第61話 漆黒の刃の価値観
六日目の作戦まで時間が空いてしまう。
といっても、やる事はあった。
ほぼ確実に妨害にくるアイナやアスウェルの対処。
そして、出会ってしまったら最悪な氷裏の対処。
この二点について考える必要があるし、それに伴って漆黒の刃と協力しなければならない。
かといって、目立つ行動がとれないので、何度も顔をあわせるわけにはいかない。
基本はチャットでやりとりして、一回だけ戦い方の見学をすることになった。
今まで悪い事してきた人達と一緒に戦うのって、結構複雑だけど。
向こうの人達はどう思ってるのかな、とちょっと心配になったけど、漆黒の刃メンバーは皆プロだったらしい。
特に組む相手が変わった事に、思う事はないらしい。
五日目の夕方
研究所で手伝いをした帰りに、地下道の拠点に寄って、戦闘訓練場のようなところで漆黒の刃の様子を見る。
やはりというかやっぱり実力者ぞろいだった。
そんな中、どんな時でも相手への思いやりを忘れない姫ちゃん。
「一つ、聞いても良いですか?」
その場にいた漆黒の刃であるロクナさんに、話しかけていた。
「どうして、えっと……今まで、仕事してたんですか?」
直接どうして悪い事に手を染めていたのか、は聞きづらかったのだろう。
姫ちゃんはそう言葉を濁した。
対するロクナさんは、とくに特別な事でもないといった風に応答。
「生きるためですよ。他の人と変わらないでしょう。生きるために仕事をして、お金を得て、生活している」
「けど……」
「私達のしている事は悪い事、でしょうね。それが気になると?」
「はい」
僕達の価値観で言うと、彼らの行いはちょっと物申したくなるのは間違いない。
本当は、それをとがめなくちゃいけない立場なんだろうけど。
でも、こんな彼等と手を組みでもしないと解決できないものがある。
複雑だよね。
「他に方法は、見つからなかった、からですか?」
「いいえ、他にもいろいろな選択肢がありました。私達の所のメンバーは多芸で他の分野にも秀でているので、その気になれば別の職業に就いてもやっていけるでしょう」
「なら……」
「それを話す事にメリットが? 我々はただの協力相手です」
「……」
相手の事を分かろうとした姫ちゃんだけど、相手が理解を望んでいない場合は、難しい。
漆黒の刃は表面上だけの付き合いを望んでいるらしい。
これ以上ただ黙ってみてると、姫ちゃんに任せっぷりな僕が情けなくなるかな。
「まー、そうはいっても、一定の信頼関係ってあった方がいいよねー。仕事を円滑に進めるためにもー。僕らは、色々知ってから頑張りたいタイプってことでー」
「一理ありますね。ならもう少しだけ」
助け舟を出してみると、あっさりと態度を緩めるロクナ。
「家ごとにルールが異なる、と考えていただければ。あなた達にとって悪の所業でも、私達にとってはそうではない。だから良心の呵責にさいなまれることはない。この点をふまえていただければ、付き合いやすくなるかと思います」
姫ちゃんはこちらと顔をみあわせる。
まあ、姫ちゃんにとってはちょっとだけ難しい話かもしれないよね。




