その8「ジャ、ちょっとムネリン借りてきマスねー♪」
第3話はこれでおしまいです!
なお、今回もタマネギーニョさんの挿絵つきですよ☆
その8「ジャ、ちょっとムネリン借りてきマスねー♪」
(……チッ! まさか「赤」に続いて「黄」までとは……!)
眼下で広がる大爆発に、計画の失敗を覚った仮面の男は忌々しげに舌打ちする。
しかし、「赤」はまだしも恐るべきはあの「黄」だ。間違い無い、あの娘は「とっくにこの場に来ていた」のだ。その上で、自らの技の特性を踏まえ、ゴブリンを一網打尽にできるタイミングを見計らっていた--陵辱されかかっていた仲間を「囮」にして!
後先などは考えることなく、ただ仲間を助けるため一直線に飛び込んで来た「赤」とは違い、何という冷徹な計算ぶりか。これが「毛利」の名を継ぐ娘--キイロ・毛利・ジョンブリアン!
……と、仮面の男が思わずゾクリと戦慄を覚えた--そのとき、
--あらら~、なぁ~にやってんのぉ? あーんなにたくさん召喚しといて、結局一人も倒せなかったとか……ウッケる~♪
不意に仮面の男のすぐ近くから、ケラケラと楽しそうに嗤う若い女の声がする。明らかに揶揄するその調子に男は軽く舌打ちするも、しかしもはや慣れっこなので、それ以上感情は波立たない。
「……あくまで試してみただけのこと。それに、こうで無くては面白く無いだろう?」
静かな口調でそう言い返すと、声の主もそれ以上怒らせる気は無いらしく、「じゃ、次こそ期待してるから~♪」と軽い感じで応じると同時に、スッとその気配を消し去った。
(……そう、まだまだ戦いはこれからです)
面倒な相手を追い払い、元の余裕を取り戻した男は仮面の下でニヤリと笑う。せっかく育てた小鬼軍団を全滅させられたのは腹立たしいが、手駒は他にも色々ある。今回は、三人娘の実力を測れただけでも充分すぎる程の収穫だろう。それに--
スッと視線を上に向ける謎の男、その仮面の視線が捉えたのは、跳び上がった「赤」が左脇に抱えたセーラー服姿の少年だ。なぜそんな格好なのかは意味不明だが、あの少年、三人娘を攻略するための、新たな手札になるやもしれぬ。早速あの少年についても調べてみよう……
「では、見るべきものは見ましたし、私もそろそろお暇するといたしましょうか」
そうつぶやいた仮面の男がパチッと指を鳴らすと、地面に突き刺さったままのステッキがヒュン!と手元に戻ってくる。手にしたステッキを握った男が呪禁を唱えたその瞬間、アカデミックガウンに妖しげな文様が浮かび、続けて黒いケーブがふわりと肩から浮き上がるや、バサッ!とまるで「コウモリの翼」のように左右に広がった!
「ではまた新学期にお会いしましょう、可愛いウサギちゃんたち。それまでは、しばしの良い春休みを!」
からかうような口調で告げると同時に、その身体がフワッと空中に浮き上がる。
そして仮面の男は、コウモリの翼をはためかせながら、いずこかへと飛び去っていった--
※ ※
「……いやぁ、助かったけど、相変わらずすごい威力だね。《大ぺったん》」
大ジャンプでの滞空を終え、グラウンドにふわりと降り立ったあかりが、周囲の惨状を見回しタハハ……と笑う。
ちなみにゴブリン軍団の消滅と共に、周囲は元の情景に戻っていたが、かといってこの大穴はごまかしようがない。バニー戦士としては助かったとはいえ、このレベルの学校施設の破損は、生徒会長としては実に頭の痛いところだ。
「ノープロブレムね♪ 後カラすぐに《ウジコシュー》に来てもらいマース。コウいう時のタメに『サービス☆』してるのデスから、タップリ働いてモラワないト♪」
《神気》の放出を終え、元のサイズに戻った杵を肩に担いだキイロが、あっけらかんと言い放つ。キイロの最大技である《大ぺったん》は、あまりの破壊力で色々と周囲を巻き添えにしてしまうのだが、その都度、三ツ矢グループの財力や、三ツ矢神社の《氏子衆》の労力によって何とかしてきたのだ!(+記憶操作による「もみ消し力」)
「……てか、あんたタイミング良すぎじゃない?」
そんなキイロに、ジトッと疑いのまなざしを向けたのは、疲労困憊ながらもそこは役得☆とばかりにあかりにしがみついたままの碧衣だ。
「《大ぺったん》はチャージに時間かかるよね? 一体『いつからいた』のよ、あんた」
「エー、ナンノコトカナー?」
そんな碧衣の追及を「ペコちゃん」みたいな顔になって受け流しながら、不意にキイロは宗春の方へと視線を向けた。
(……えっ、な、何??)
