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第55話 織香
目覚めの前に、記憶が再生される。
それはおそらく最近の記憶ではない。
ずっと昔の記憶だ。
一か月とか二か月とか、そんなものじゃない。
もっと昔の。
この僕に、あるはずのない記憶。
その中で、僕は誰かから話しかけられている?
「私の名前は織香、君の名前は?」
「よく聞いて、私が持っている力は――。――の力。だから、死んでいく魂を黄泉路から引きかえさせることができるのよ」
「私は、病気のせいでいつか死んじゃうかもしれないけど、みーちゃんのためにまだ生きようって思って、頑張る事にしたの」
織香と、名乗った少女はそれからも色々な事を喋っている。
けれど、他の言葉は聞き取れない。
僕はその、小さくなっていく声を聞きながら、意識が浮上していくのを感じた。




