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誠に僭越ながら 私 アイドルを始めました①  作者: ODN(オーディン)
夢見る少女と家庭支援用AI
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8.「曲作り」

|星連(ほしつら)アイ様。16歳。秋。

事務所への入所が決まり、半年の月日が経った頃。

日課のダンストレーニングを終えたアイ様の元に一本の電話が掛かってきた。



「ハイ。オツカレサマデス。———ハイ―――…ハイ」

 

…相手はおそらくアイ様をスカウトした事務所の社長様なのだろう。

緊張した様子で受け答えをするアイ様であったが、


「―――――えっ。本当ですか!」


とつぜん歓喜の声を上げたと思えば、


「―――――――エ・・・ハイ。分カリマシタ。失礼シマス…」


ずん…と沈んだ顔をして電話を切ると、


「これから…私の曲を作ります」


…突拍子もない事を言い出した。



【マスター。…今何と?】


事情を尋ねると、

社長様に曲の作成を命じられたらしく、その事を気に病んでいるようだった。

…つまりはこういう(・・・・)事なのだろう。


【アイ様。デビュー決定、おめでとうございます】


「ありがとう! 本当に嬉しい…けど、どうしよう。

 曲なんて私つくったことないよ~」


嬉しさと試練への不安が混ざり合ったアイ様はとても不思議なテンションで、…ここまで困り果てたアイ様の姿を見るのも随分と久しい気がした。


【まぁ…それは一度置いておきまして。今日はお祝いをしましょう。

カロリー制限もあるので(ささ)やかなものとなってしまいますが、お腹いっぱいご飯を食べて二人で考えていきましょう】


「…うん」



…それからアイ様と私で話し合った結果。

私が作詞を、

アイ様が作曲を担当することになった。


【————本当に、よろしいのですか?】


「うん。ちょっと思いついたことがあってね…」


二人で食器を洗いながら再度確認すると、アイ様は先程よりも少し余裕のある表情でそう答えた。…どうやら何かしらの当てがあるらしいが「きっと事務所の方と相談するのだろう…」と思い、詳しく詮索することはなかった。


【そういえば曲名はどうするのですか?】


洗ったしゃもじ(・・・・)マイクを片手に身振り手振りで尋ねてみる。


「あはははっ!」


そんな私の姿が面白かったのか。

しばらくアイ様は笑い続け、ようやく落ち着いた所で私の質問に答えてくれた。


「うん。ずっと前から決めてたの…」


そう言うと、アイ様は泡の付いた手でシンクに曲名を書き記した。



『Look! I‛m Idol.———見ろ、あたしがアイドルだ』



…挑戦的ながらも実にアイ様らしい真っ直ぐな曲名だった。



【…素晴らしい】


まだ曲調も詞も決まっていない私たちの夢の曲。

だというのに私の思考回路は既にステージで晴れやかなデビューを飾るアイ様の姿を想像していた。


「それでね。衣装も髪も思い切ってピンクにしようかなって…」


…きっとアイ様の衝撃発言が無ければ、もう数分ほど妄想に心躍らせていた事だろう。



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