その3「お嬢ちゃん、俺たちと『〇クロス』しようぜ!」
続きデス!
その3「お嬢ちゃん、俺たちと『〇クロス』しようぜ!」
「「「きゃあああああ!? 何なのよこいつらーーーー!!」」」
三ツ矢学園の第2グラウンドで、爽やかな青春の汗を流していた女子ラクロス部を襲った突然の受難!
--うぇっへっへ、JKで「ラクロス」とかおしゃまさんだねぇ!
--しかもJCまでいるじゃねぇか! さすがは中高一貫超お得ッ!
--おほぉ☆ ポロシャツにミニスカ……健康的で超可愛いぜぇぇ!
--たまんねぇ! ぜひ俺たちと練習試合おねしゃーーーーーーす!!
--むしろ「セクロス」でもいいんだけどなぁぁぁぁぁぁ!(笑)
「「「いやぁぁぁぁぁ、近寄らないでぇぇ!! 触らないでぇぇぇ!!!」」」
突如として地面から湧き出した「黒い影」の集団に襲われた女子生徒たちが、フィールド内を悲鳴と共に逃げ惑う。ちなみに女子ラクロスは「タッチ厳禁」のハズだが、ルール無用の「影」共は、そんなの知るか!とタッチし放題だ!
女子生徒たちも手にした「クロス」(=ラクロスのスティックのこと。「聖衣」ではない)で応戦しはするものの、いくら振り払っても「影」はすぐ元に戻ってしまい、全く効いた様子は見えない。そしてそうこうしている内に、一人また一人と「影」につかまり、好き放題に触られてしまう!
(ダメ、このままじゃ……みんな「ボディチェック」されちゃう!)
ショートカットが似合うラクロス部の部長が、思わず絶望のうめきを漏らす。ちなみに「チェック」とはクロスで相手を叩くことだが、調子に乗った「影」たちは、「これが俺たちのクロスだ!」とばかりに、股間から伸びた「スティック」で女子部員たちをつつき回す!
いやそれどころか、部員たちを次々とフィールドに押し倒し、ミニスカートをまくり上げては本当に「セクロス」しかねない勢いであった!
「お願い……誰か、誰か『ライド』(=防御)しに来てぇぇ!」
部員たちを守るべく懸命の「スライド」(=相手の突破をディフェンスすること)を繰り広げながら、部長が涙まじりで叫んだ--その瞬間!
シュバッ!
宙を裂く鋭い斬撃音と共に、部長に「チェック」を敢行しようとしていた「影」が、悲鳴を上げる暇すらないまま首筋を切り裂かれて消滅する!
「--ラクロス風に言うなら、ここからは『ブレイク(=攻守交代)』ってトコかしらね!」
シュバッ! シュバシュバシュバッ!!
そんな余裕に満ちた宣告と同時にフィールド内に閃光が走り、女子部員たちを襲っていた「影」たちが、次々と首を刎ねられ消滅する!
もちろんその正体は、間一髪で「フライ(=選手交代)」しにきた青バニー姿の碧衣であった! そしてここからはもう全然ラクロスじゃないと思うので、そろそろこちらも無理して「ラクロス感」出すのはやめることにしよう!(笑)
(ふぅ、何とかギリギリセーフだったみたいね……)
間一髪で助けられたラクロス部の面々が、《エナジー》を吸われた消耗&安堵で全員気を失ったのを見届けると、碧衣はバニースーツの「胸の谷間」(あかりやキイロほどではないがそれなりにはある)から更に一本苦無を取り出し、空いた左手に握りしめる。
「……それじゃあ、ここからは『遠慮無し』ってことで!」
いや、元々遠慮なんか全然していなかったと思うが、そう言って碧衣は物騒に笑うと、残りの「影」たちにギロリと鋭い視線を向ける。
--ひっ、ひいいいいいいいい!!
恐怖のあまりたちまちにして総崩れとなった「影」たちを、碧衣は欠片の容赦も見せず、次から次へと始末していく。最初は十二体いた「影」たちもあっという間に討ち減らされて、ついにはゴーリー(=ゴールキーパー)を残すのみとなった。
「これでゲームセットね。制服一着犠牲にした分、最後はせいぜい良い声の断末魔を聞かせてもらうとしようかしら……」
無慈悲極まり無いその言葉にぶるぶると震えあがったゴーリーに向け、苦無を構えた碧衣がゆっくりと近づいていった--それは、そのときのことだった!
※ ※
「--昨日もそうでしたが、やはり『なりそこない』ごときでは、いくら数を揃えても無駄なようですね」
ラクロス用のフィールドの中で、碧衣が「影」たちを狩りまくっていたちょうどそのとき、第2グラウンドに併設して建てられている管理棟(管理室や休憩室、更衣室などがある)の屋根の上で、その様子をつぶさに観察する一人の男の姿があった。
アカデミックガウンと呼べばいいのだろうか? ゆったりとした黒いガウンをまとい、更にその上から黒いケーブをマントのように羽織ったその長身の男は、帽子こそ被ってはいないが古式ゆかしい欧米の大学生のような趣だ。
しかしそれだけでも充分目立つ装いだが、何より男が「異様」なのはその顔を覆うフルフェイスのマスクだ。目鼻すらないそのマスクは四分割の白黒模様で、左目のところにだけ、コウモリのようなマークが描かれている。
「……ですが、それもあくまで『なりそこない』が相手の話。それが『実体化』したとなれば、果たしていかがなものでしょう?」
そう言ってフフッと笑うと、仮面の男は左手に古めかしい書物を開くと同時に、右手に持ったステッキをまるで投槍のように振りかぶる! そして次の瞬間、マスクの下からは忌むべき呪禁が歌うかのごとく流れ出た!
「混沌の悪しき闇より生まれし、彷徨える者たちよ……我が呼び声に応え、その禍々しき姿を現せ……」
男の呪文の詠唱に合わせ、左手の書物から黒い闇のようなものがにじみ出す。そしてその闇は右手のステッキへと流れ込むと、頭部に取り付けられた宝玉を妖しい紫の光に輝かせる!
「《妖魔顕現》ッ! 出でよ、『ゴブリン』どもッ!」
最後に高らかに唱えると同時に、男のまとった黒のガウンに禍々しい文様が赤く浮かび上がる! そして男の投げたステッキの尖端が、グサッ!とグラウンドに突き立ったその瞬間、たちまちにして周囲一帯が夕闇の結界に包まれたかと思うと--
続いて地面から、ワラワラと新たな「影」が出現した!
「「「グヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャァァァ!!!」」」
しかもそれだけではない! 聞くに堪えぬような叫びと共に、「影」の群れはみるみるうちに「実体化」を遂げると、人間の子どもぐらいの背丈をした緑色の小鬼へと変貌する!
そしてその数は--何と十二体!!
「さぁこちらも選手交代です。1チーム分もの《怪異》を相手に、たった一人でどこまでやれるか、しかと見させてもらうとしましょう。バニーブルー、いえ--『小早川碧衣』さん」
お手並み拝見とばかりに嗤う謎の男。そしてその仮面に隠された瞳の先では、突然の変事に驚愕する碧衣へめがけ、邪悪な笑みを浮かべたゴブリンたちが、今まさに襲いかかろうとしていた!
果たしてこの仮面の男は何者なのか!?
そして、気になる碧衣VSゴブリンはどうなるのか??
しかも次回はタマネギーニョさんの挿絵入りですよ!!
8/10(水)更新予定デス!




