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4 精霊の村

道なき道を進み、どんどん森は深くなった。

草をかき分け進むうちに本当に村があるのかと疑うようになったところで、急に視界が開けた。

精霊の村に到着した。


「村長様の結界で隠されてて、分からないようになってるのよ」


サーシャは得意そうに言う。

確かに着く直前になるまで村があることに気づかなかった。

この世界には学ぶべきことがたくさんありそうだ。

魔法が本当にある世界だ。

ワクワクする。


「ただいま!!」


「ああ、おかえりサーシャちゃん」


サーシャに向ける村人の目は温かく、声には尊敬がこもっているように感じた。

対照的に俺に向ける視線が冷たい。


「その人間は?」

 

すれ違う人々はみんな俺のことを聞き、そのたびにサーシャは説明する。

その説明で村人は一応は口では納得するものの、


「まず村長に聞いてからだな」


と口をそろえて言う。


「皆いい人なんだけど。人間に対しては警戒心があってね。ごめんなさい」


サーシャは申し訳なさそうに言った。

サーシャ達の種族、森の民はほぼ人間と変わらない。

寿命はなんと人間の3倍程度。

華奢で白い肌、美男美女が多いようで顔の作りが人間と少し違うようだ。

ただそれ以外は特に人間と変わりない。

人間が平地で魔法工学で文化水準をあげた一方、彼らは山の集落で狩猟、採集、農耕を中心に生活をしていた。

自然や精霊を愛し、自分たちの生活をしていたのだが、近年、人間に侵略され、奴隷として狩られることもあるようだ。


つまり、俺がここで歓迎されないのはそういうわけなのだ。

サーシャが隣にいなければあの冷たい視線の代わりに矢が飛んできたかもしれない。


話しているうちに1本の木の前に着いた。

これを1本と表現するのははばかれるぐらいの太い木で、小さな家ぐらいの大きさがある。

サーシャがおもむろに幹に手をかけドアのように開いた。


「いらっしゃい。カウリパのなんでも屋だよー」


木の中が部屋になっていた。

村に入ってから家を一軒も見かけないと思っていたら、木が家になっているようだ。

部屋の中には毛皮や武器、果物、穀物などあらゆるものが並べられており、

カウンターの向こうにはショートカットの小さな女性が立っていた。

ニコニコ笑い柔らかな雰囲気だ。

1/fゆらぎというのか。

聞いているだけでこちらがリラックスする声だ。


「サーシャちゃん。いらっしゃーい。横にいる方は人間の方?珍しいね。

私はカウリパっていうの。このなんでも屋の店主よ」


手を差し伸べられ握手をする。


「神崎要です」


カウリパさんはほかの村人のような冷たい態度ではなく、

むしろ俺に興味をもっているようだ。

理由を尋ねると、


「サーシャちゃんが連れてきた男の子なんて気になるに決まってるじゃない」


とのこと。


「ちょっと、そんなんじゃないんだから。勘違いしないでよね」


サーシャにしっかりと否定された。


いままでのいきさつを説明する。

こことは異なる世界にいたこと、クロノスと名乗る男に会ったこと。

森でクコの実を食べて動けないところを狼に襲われサーシャに助けられたこと。


「うーん」


カウリパさんは唸る。


「ね。ちょっと信じられないでしょ」


「にわかに信じられない話ではあるけどー。

嘘をつくような人には見えないけどな」


「カウリパさん!」


「大丈夫だよサーシャちゃん。この男の人は絶対だまされる側の人間だよ。

奴隷のように働いていた匂いがするよ。」


「あはは。たしかに」


おいおい、ほとんど合ってるよ。

いまちょっと感動しちゃった気持ちを返してくれよ。


「そうだカウリパ。これ。」


サーシャはどさっと血抜きをした狼をカウンターにおいた。


「おお。ダーティウルフが3匹も。大人でさえ1匹仕留めるのに苦労するのに相変わらずだね」


そういうとカウリパさんは奥の方から袋を持ってきた。

物々交換のようで、袋には穀物やら、衣服が入っている。


「こちらこそいつもありがとう」


「カナメくん。またひいきにしてね。

村の人には私から言っておくから。この村のこと嫌いにならないでね」


「ありがとうございます。また必ず来ます」


そういって、店を後にした。


カウリパさんの店から、少し歩くと、ひときわ大きな木の前に着いた。


「ここが村長(むらおさ)さまの家よ」


少し自慢気にサーシャは紹介する。


「ただいま!」


「ただいま?」


木の一部がドアのように開き、木の中に入る。

なんでも屋と違い、部屋はいくつかのスペースに分かれており広い。


「あれ?村長いないのかな。

おばあちゃーん」


おばあちゃんなのかよ!

どうりで気軽に村長の家に入ったと思ったよ。


階段を上がっていくのでついていく。

2階は1階のように部屋が分かれておらず円形の大きな部屋となっていた。

村の集会場に使うのかもしれない。

部屋の奥には祭壇のようなものがあり、木彫りの龍が祭られている。

羽は生えておらず、雲の中を泳ぐように彫られた龍は、海外のドラゴンというより、日本や中国の龍に近い形をしているようだ。


その祭壇の前に1人の老婆がこちらに背を向けるように座っていた。

はっきりとは聞き取れないが歌っているようだ。


「村長さま、瞑想中だ。ちょっと静かにしていてね」


「ああ。はい」


少し顔を背けて返事した。

顔を近づけて声を忍ばせて喋るサーシャに照れてしまった。

家に帰ったからなのか。

言葉が少し砕けることが多くなったように感じる。


ほどなくして歌が終わると、老婆はゆっくりとこちらを振り返った。


「おかえりサーシャ。

隣にいるのは異界の人かい?」


「あれ、もう知ってるの?もしかしてお告げ?」


「うむ。クロノス様からじゃな。

異界から人間の男がくるからもてなしてやってくれと」


本当の話だったんだとサーシャは驚いている。


「申し遅れたの。私はイリノテ・ユークレシア。今年で500歳になる

この小さな村の村長をさせてもらっておる。

歓迎するぞ。人の子よ」


「僕は神崎要です。一応16歳です。

元の世界で死んでからここに転生しました。

ここに来てすぐに狼に襲われて、危ないところをサーシャさんに助けて頂きました」


混乱させるだろうと考えて年齢は肉体年齢のことを言っておいた。


「ええ!同い年じゃない。私も16歳よ。

じつは村長の孫なの。よろしくね。」


「ああ、そうなんですね。よろしくおねがいします」


「同い年なんだから、お互い堅苦しい言葉じゃなくてもいいんじゃないかな」


そう言われても女性とは家族以外はほぼ敬語でしか喋ったことがなく、おれにとってはハードルが高い。


「はは。ちょっと苦手なんだけど。わかった」


「ところでカネメ君。住むあてはあるかの?」


「いや。ここに来たばかりで。なにも。

クロノス様からも精霊の村に行けばいいとしか」


「あいわかった。ここにしばらく住めばよい。

ここの生活のこともおいおい慣れていけばいいじゃろ」


「ええ!おばあちゃん!」


「部屋は余っとるからいいじゃろ。精霊術に関してはサーシャに学ぶといい」


「ちょっと。まだ私はいいんと言ってないからね」


サーシャが抗議する。

当然だろう。突然現れた身元不明の男性を急に家に住ませるというのだから。


「精霊の導きのままに」


イリノテさんが手を合わせる。


「うっ。精霊の導きのままに」


クロノス様が口をきかせてくれたのか。

こうして俺はサーシャの家で生活することになった。




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