それまでまるで空に舞い上がるが如きあかりの跳躍や、《大ぺったん》の凄まじい破壊力、そしてキイロまでもがバニーだったという衝撃の連続に、すっかり茫然としていた宗春だったが、ハーフ美少女なキイロのパッチリとした瞳に見つめられると、何だか落ち着かない気持ちになる。
そんな宗春をしばしじ~っと見つめていたキイロが、不意ににんまり笑ったかと思うと、手にした杵をひょいっ♪と持ち上げ、その柄の根元をバニースーツの胸の谷間にスポッ☆とばかりに差し込んだ!
(な、何を!?)
そうでなくても、バニーなキイロの豊満すぎる胸の谷間(昨夜の発言によれば95センチのGカップ!)には、ついつい視線が惹き付けられてしまうというのに、そんな棒状のものを挟むだなんて、そんなのどうしても「いけないこと」を想像しちゃう!……と、思わず目を背けようとした宗春だったが、
シュルシュルシュルシュル……
「え”え”え”ええええええ!?」
そんな魅惑的な胸の谷間に、杵の柄がみるみる内に吸い込まれ、ついには「ヨイショ♪」と槌の部分まで押し込まれるというイリュージョン極まる光景に、思わず別の意味でも大注目させられてしまった!
(何それ!? どういう仕組み?? 《四次元ポケ〇ト》的な何かなの???)
驚愕しきりの宗春だったが、当のキイロは全く普通な感じで、続けて自由になった両手をひょい♪とこちらに伸ばしてくると、宗春の左手を掴むや否やグイッ!とばかりに引き寄せた!
「ええっ!?」「ああっ!?」
宗春とあかりの叫びがハモるも、しっかりとしがみついたままの碧衣とは違って、こちらはお互い恥ずかしくって自然と密着が弱まっていた分、宗春の身はあっさりとキイロに奪われてしまう!
「んジャ、ムネリン、チョット借りちゃいマスね~♪」
「は、春くんをどうするつもりなの!?」
何だか猛烈にイヤな予感がして、慌てて問いただしたあかりに、キイロはサラッと返答した。
「ンー、そろそろムネリンにも色々と教えトイたげよーカナって♪ ダッテ、コレから一緒に住むノニ、今のママじゃワケわかんないダローしサ」
「そ、それならあたしが!」
「学園のコトは『セイトカイチョー』がヨイかもケド、コッチの話は、『ソーケ』で『グージ』のワタシがテキニン。ソレに……」
そこで一旦言葉を切ると、キイロはニヒヒと意味深に笑って、あかりの「右脇」へと視線を移す。
「ソレよりレッドは、ブルーをナンとかしナイとダヨね♪」
「……あかりぃ……おねがい……。わたし……もう……らめっ……」
今にも泣き出しそうな潤んだ瞳で懇願されて、あかりは「~~~~!!」と天を仰ぐ。この状態の碧衣を放っておくわけにもいかないし、しかも困ったことにその泣き顔はゾクッとする程色っぽくって、自分もけっこうな《神気》を使った後だけに、あかり自身も身体がカーーっと熱くなるのを感じてしまうる
「オヤオヤ~? レッドもマンザラじゃナイようデスね~♪ ジャ、コレは『お姉チャン』からのサービスデス☆」
そんな二人をニマニマ眺めていたキイロが、何やら祝詞のようなものを唱えると、ゴールポスト周りの空間が、何て言うか「ピンクがかったもやのようなもの」に包まれる!
