その2「僕だって……戦えます!」
最初なので2日連続更新!
出現した《縄の怪異》に、宗春はどう立ち向かう!?
その2「僕だって……戦えます!」
--ん? なんじゃい、急に?
(玉神様は約束しましたよね。もしもの時には力を貸してくれるって。ならお願いします。あの二人を助けるために、力を貸してください!)
--え~どうしようかなぁ……あんまし《神力》を使うと、吾輩の存在がバレちゃうからなぁ~
そう言いながらも、その口調は「困ってる」というよりは、明らかに宗春の反応を「楽しんで」いる。さすがにムカッとしなくもないが、でもここまではあくまで想定内だ!
(だったら、僕はこのままここで「じっとして」ます。放置してても問題無いし、男には襲ってこないんでしょ? でもそしたら--「あの二人が縛られてる姿」は見られませんよ?)
--んなっ!?
我ながら「酷い取引」ではあるが、効果は抜群だったようだ。途端に「( ˘・ω・˘ )」と考え込む様子になった玉神に、(ごめん、浦上さん、土橋さん……)と内心謝りながら、宗春は一気に畳みかける。
(いいんですかぁ? あんな可愛いブレザー女子高生の「緊縛姿」なんて、そうそう見られるもんじゃないですよ~? ま、僕は別にいいんですけどぉ、玉神様的にはどうなのかなぁ~?)
--うぬ”ぬ”ぬぬぬ……し、仕方あるまい! 神様は約束を守るものだしな!
明らかに理由はそっちではないが、玉神が悔しそうに答えたその瞬間、ネク玉ピンが緑の《神気》に輝くと同時に、三本のマーカーも同じ色の輝きを帯びる! それを見て「よしッ!」と覚悟を決め直すと、宗春は教卓の陰から勢い良く立ち上がった!
「う、浦上ひゃんたちを放せっ! 化け物めっ!!」
またもや最初は噛んでしまったが、それでもキッパリと言い放つ宗春。ただ残念なのは、浦上さんも土橋さんもどちらもショックで気を失っているらしく、そんな宗春の必死の姿に気づいていないことと、
何より肝心な《縄の怪異》ローパーが全く気にした様子を見せず、相変わらずキリキリ、グリグリと、ブレザー少女たちを縛るのに夢中なことであった!
--うひょひょ♪ ええのう、ええのう、JK緊縛ええのぅ☆ 「後手胸縄縛り」に「諸手上げ胸縄縛り」、清楚なブレザーの胸元に縄がキリキリ食い込んで……ああもう玉ちゃんタマラ~ンチ!
(さぁここからが勝負だ!)
同じく夢中な様子の玉神は放っておき(あと、見世物にしてごめん! 浦上さん、土橋さん!)、宗春は次なる行動に移る。怪異に相手にされないのは織り込み済み。逆に油断しきっているところに--こうだッ!
「これでも……くらえっ!」
右手を大きく振りかぶって、手にしたマーカーの一本をローパーに向かって投げつける! 〈お、何だか攻撃呪文っぽい! ダイスふろうぜ、ダイス!〉と玉神が良く分からない歓声を上げるが、そんなのはどうでも良いままマーカーは飛び、ローパーの近くの生徒机に当たると--
バーン!と音を立てて爆発した!!
「ナワァア!?」
……本当はローパーに当てるつもりで投げたのだけど、まぁ威嚇にはなったみたいなのでそれはいい。机のことはゴメンだけど、そこはこのリッチな学園なら大した問題ではないだろう。
そして案の定、攻撃されたことに怒ったローパーは、周囲の机や椅子を薙ぎ倒しながら、ズリッズリッとこちらに向かって進んできた!
(よし……かかった!)
計画通りに事が運んで、宗春はグッと拳を握る。しかし本当の勝負はあくまでここから。もっと近くまで引きつけて--!
「ナワァアアアアアアア!!」
今や教卓を挟んで向き合うほどの近さで、ローパーと宗春は対峙する。さすがに恐怖が込み上げてくるが、宗春とてそこそこ場数は踏んできた。そして何より、今はあの二人を助けることに集中だ!
