予告編「三ツ矢学園生徒会の日常」
お待たせしました!(^^)/
イラスト:タマネギーニョさん×文章:優パパ★の合同企画で贈る「学園バニーバトルラブコメ」いよいよ開幕デス!
まずは「予告編」として、主人公のキャラクターたちの紹介編から☆
「……ということで、今日の議題は次年度に向けた『生徒募集活動』だ!」
おほん!と軽い咳払いの後で、ババーン!と書き終えたばかりのホワイトボードを示したのは、高2生にしてこの三ツ矢学園の生徒会長を務める少女・吉川あかりである。
(うわぁ……今日のあかり会長、いつにも増して燃えてるなぁ……)
メラメラと燃える炎が見えるかのような、ヤル気と決意に満ちたその姿に、ロの字の形に配置された机の真向かいに座っていた男子生徒--清水宗春(高1)は内心ひそかにため息をつく。
何せこの熱血生徒会長がヤル気になると、まず間違い無くトラブルが起こるのだ。そして更に困ったことに、それはかなりの高確率で宗春の身にも「とばっちり」として降りかかる。まぁそんな学園生活にも、この3ヶ月ほどですっかり慣れはしたのだけれど……
(誰か止めてくれないかな……)
と、淡い期待を抱く宗春をよそに、左右の机からはすぐに呼応する声が続いた。
「『生徒募集』というなら、やっぱり来月の『オープンスクール』が最重要イベントね。そこで来校者を相手に本校の魅力をいかにアピールするかがポイントになるわ」
カタカタと議事録をノートPCで作成しながら、落ち着いた声で応じたのは、副会長兼書記の小早川碧衣(高2)である。
いかにも快活そうなショートウルフのあかり会長に対し、こちらは艶やかな黒髪をロングに流した、まさにクールビューティといった趣だ。
……しかし宗春は知っている。この先輩が、そんな涼やかな見た目の裏に、どれだけの闇を隠し持っているのかということを……
「ハイハーイ! キイロにグッドなアイデアがあるヨ!」
それに対し、逆側から弾むような声と共に手を上げたのは、会計担当のキイロである。
「ウチの生徒全員がバニーさんの格好でOMOTENASIすればいいんだヨ! キットものすっごく評判になるネ! ワオ、我ながらナイスアイデア☆」
あっけからんとした笑顔でとんでもないことを言い放つキイロに、あかりの身体はガクッと傾き、碧衣もさすがに苦笑する。
「いや、さすがにそれはダメだろ……。そりゃ、評判にはなるかもだけどさ……」
「キイロ、ここはアメリカじゃ無いからね? そんなはしたないこと、学園として許可できるわけないでしょ」
学園の風紀委員長も兼務している碧衣が、暴走をピシャリとたしなめる。
(いや、アメリカでもダメだと思いますよ……?)
と、心の中でツッコむ宗春であったが、一方のキイロはといえば、「エー、お客さんみんな喜ぶと思うケドナー」と不満顔だ。
キイロ・毛利・ジョンブリアン--ゆるふわの金髪と青い目、そしてその名前でも分かる通り、フランス系アメリカ人の父と日本人の母の間に生まれたハーフである。なお、学年こそは宗春と同じ高1だが、年齢はあかりや碧衣と同じ17歳だ。
いやそれどころか、この三人は全員が従姉妹同士であり、更に言えば三人ともこの学園の母体である『三ツ矢グループ』の「ご令嬢」であって、
更に言えば、これは宗春だから知っていることだが、この三人は全員--
「ねっ、ムネリンもそう思うデショ?」
……と、想いを馳せていたところで、突然キイロから声をかけられ、「え、えーと」と思わずあわあわする宗春。そんな宗春に、キイロははっはーん♪とニンマリ笑ってツッコみを入れてきた。
「さてはムネリン、ワタシたちのバニー姿を想像してたデショー? 相変わらずエッチな人デスね~☆」
「そ、そうなのか!?」「……チッ、これだから男は……」
「ちっ、ちがいますよぉ!」
頬を赤らめるあかり&スッと声の温度が下がる碧衣に(しかも舌打ちまで!)、宗春は慌てて否定する。いやまぁ、ちょっと想像しちゃってたのは事実だけどさ……