「バショがバショだし、見られないようココに《ケッカイ》張っときマスネ~。後、更にコレも追加サービス♪」
と言ったキイロが胸の谷間から取り出したのは、大きめサイズのレジャーマットだ! って、ホント何でも出てくるな!? バニーさんの胸元!!
「ジャ、後は二人でごユックリ~♪」
いつの間にやら、ちゃっかりお土産の入ったビニール袋も回収し終えたキイロが、右の手の平をヒラヒラさせつつ、左手で宗春を引っ張っていく。
「あ……! ちょ、ちょっと待ってぇ!?」
慌てて追いすがろうとするあかりだったが、そこに碧衣がしなたれかかり、「おねがぁい……はやくぅ……☆」とささやきながら《結界》の中へと引きずり込む!
「わーーーーん! 春く~~~んんん!!!
だが、そんなあかりの悲痛な叫びも、すでに二人には届かない。
そして《結果》の内の空間もまた、いつしか少女たちが漏らす感極まったような嬌声によって、甘やかに満たされていった--
※ ※
「い、一体僕はどこに連れて行かれるんですか??」
丸い尻尾の付いたバニーのお尻を左右に小気味よく揺らしながら、ズンズン前を進んでいくキイロの背中。それを訳も分からず追いかけていた宗春が困惑の声を上げるも、しかしキイロは答えることなく、お行儀悪くお好み焼きをパクついている。
《結界》にあかりと碧衣を置き去りにした後、続いて気を失ったままの女子ラクロス部員たちに何やら祝詞のようにものを唱え終えたキイロは、「ジャ、行こっカ♪」とだけ告げるや、後はひたすらこんな風に歩き続けていた。
それにしてもホント良く食べる。だってもうお好み焼き3枚目だし! しかもあれ大盛りサイズだよね!?
「フー、美味しカッたデース☆ 《大ぺったん》の後の『おやつ』にはチョウドいい分量デシた♪」
そうこうしている内に、ついに全てのお土産を食べ終え(計4枚)、「ヤッパ、ワタシ的には『麗〇ゃん』に一票デスねぇ……」と満足そうにつぶやいたキイロが足を止めたのは--
何のことはない、昨日から暮らすことになった宿坊の前であった。
(なーんだ、心配して損しちゃったなぁ)
出かけた時とは道が違って(後、キイロを追いかけるのに夢中で)気付かなかったが、要は連れて帰ってくれたんだと安心した宗春に、くるりと振り返ったキイロが悪戯っぽく笑って注意する。
「ノンノン、『ソッチ』じゃありまセ-ン。用がアルのは『コッチ』デース」
「え……?」
再び困惑した宗春が、キイロが指さすままに視線を移すと、そこにあったのは--
道路を挟んで向かい側に立つ、三ツ矢神社の鳥居であった。
「--ソレじゃあ、イヨイヨお参りスルとしまショーカ☆」
そしてキイロはニンマリ笑うと、ますます戸惑う宗春の前で、ビシッ!と鳥居の先を指さしてみせた。
「ワタシたちの秘密が眠ル--この三ツ矢神社の『ホンデン』へ!」
次回予告!
キイロに連れて行かれるままに、三ツ矢神社の「本殿」に足を踏み入れた宗春。そこに待ち受けていたのは、涼やかな容姿の一人の巫女と、三ツ矢神社の祭神と名乗る《玉神様》と呼ばれる謎の「存在」で--!?
次回、『学園戦兎トリプルバニー!』第4話「今明かされるバニーの秘密!? これが三ツ矢神社の《玉神様》だ!」に続く!
挿絵ですが、タマネギーニョさんはこの「ペコちゃんキイロ」がぜひ書きたかったとのことです(笑)
ということで第3話はおしまいなのですが、第4話に関してはまた少しお待ちいただくということでm(_ _)m
でも次回はキイロが大活躍ですし、いよいよ《玉神様》が、そして今まで存在を匂わせていた「もう一人の巫女」も登場しますので乞うご期待ですよ☆
そして……お楽しみの第3話のノクターンも後日公開の予定(多分9月のどこかで)ですので、こちらもあわせてご期待ください!(笑)それではまた!(^^)/




