。
そう、今のキイロはただの女子高生では無い--《神衣》の力によって怪異と戦う、黄色の《バニー戦士》、バニーイエローへと変身を遂げたのだ!
……って、それはそうとして「あざとい」。何て言うかもうめっちゃあざとい。いや、「何なんですか、その口上……」とか、「杵」を「一瞬で」胸元から取り出すとかシュールすぎるでしょ!とか、そもそもコレいるの!?とか、ツッコみどころは満載なのだが、あまりの可愛らしさ(&セクシーさ)についつい見入ってしまった……
と、思っていた所に「可愛かったデショ?」と言いたげなニヒヒ顔をされ、赤面してしまった宗春に向かい、「ソレジャ、ムネリン--」とキイロが呼びかけて言うには、
「キイロの服、チャ~ンと見といテネ☆」
「まさか、僕を呼んだのってそのため!?」
衝撃の事実にガビーン!となる宗春を尻目に、キイロは最後に「ヨロシクネ~♪」とだけ告げると、そのままビューン!とダッシュで駆け出していく。
その場に、茫然としたままの宗春を残して--
「も……もっとまともな役目だと思ってたのに……」
さっきの意気込みを返して……と、ガックリひざまずく宗春であったが、そのとき不意に、「まぁ、そう気を落とすでないぞ」という玉神のお告げが脳裏に響く。
--何せ今なら、お言葉に甘えて下着をガン見し放題じゃぞい。いやそれどころか、頬ずりして良し、嗅いでみても良し、何なら頭に被っても良し……しかもなんたって脱ぎたてだからな! くぅ~夢が無限に広がるのう! な! ムネっち!
(いきなり出てきて、変な同意を求めないでください!!)
慰めに出てきてくれたのかと思えば、単に自分が色々やりたいだけじゃないか! そもそも僕には、そんなマニアックな趣味無いですからね!?
--まぁ、それはお主を元気づけるための小粋な「玉ちゃんジョーク」として、それにしても何で「こんなトコ」に怪異が出とるんかのう?
「え? それどういうことなんですか?」
「嘘つけ」とツッコもうとした所で急に真面目な話題に転換されて、戸惑いを浮かべた宗春に向かい、玉神もまた珍しく困惑した様子で続ける。
--いやな、フツーこんな健全安全なファミリー向け施設に、怪異なんぞは出たりせんのよ。やっぱあいつらを生み出すには、その素となる何らかの「よどみ」が必要なワケでな。そこが不可解ではあるのじゃが、まぁ出たもんは出たで仕方が無いかぁ。そういうイレギュラーなヤツもおるんじゃろ。知らんケド。
やはりあまり長時間は(それどころか秒単位だったが)続かないらしく、すぐにまたテキトーな調子に戻る玉神であったが、一方の宗春はと言えば、妙にその言葉が気になり、そうこうしている内に、急に不安が芽生えてくる。
(そんなイレギュラーな怪異……まさかとは思うけど、キイロさん大丈夫なのかな……)
ゴブリン戦で見た圧倒的な火力、そして何より普段の余裕綽々な態度もあって、キイロならどうせサクッと勝つのだろうと当たり前のように思っていたが、でも何だかそう言われるとすごく気になる。それに良く考えれば、今この場にいるのはキイロ一人だ。学園だったら、いざとなったらこの間みたいにあかりさんや碧衣さんが助けに来てもくれるだろうけど、もしここでキイロさんがピンチになったら--?
考えれば考えるほど胸騒ぎが止まらなくなり、宗春はゴクリと息を飲む。ダメだ、やっぱり不安だ。ただここでじーっと待つだけじゃなくて、万が一に備えて、僕も現場に行ってみよう……
そう決意した宗春が、とりあえず脱ぎ捨てられた衣服を拾って小屋の中に畳んで仕舞った後(し、下着はさすがに畳まなかったけど!)、キイロが駆けていった方向に向けて、足を踏み出そうとした--そのとき!
「イ……イヤァァァァァァァ!!!」
初めて耳にするキイロの悲鳴が、その方向から聞こえてきた!
変身バンク、やってみたかったんですよね(笑)
それでは続きはまた明日!