でもそれは別に宗春が「健全な思春期男子」だからと言うよりは、むしろ他の理由から来ることで--
「それよりもセレモニー企画として、結婚式をあげるのはどうかしら? もちろんその大役は会長&副会長である、あかりと私が務めるということで」
「ええっ!? あたしがなんでッ!? そんなのムリだよ!」
「いや、別に問題無いでしょ? 従姉妹同士は結婚できるわけだし」
「それ以前に女の子同士だからね!?」
「まぁ残念だけど、あくまで『企画』としての話。でも、あかりがタキシードを着て横に立ってくれさえすれば、もうそれだけで私的には大満足……もとい、女子たちのハートはわしづかみね。志願者増間違い無し!」
ちらほらとよこしまな思惑が混ざっているが、でもあかりのタキシード姿うんぬんについてはもっともだし、そう言う碧衣のウェディングドレス姿も大いに注目を浴びるに違い無い。
吉川家と小早川家--三ツ矢グループの「両川」と呼ばれる両家の令嬢二人は、タイプこそ違えどどちらも文句無しの美少女で、ほぼ全員が女子であるこの学園の生徒たちにとっての憧れの的なのだから……
「て言うか、何であたしがタキシード前提なのよ!?」
「あら? 紋付袴の方が良かったかしら? 確かにそれも捨てがたい……」
「どっちもイヤだよ!」
冷静な口調で詰めてくる碧衣に押されながら、「ど、どうせならあたしだってウェディングドレスが……」と小さくごにょごにょつぶやくあかりだったが、そこにキイロが乱入してきた。
「ノンノン、きゃっかデース。そんなの男の子ウケしませんヨー。むしろ今のテーマは『男子生徒』の獲得のハズデース!」
そう言って、「ね、ムネリンも男子のコーハイ、欲しいデスよネ??」と身を乗り出してくるキイロの近さにへどもどしながら、「は、はい……」と首を縦に振る宗春。
ちなみに正統派和風美人の碧衣や、キリッとした顔立ちのあかりとはまたタイプが違い、キイロは目のぱっちりした、お人形さんのような愛らしさの金髪美少女だ。
しかし可愛いだけではない。彼女の「武器」はもう一つあって、そこはアメリカーンなだけに、そうやって身を乗り出すと、かなりのボリュームの「それ」が机の上に乗っかって、何ともその……
「……またキイロの胸ばかり見て。本当に男という生き物は……」
「………………春くんのエッチ」
ぐさぐさっ!と二人分の視線&言葉のナイフが胸に刺さって、「ぐはあっ!?」とダメージを受ける宗春。しかしそれはそれとしてキイロの言うことも事実ではあった。
なぜなら昨年まで女子校だったこの学園は、近年の生徒数の減少もあって「共学化」に踏み込みはしたものの、蓋を開けて見れば男子生徒は宗春一人だけという有様だ。ハーレムと言えば聞こえはいいが、内気な性格のため中学時代までロクに女子と話をしたことさえ無い宗春にとっては、やりにくいことおびただしくて、正直毎日とってもストレスフルだった。
「ダカラ、ムネリンのためにも、ここは男子ウケするアピールが必要なのデス! ということで、みんなでバニースーツ着まショ、バニースーツ☆」
えっへん!と大きな胸を張るキイロに、しかし碧衣がすかさず異議を唱える。
「却下ね。あかりのタキシードは譲れないわ。その格好で私とバージンロードを歩いて、最後は『誓いのキス』をするんだから」
「何だか話が膨らんでるし!? ああ、もう! みんな真面目にやってよね!」
(やっぱり最後はこうなっちゃうのか……)
わいわいがやがやと、たちまちいつもの大騒ぎを始めた三人の従姉妹たちを見て、宗春は思わず天井を見上げる。生徒会に強制加入させられて以来、この光景を見るのは一体、何回目だろう……
まぁ正確に言えば、それはこの生徒会室の中だけのことでは無いのだけれど--
(思えば、入学前から無茶苦茶だったもんなぁ……)
そして宗春は再び大きくため息をつくと、この三人と出会い、深く関わるようになってからの日々のことを振り返っていった--
(学園戦兎トリプルバニー!』本編に続く!)
引き続き、明日「プロローグ」をUPします!