その1「やっぱり朝稽古の後は〇〇〇だよね!」
お待たせしました!セカンドシーズンの最初のお話となる
本編第5話の更新を今日からスタートします!
なお、なぜ7/8からスタートなのかといえば実は「理由」があるのですが、
多分お話を読み進めていくうちに分かる人には分かるんじゃないかなと(笑)
※間が空いた分、内容を忘れられてるかもなので(汗)
最初に「ここまでのあらすじ」をつけています。
【ここまでのあらすじ】
自分をスカウトしてくれた生徒会長・吉川あかりに憧れ、広島県北部にある名門私立校・三ツ矢学園への入学を決めた岡山出身の少年・清水宗春。入学前の春休み、希望と不安を胸に初めて学園を訪れた宗春だったが、そこで彼が遭遇したのは恐るべき《蜘蛛の怪異》アラクネーと、それに立ち向かう赤いバニースーツ姿の少女--バニーレッドであった!
バニーレッドの正体が憧れの吉川あかりであることに気付き、戸惑う宗春。しかも驚いたことに、三ツ矢神社の巫女・宮島楓良が管理人を務める「宿坊」で、あかりともども一緒に暮らすことになった小早川碧衣とキイロ・毛利・ジョンブリアンもまた、学園に巣くう《怪異》と戦う《バニー戦士》であったのだ!
ゴブリン軍団との戦いを終えたその後、バニーイエローであり、三ツ矢神社の宮司代行でもあるキイロに導かれるまま神社の本殿に赴いた宗春は、そこでミステリアスなもう一人の巫女・大三島鼎、そしてこの神社の祭神・玉神様と出会う。ウザいぐらいに馴れ馴れしく、うさんくさい玉神様を警戒する宗春だったが、怪異と戦うあかりたちの力になるため、玉神の提案を飲み契約関係を結ぶことにする。契約の内容--それは、宗春を媒介にして玉神にも学園生活を楽しませることと引き換えに、守り神として様々な「ご加護」を与えるというものだった。
かくして始まる清水宗春の学園生活。そしていよいよ物語は、入学式の日の朝を迎える--!
※ ※
第5話「祝・高校入学おめでとう!新しい出会いが続々です☆」
その1「やっぱり朝稽古の後は〇〇〇だよね!」
三ツ矢学園高等部生徒会長、吉川あかりの朝は早い。
まだようやく空が白み始めた頃の朝5時に起床し、入念にストレッチをすませて空手の道着に着替えると、他の同居人たちを起こさない様にして静かに宿坊の玄関を出る。
その後は学園の敷地を30分ほどかけてジョギングし、それでアップは完了。後は、三ツ矢神社の杜の中で約1時間、みっちりと空手の稽古をする。
「……ハッ! ヤッ!」
静かな朝の杜の中に、あかりの凜としたかけ声が響き渡る。
「夜勤帰り」の大三島さんとタイミングが合う時には、組み手の相手などもしてもらうが、あくまでメインは自主稽古だ。空手の稽古は基本に始まり基本に終わる。鋭く突きや蹴りを宙に繰り出し、流れるように型を決める。
「リャアッ! タアァッ!」
気合いのこもったかけ声に合わせ、連続して突きを放つ。無心となって稽古に打ち込むこの時間が、あかりは何より大好きだ。頭から雑念が全て消え去り、真っさらな自分になれる気がする。
「セイッ! ハッ!」
稽古も次第に佳境に入り、あかりは最後の仕上げとばかりに、次々と高難度の技を試していく。うん、今日はすごく調子がいい。イメージ通りの動きが出来るし、身体もまるで羽のように軽い。この感じなら、もしかして--できる!
「--よしッ!」
意を決したあかりは、小さく気合いを入れると同時に側に立つ「巻藁」へと向き直る。打撃の練習用にいくつか立てられている中でも最大のそれは、大柄な男性ぐらいの高さと太さがあり、ぐるぐるに荒縄が巻かれたその形状は威圧的とさえ言える存在感だ。
そんな巨大な巻藁を前に、あかりはスウウウウ……と息を吸い込むと--
次の瞬間、裂帛の叫びと共に、練習中の大技を打ち放った!
「イヤアアアアアアアアアッッ!!!」
パアアアアアアアアアアアンン!!! 他に音の無い早朝の林に、周囲の空気を引き裂くような鮮烈な打撃音が響き渡る! そして--
「…………ふぅ……」
ビシッ!と残心を決めたあかりが、やがてゆっくりと構えを解く。
うん、大分掴んだ--巻藁にぶち当てたばかりの右拳を眺めながら、手応えを感じてうなずくあかり。さすがにレジェンド級の技だけあって、なかなか上手くはいかなかったけど、でも、これならきっともう少しでモノにできるはず--!
「よし、じゃあ今朝はこれぐらいにしとこう……」
そうつぶやいて力を抜くと、スッキリとした心地よい疲労が込み上げてくる。今日の朝稽古はいつも以上に気合いが入ったものだっただけに、充実感もひとしおだ。
力が入った理由は、今日が高等部の「入学式」だからだ。入学式ではあかりは高校生徒会長として、新入生の前で在校生代表のスピーチをする。普通でもプレッシャーがかかるところだが、ましてその中に宗春がいると思うと、「格好いいトコ見せなきゃ!」とついつい意識してしまい、昨夜はなかなか寝付けない程であった。
でも、朝稽古のおかげで心は晴れた。今は緊張もすっかり取れていい感じだ。やっぱり稽古は裏切らないな……としみじみそう思いつつ、額に心地よく浮かんだ汗を払って、あかりは宿坊への帰路につく。
とはいえ、神社から宿坊までは目と鼻の距離なわけで、5分もしない内にあかりが玄関を開けると、朝ご飯の支度をしていた宮島さんが「お帰りなさい。今日も朝稽古お疲れ様☆」と優しく声をかけてくる。
「準備はほとんどできてますけど、先に朝ご飯にします? それともお風呂?」
「けっこう汗かいちゃったし、着替えもしたいからお風呂入ってきますね」
さすがに「それともわ・た・し?」とは言わなかったが、新婚ほやほやの奥さんみたいな宮島さん(@その可愛さはぜひ見習いたい(byあかり))の問いにそう答えると、あかりは廊下の突き当たりにある大浴場ののれんをくぐる。
時刻はまだ7時前。低血圧の碧衣は朝が弱いし、キイロは基本寝ぼすけだ。「夜勤」明けの大三島さんももちろん寝ているから、この時間はいつも貸し切り状態(ちなみに宿坊の温泉施設「玉ノ湯」は嬉しい24時間対応♪)。心置きなくお風呂を楽しむことができる。
(朝稽古からの朝風呂は格別なんだよね♪)
思わず鼻歌を口ずさみながら、あかりはまずは道着を脱いで洗濯籠に入れると(こうしておくと後で宮島さんが洗ってくれる)、続けてインナーに手を掛ける。
そして思い切りよく全ての着衣を脱ぎ終えたあかりは、お風呂用のタオルを片手に上機嫌で浴室のガラス戸をガラガラッと開け--
ちょうどお風呂から上がろうとしていた宗春と、バッタリと対面した。
「いっ……いやあああああああああ!!!!」
ぱあああああああああんんん!! 宿坊に響き渡るあかりの悲鳴&ビンタ音。
かくして、「入学式」の一日は始まった。いつも通りの前途多難さで!(苦笑)
ちなみに週3回更新の予定です。(土)(火)(木)をイメージしています。
それでは続きはこの7/11(火)に!




