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誠に僭越ながら 私 アイドルを始めました①  作者: ODN(オーディン)
夢見る少女と家庭支援用AI
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4.「受難」


「…では、これより本日の会議を始めさせて頂きます。皆様、よろしくお願い致します」


金髪にアメジストの瞳を持った淑女(しゅくじょ)———副秘書長シーラによって本日の朝礼会議が開始された。とある小さな会議室で副総理をはじめとした防衛省・財務省・環境省‥などの各省庁の代表が集まった会議…。


「ふぁ~・・・」


しかし、朝から集まったところで特別何かが決まるわけでもない無駄な会議を前に有頂天(うちょうてん) 咫狸(あたり)欠伸(あくび)をする。


「秘書長。それでは‥」


「へいへい」


会議の進行を丸投げしようかと思ったところでシーラに先手を打たれてしまい、咫狸は仕方なく会議の議題を挙げることにした。


「はい。じゃ~‥いつも通りこの議題から。人型AIの作成(・・)について、ですが…」



〈やはり人型AIには無理が————〉

〈———しかし、火山・海底・森林などの調査も…〉

〈———それってお金はどこから出すの?〉

〈AI技術省の方で何とか――――〉

〈——米国や各連盟諸国にはどう説明を‥?〉



咫狸(あたり)が口を開いた瞬間、朝7時とは思えないほどの熱量で会議は白熱(ヒートアップ)し、会議室は言葉の弾丸飛び交う戦場と化した…。






・・・———西暦2500年より始まったAIの社会進出。

これにより医療・経済・農業・漁業———等、あらゆる分野に多大な好影響を与え、過去の大戦から背負った借金や500年前からの不安要素であった低い食料自給率を克服したことで日本は世界に大きく注目される国となった。


そして、現在2520年の夏。

AIによる日本の技術力向上をうけ、議会の話題に挙がったものが「人型AI」の創造(・・)であった。過去の海外映画やアニメ・漫画に登場したAIを搭載した人型ロボット——通称・人型AI。


‥‥しかし、そのロマンと希望に溢れた存在を実際に生み出すとなると非常に大きな問題が生まれることになる。


 

 そもそも「AIとは何か?」という定義を純粋に突き詰めれば、

電力のみで動く都合のいい従者。肉体のない仮初の知能生命体であり、演算機能を有したそれの使い道は無限の可能性を秘めていた。良い方にも、悪い方にも…。



 それは人の幸福を願って生み出されたモノが誤用されることを既に歴史が物語っていた。人々の生活を支えるべく生まれた人型AI————生命という概念を持たないそれを軍事利用すれば日本は無敵の兵隊を保持する軍事国家と変貌する。

たとえそういった(・・・・・)意図が日本に無いとしても日本が世界に誤解されることは間違いない。


 過去、「核兵器」なる物が存在していた時代にもあったことだが、大きな力は持つだけで周囲に不安の種子をまき散らしてしまう。初めは予感や憶測であったとしても日本の行動によって生まれた一つ一つの要素が各国に疑心暗鬼を生み、最終的に戦争にまで発展してしまえば日本は本当の意味で終わってしまうだろう…。





「————…聞いていますか。秘書長」


「…どうせ変わんねぇよ。

「人型AIの作成、賛成か反対か」「そもそも人型にする理由はあるのか」

…問題ばかりで全く進まない会議に何の意味がある?」


「人型AIの作成」という試み自体、咫狸(あたり)は賛成している。

ところが軍事利用への発展か・その余地有りと各国に危険視されることを防ぐために


〝必要最低限の運動能力〟を有しつつ

〝人間的な知性と道徳と判断力を有したモノ〟


が前提として求められるわけだが「そんなものを創り出した所で何か面白いことが出来るのか…」と思い至ったところで咫狸(あたり)は大きな鼻息を吹き散らしていた。


「…では、あなたの不満共々この会議で発散してみてはいかがですか?」


「冗談だろ。言ったところでこいつら…いや、アスボー(・・・・)以外は聞きもしないだろ」


AI技術省(・・・・・)明日(あす) (あゆむ)ですね。

…明日 (すわる)様のご子息の…」


2500年のAI社会進出に向けて創設された内閣・AI技術省。

日本における全てのAI作成を担っており、AI産業は『日本政府直属の特殊市場』となった。…これら省庁・市場は国民の税金の一部を媒介に設立されたものであるとして政府は企業・個人に対してAI機器を賃貸または無償で提供することが約束されている。


「確かシーラ嬢ちゃんと同じくらいの年だったかな。(わけ)ぇけど中々面白い奴だぞ…」


そういって(あご)を突き出すと着席していた一人の青年がゆらり‥と立ち上がる。


「——————…だ・か・ら。

AIも肉体という器が異なるだけで人と同じように心の成長には時間が必要なんですよ。そんなホイホイと判断力だの道徳心だのが育つわけないでしょうが…ほんとに馬鹿だなアンタ等は」



白衣を着込んだ黒髪で眼鏡をかけた青年。

AI機器ASBシリーズの生みの親であるAI技術者。

明日(あゆむ)。年齢25歳。


AI機器の生みの親である初代AI技術省大臣:明日(すわる)氏の息子でありAI技術省を父から引き継いだ人物。


‥‥なのだが「性格に難有り」として咫狸と同様に政府の人間には嫌われている。


〈・・・・・〉


各省庁の代表達による冷たい視線を受けながらも(あゆむ)は特に気にすることなく静かに着席した。


「むぅ…」


AI技術における専門的な知識は咫狸(あたり)にはない。


それでもやはり疑問に思ってしまうのが

「たとえ二つの条件に見合った人型AIを作ったところで、そんな人並以下の力しか持たないか弱い(・・・)存在に一体何ができるのか…」という人型AIの存在価値。


…おそらくこの会議が停滞している最も大きな要因の一つであった。



「心の成長に時間…か。お前はどう思う?」


人型AIの在り方が思い浮かばず咫狸はシーラに尋ねるが、


「…では続いての議題に移ります。都外に建設されたスポーツ文化事業団所有の陸上競技場及びその他関連施設についてですが、その運営については全く目途が立っておらず――――」


全くやる気のない咫狸に代わり彼女は会議を進行していた。


「何か…つまんねぇな」


「————建設から月日はそれほど経っていないため取り壊すよりも再利用の方が…」


窓の外を眺めながら呟く咫狸(あたり)

そんな彼を睨みつけながらシーラは資料を読み上げていた。


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