その1「三本の白いラインは『三ツ矢』をイメージしています(豆知識)」
お待たせしました!「卯年」の最後を締めくくるべく
本編第7話の更新を今日からスタートします!
今回の主役はタイトル通り、キイロちゃん☆
天真爛漫のようで腹黒い(笑)
「お殿様」な彼女の大活躍にご期待ください!
※間が空いた分、内容を忘れられてるかもなので(汗)
今回も最初に「ここまでのあらすじ」をつけています。
【ここまでのあらすじ】
自分をスカウトしてくれた生徒会長・吉川あかりに憧れ、広島県北部にある名門私立校・三ツ矢学園への入学を決めた岡山出身の少年・清水宗春。入学前の春休み、希望と不安を胸に初めて学園を訪れた宗春だったが、そこで彼が遭遇したのは恐るべき《蜘蛛の怪異》アラクネーと、それに立ち向かう赤いバニースーツ姿の少女--バニーレッドであった!【第一話】
バニーレッドの正体が憧れの吉川あかりであることに気付き、戸惑う宗春。しかも驚いたことに、三ツ矢神社の巫女・宮島楓良が管理人を務める「宿坊」で、あかりともども一緒に暮らすことになった小早川碧衣とキイロ・毛利・ジョンブリアンもまた、学園に巣くう《怪異》と戦う《バニー戦士》であったのだ!【第二話&三話】
ゴブリン軍団との戦いを終えたその後、バニーイエローであり、三ツ矢神社の宮司代行でもあるキイロに導かれるまま神社の本殿に赴いた宗春は、そこでミステリアスなもう一人の巫女・大三島鼎、そしてこの神社の祭神・玉神様と出会う。ウザいぐらいに馴れ馴れしく、うさんくさい玉神様を警戒する宗春だったが、怪異と戦うあかりたちの力になるため、玉神の提案を飲み契約関係を結ぶことにする。契約の内容--それは、宗春を媒介にして玉神にも学園生活を楽しませることと引き換えに、守り神として様々な「ご加護」を与えるというものだった。【第四話】
そして迎えた入学初日、実は自分しか男子生徒がいないという事実に衝撃を受けつつも、浦上千景や土橋知由美といった友人もできてホッとする宗春の前に、新たなる怪異、《縄の怪異》ローパーが出現する! 怪異に襲われた千景たちを助けるため、玉神の力も借りて立ち向かおうとする宗春だったが、力及ばずピンチに陥ったそのとき、バニーレッドに変身したあかりが救援に駆けつける。その後、バニーブルーに変身した碧衣も加わっての壮絶な戦いの末、ようやく《縄の怪異》を撃破したあかりを前に、宗春は「いつか絶対、あかりさんの役に立てるような、頼りがいのある男になってみせます。それが、この学園で叶えたい僕の夢です」と誓うのだった。【第五話&六話】
--だがその一方、この学園の平和を脅かす存在もまた、新たな計画に向けて動き出す。三ツ矢学園高等部理科教師・浮田直人--学園の闇を司る男が狙う、次なる「標的」とは一体!?
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第7話「キイロ大ピンチ!? 学年行事は危険がいっぱい!」
その1「三本の白いラインは『三ツ矢』をイメージしています(豆知識)」
「あ、おはようございます。宮島さん」
「はい、おはようございます。宗春くん……って、あら?」
朝食の支度の手を止め振り返った宮島さんが、階段を下りてきた宗春の格好を見て、フフッと柔らかな微笑みを浮かべる。
「もうジャージ姿とか、張り切ってますね、宗春くん☆ もしかして、昨夜からその格好だったとか??」
「い、いや、別にそういうわけでは……」
茶目っ気タップリにそう言われて、照れたように首を振る宗春だったが、とはいえ、密かに「この日」を楽しみにしていたのは本当だ。
一学期が始まって最初の週末。入学式、始業式、先輩たちとの対面式、そして連日続いたオリエンテーション……一貫育ちのクラスメートや、いかにも要領良さそうな土橋さんはともかく、宗春にとってはとにかく日々新しいことだらけで、正直大分アップアップしていたのだ。
まぁそこは「学園のことは任せて!」なあかりからのレクチャーもあり、そんな怒濤の一週間をどうにか乗り越えたわけだが、締めくくりとなる今日は「学年行事」ということで、新入生の高1学年は(あと中1も別のトコに行くそうだけど)、朝からバスで遠足に出かけるのだ。
とはいえ、そう遠くに行くわけでは無く、目的地は近場にある「国営備北丘陵公園」というところだ。でも、ネットで調べた感じでは自然豊かなレジャー施設みたいで楽しみ!
「う”う”、どうして高1だけぇ……あたしも春くんと一緒におでかけしたいのに……」
そう言って話に入ってきたのは、恒例の朝練後の入浴をすませ、お風呂場からTシャツ姿で出てきた吉川あかりだ。湯上がりということで、肌がほんのり桜色に上気している姿はとても魅力的だが(あと湿ったTシャツが上半身に貼り付く感じなのも、ちょっとセクシーな感じで……(宗春視点))、その表情はどんよりと曇っている。
「そりゃ、新入生が親睦をはかるための行事なんだから、当たり前でしょ?」
続けて割り込んできたのは、ふわぁぁ……と小さくあくびをしながら階段を下りてきた小早川碧衣だ。低血圧なので朝は弱い彼女だが、「何故か」いつもあかりがお風呂から出たタイミングを見計らったように、こうして二階から下りてくる。
「ずるいよ! あたしだって春くんと学園生活でも親睦を深めたいのに! はっ、そうだ! 生徒会長は『先輩代表』として引率に加わるっていうのはどうかな!?」
「はいはい。そんなことより、課題テストがんばろーね。今回も勝負だから忘れないでよ。でもって、いつも通り負けた方が『何でも一つ言うコトを聞く』だからね?」
「それもずるいよ! あたしが勉強で碧衣に勝てるわけないじゃん! あああ、また色々させられるぅぅ!!」
パチリとウインクする碧衣に、あかりが「うええ!?」と悲鳴を上げる。ちなみに先生たちが引率で複数抜けちゃうこともあり、在校生は今日は終日「春休み課題テスト」だそうだ。大変だなぁ……上級生。あと一体「何を」「させられて」きたんだろう。何だかドキドキするのは何故……??
「……ま、まぁそれはそれとして」
どうやら「辛い未来」からは目を背けることにしたらしいあかりが、それよりも「目の前の幸せを☆」とばかりに、ジャージ姿の宗春へと視線を向ける。
「春くん、学園のジャージ姿だぁ。初めて見たよ♪」
「あの……へ、変じゃないです……か?」
あまりにもしげしげと見られるものだから少し不安になって、恐る恐る尋ねかけた宗春に、「ううん! すっっっごく可愛い☆ 似合ってる!」と満面の笑顔で答えるあかり。
(そこは、「格好いい」とかの方が嬉しいなぁ……)
と、男の子としては多少思わなくも無いが、ただそこはジャージのデザインのせいもあるのだろう。何せ、三ツ矢学園のジャージの色はライトピンクに三本の白いラインが入った、女子校らしいとても可愛らしいデザインなのだから。
(ま、まぁとりあえずあかりさんが嬉しそうだからいいか……)
そう思って自分を慰めていた宗春に、フッと笑った碧衣が告げる。
「ホント、良く似合ってるわね。『女物』だけど」
「うぐぅ!?」
その一言がグサッと宗春の胸に突き刺さる。だ、だって在庫が「女物」しかないって! それにジャージだからそこまで性別を意識するわけでは……
「あんたこないだもセーラー服着てたし、何気に女装するの好きなんじゃない? もしかしてバニースーツも着てみたいとか?」
「セーラー服着させたの碧衣さんですよねぇ!?」(第三話その1参照)
そしてバニースーツなんか絶対着たくないよ! 大体、アレ男が着たら大惨事以外の何物でも無いし! 「女装」なんてレベルじゃ無いから!!
