その4「そんな!? こんなにたくさんだなんて!」
碧衣に迫るヒロピンの危機!続きデス!
その4「そんな!? こんなにたくさんだなんて!」
「--なっ!?」
いつもクールな(「あかり絡み」除く)碧衣が、思わず漏らした驚きの声!
だが、それも無理は無い。どうやって仕留めてやろうかと余裕綽々で近づいたその目の前で、突如、周囲が夕闇に変わったかと思うと、それまでぶるぶると震えていたゴーリー役の「影」がたちまちにして醜悪な怪異に変貌したのだ!
(『実体化』した!? しかも『結界』まで!?)
とはいえ、いきなりで焦りはしたものの、良く見れば相手は碧衣の半分ぐらいの背丈の小鬼にすぎない。緑色の肌からするとRPGヲタの《玉神様》なら「ゴブリン」と名付けるところだろうが、どちらにせよ、こんなのが実体化しようが所詮自分の敵では無い!
そこは冷静沈着をもってなる碧衣である。瞬時にそう判断すると、喉を一息にかき切るべく、右手の苦無を閃かせた--そのときだった!
がばああああああっっっ!!
「きゃああっ!?」
意識を前方に集中していた碧衣の腰に、何者かが背後から強烈なタックルをかましてくる! たまらず地面に倒された碧衣が、驚きと共に顔を後ろへ向けると、そこには目の前にいるのとは別の個体が、ガッシリとしがみついているではないか!?
「クケケケケぇぇぇ! 可愛いウサちゃん、捕まえたゼエェ!!」
しかもあろうことか、そいつはニヤニヤと下卑た笑いを浮かべながら、碧衣の腰の辺り--つまりは丸いウサギの尻尾がついたレオタードの「お尻」に、スリスリと頬ずりをかましてくる!
「……ッ!? 何してくれてんのよっ!」
猛烈な嫌悪に襲われた碧衣が、お尻を振って振り払おうとするも、小鬼はしっかりとしがみついたまま、意地でもそこから離れようとはしない。しかも苛立つ碧衣を煽るかのように、お尻の谷間に顔を埋めてクンクン鼻さえ鳴らしてみせる!
「かつ、嗅ぐなぁぁぁぁ!!」
さすがにかぁぁぁぁと赤面した碧衣が、とにかく立ち上がるべく身体を起こそうとしたその途端、背中に更なる圧が加わり、ムギュッ!と地面に押し潰される!
「なあっ!?」
今度こそ本当に驚愕して、何とか背後を視認しようとした目に飛び込んできたのは、いつの間にか背中にのしかかっていた別のゴブリンの醜い顔だ! しかもそれだけではなく、更に右足と左足にも他の個体がしがみついて、四体がかりで碧衣の動きを封じてくる!
(くっ……こいつ……ら……)
必死にもがく碧衣だったが、数の猛威はまだまだ続く。目の前にはさっきまでの怯えはどこへやら、すっかり勝ち誇った様子の元ゴーリーが立っているし、他にも何体もの邪悪な気配が自分の周りを取り囲んでいるのが感じられて、碧衣はさすがに息を飲んだ!
(そんな……こんなにたくさんだなんて!?)
確かにここしばらく、三ツ矢学園ではグラウンドで活動中の運動部が集団の「なりそこない」に襲われる案件が続いていて、蜘蛛の怪異を追っていたあかりとは別に、碧衣とキイロで警戒に当たってはいた(何せこの学園には大小4つのグラウンドとテニスコート、専用のサッカー場とソフトの球場がある!)。昨日の女子サッカー部の件もその一つだ。
だが、いくら「小鬼」レベルとはいえ、これほどの数の「なりそこない」が一気に実体化するだなんて、今まで経験したことは無い!
「や、やめろっ! 触るなっ……!」
かつてない事態に衝撃を受ける碧衣だったが、しかしそうしている間にも、調子に乗ったゴブリンどもは身動きのとれない碧衣の身体を好き放題に触ってくる!
(あかり以外に……しかもこんなヤツらに触られるだなんて……ッ!)
碧衣の切れ長の瞳にじんわりと悔し涙が浮かぶ。だが、その一方でゴブリン軍団のセクハラ行為は更にエスカレートを遂げていき、最初に腰タックルを決めた個体などは「ぐへへ、俺ッチのクロスでチェックしてやる!」とうそぶきながら、レオタードの股間にぐいぐい腰を押しつけてきて……!
「……いい加減にしろおぁぁぁぁぁぁ!!!」
その瞬間、ブチッと切れた碧衣が叫び、うつぶせ状態の身体からまばゆいばかりの《神気》の光柱が立ち上る!
「《神気解放》! バニー・ブレイクッ!!」
「「「グギャゃあああああ!?」」」
まるで濁流のような《神気》に呑まれ、碧衣を押さえつけていた四体、そして目の前に立っていた小鬼の計五体が悲鳴と共に消滅する!
(残りは八体! なら……!!)
動揺する小鬼たちの残数を一瞬で見極め、跳ぶようにして身を起こした碧衣は、次の瞬間、残る全ての《神気》を使い、バニーブルー最強の技を発動させた!
「ズタズタになって死ねっ! 《ヴォーパル・バニー・スラッシュ》--八連ッ!!」
「「ヒイイイぃぃぃ!?」」」
尋常では無いその殺気に、総崩れになる小鬼たちだったが、もちろん碧衣に容赦は無い! 《神衣》の力を解き放ち、今や青色の閃光と化した碧衣は、超高速での移動のたびに小鬼の喉笛を掻っ切っていく!
「「「ギャアアアアアアアアアア!!!」」」
いくら「実体化」を遂げたとはいえ、怒りの碧衣が放つ最強技の前には赤子も同然。結局、逃げることも抵抗することもできぬまま、次々と狩られたゴブリンたちは--
わずか数瞬の後には、一匹残らず駆逐されていた。
「はぁっ……はぁっ……思い知ったか……!」
瞬きをする程度の間に、一ダースものゴブリンを全滅させた碧衣が、ぜえぜえと荒い息をつきつつ、吐き捨てるように言い放つ。
しかしさすがに消耗も激しく、正直に言えば立っているのも辛い程だ。とはいえ、これで今回の怪異は鎮めたわけだし、後はどにかく宿坊に戻って……
(あかりが帰ってきたら、ご褒美にたっぷりと癒やしてもらおう……♪)
と、苦しい中でもフフッとほほ笑んだ--そのときだった!
「「「おいおい、まだ終わりじゃネーゾォ?」」」
「…………ッ!?」
嘲笑うかのようなその声に、ハッ!?と振り向いた碧衣の目が、たちまち驚愕に見開かれる!
(そんな……!? ありえない……!)
碧衣が愕然としたその理由--なぜならそこに立っていたのは、先ほどの敵をはるかに超える、2ダースものゴブリンの群れであったのだ!
「セッカクノ女子との対戦なんダ。オレたちのチームとも遊んでくれヨォ」
「今日は『トリプルヘッダー』とシャレこもうゼェェ……」
(そんな……もう《神力》が……)
口々にうそぶくゴブリンを前に、碧衣の顔からはサーッと血の気が引いていく。
そんな絶望状態の碧衣に向け、ゴブリンどもはグヘグヘと下卑た笑いを浮かべながら、一歩、そしてまた一歩と、いたぶるかのようににじり寄っていた--
タマネギーニョさんの挿絵の碧衣の表情がすっごくツボなわたしデスw
ということで、第3話前半はここまで!続きはもう一つのバニーの日、
8/21(日)から更新していく予定デス☆乞うご期待!