「ナワァアアアアアアアッッ!!!」
宗春が臆さぬのを見て、再び怪異は咆哮する! 大きく開いた口がちょうど目の前に広がり、真っ黒な口内を見せつけた--そのとき!
「今だッ!」
そのタイミングを待っていた宗春が、すかさず残り二本のマーカーを、怪異の口内に投げ入れる!
いくらノーコンの宗春でも、さすがにこの距離ならば外さない! 玉神の《神気》を帯びたマーカーは、スッと吸い込まれるように口内に消え、そして次の瞬間、ドゴオオオオオオンンン!!と音を立てて爆発した!
「やったッ!!」
こうした見るからに固そうな敵は、内側から破壊するのがお約束! そして両手(?)が浦上さんたちで塞がっている以上、攻撃してくるのはあの「口」だと思っていたし!
まさに計画通り! さしもの怪異も内側からの爆発を喰らって、無事でいられるわけが--!
……と思ってたけど、なんともない様子だった。
「え”え”え”ええええええっっ!?」
口からゲフッとばかりに煙を吐いただけのローパーを見て、驚愕の叫びを上げる宗春! そのとき、胸元のネク玉ピンが〈玉ちゃんアーーーイ!〉と叫んで目をキラーン(☆ω☆)とさせたかと思うと、宗春に向かってこう報告した。
--あーこりゃダメだわ。こいつただの「がらんどう」だし。
(ええっ!? どういうことです!?)
--「《玉ちゃんアイ》なら透視力!」ということで、中身を見てみたんだけど、こいつの本体はあくまで「縄」、外側の岩みたいなのはそれを守るための「鎧」にすぎんわけよ。中身が詰まってないんだから、少々中で爆発させてもダメージゼロ。倒すためには、中にある「縄」自体を攻撃せんと。
(そ、そんなぁ!? じゃあどうしたらいいんですか!?)
--仕方無いのぉ。なら一つ「良いこと」を教えてやろう。
必死に尋ねる宗春に、玉神はもったいぶった様子でうなづくと、次の瞬間、重々しい口調……では全然無くて、ニヘラと顔を緩めて言い放った。
--あのお下げの子のパンツは期待通りの白の綿、眼鏡の方はちょっと大人な黒レースであったぞい♪
(そういう話じゃなくって! てか、何ちゃっかり透視してんだ、このエロ岩石ッ!!)
思わず乱暴な口調になる宗春だったが、しかしいくら玉神を罵倒しようが、今の状況は変わらない。「ナワァアアア!!」と猛り狂うローパーを前に、「ヒッ!?」と悲鳴を上げた宗春は、とうとうホワイトボードギリギリまで追い詰められる!
(ダメだ……やっぱり僕なんかじゃどうにもできなかった。浦上さんたちを助けるどころか……自分の身を守ることすら……!)
自分の弱さが情けなくって、宗春の目にじわりと悔し涙がにじむ。そんな失意の宗春をいたぶろうと、単眼を嗜虐に染めたローパーが再び威嚇の咆哮を上げようとした--
まさにそのときだった!
ガシャアアアアアアンンン!!
突然、外窓を砕き割って飛び込んできた何者かの蹴りが、そのままの勢いでローパーの右側頭部へと突き刺さる!
「ナワアアッ!?」
そこは岩石だけに砕き割ったりはできなかったが、それでも結構な衝撃だったようで、身体を揺らしながら後ずさるローパー。
そして後方に跳ね飛んだ「少女」は、ズシャア!とスクワットのような体勢で教卓に着地をすると、目の前の怪異をにらみ据えたまま、背後の宗春に問いかけた!
「遅れてごめん! 大丈夫!? 春くん!」
「あ……あ……」
凜とした頼もしいその声に、宗春の目にじわっと安堵の涙が浮かぶ。そう、赤のレオタードと黒タイツに包まれたお尻を突き出すようにこちらに向け、白いウサ尻尾をプルン♪と勇ましく揺らしたのは誰あろう!
「……あかりさん!!」
怪異出現を察して現場に急行してきた赤のバニー戦士--《バニーレッド》吉川あかりであった!
あかり登場でますますバトルはヒートUP!
続きは8/5(土)に更新します。お楽しみに!