「はいはい、朝から騒いじゃだめですよ。そんなことより、はい、お弁当」
そう言って宮島さんが「どうぞ♪」とばかりに渡してきたのは、可愛い鹿マーク入りのお弁当箱だ。
「うわぁ! ありがとうございます!!」
思わぬサプライズに、破顔した宗春が歓声を上げる。宿坊のルールは「平日の昼ご飯は自分で調達」なので、今回も行きがけにポ〇ラで何か買おうと思っていただけに、嬉しさもひとしおだ。それに--
「嬉しいなぁ。誰かにお弁当を作ってもらうなんて初めてです!」
「え? そうなんですか?」
「ええ、ずっとお爺ちゃんと二人暮らしでしたし、遠足とか運動会とかの時は、基本近所のスーパーで格安弁当とか買ってましたから」
何せ貧乏でしたからね、と苦笑いしながら答えた宗春の横で、何故かあかりががっくりと両手をついてひざまづいたまま、何やらブツブツ言っている。あれ、どうしちゃったんだろう、あかりさん……?
「…………しまった……春くんの『初めて』をもらいそこねちゃった……」
ちょ、ちょっとあかりさん、それ大分語弊がありますよ!? ほら、碧衣さんが殺意の強い目で僕を見てるし!(汗)
「うう……宗春くん、可哀相。腕によりをかけて作ったから楽しみにしてくださいね」
「あ、ありがとうございます! 楽しみに食べます--ね?」
話をそらすべく、目をうるっとさせた宮島さんから元気よくお弁当箱を受け取った宗春の視界に、ふと、ドーン!とばかりにそびえる五段重ねのお重の箱が飛び込んでくる、えーと、お、おせち料理かな? でも今は四月だし、となるとアレはもしかしなくても……
「あ、これはキイロちゃんのです。何だか差をつけた感じで宗春くんには申し訳ないのだけど、リクエストされちゃったから……」
いやいやいや、そんなに食べられませんからおかまいなく! それより、これ作るのどれぐらい時間かかったんだろ。言われてみれば宮島さん、少し疲れてるような気が……と宗春が思っていたその横で、碧衣が不服そうに宮島さんをたしなめる。
「楓楽さん、キイロを甘やかしすぎですよ。そうでなくても『お殿様気質』なんだから、あんまり好き放題させちゃダメですって」
「うーん、碧衣ちゃんの言うコトも分かるんだけど、ただキイロちゃんにとっては、日本に帰ってきて初めての遠足だって、すごくはしゃいじゃってて。キラキラと期待の目で見られちゃったら、つい……」
「ま、まぁそういうことなら……」
そんな宮島さんの弁明に、思わず碧衣も鼻白む様子になったそのとき--
「ハァ~イ♪ みんな、グッモーニン☆」
当のキイロの明るい声が宿坊に響いたかと思うと、続けて階段から本人が下りてくる。寝ぼすけの彼女的にはありえない早さだが(起床時間的にはフツーだけど)、しかも驚いたことにいつもの寝間着姿ではなく、宗春同様、ばっちりジャージに着替えてる!
「ワオッ☆ ゴダンノオジュー! フ~ラン、サンキューベリマッチデース☆」
まずはお重を見て目を輝かせたキイロが、続いて宗春を見てニコッと笑う。そんな実に嬉しそうな可愛い笑顔にドキッとしてしまう宗春に、朝からご機嫌なキイロは弾むような声で呼びかけた。
「ソレじゃあムネリン、今日はヨロシクね☆ イッショにたーくさん楽しみマショー♪」
第7話については連続更新の予定デス!(年内完結予定)
それでは続きはまた明日☆




