第54話 張本人
イフィールさんがいなくなった後。
どれだけの時が流れたのか分からない。
チャットも繋がらないから、外からの情報が入ってこない。
しかも暗い。
魔法で光源を用意できるけど、体力を維持するために、魔法の使用は控えていた。
いちかばちか、未利の風でがれきを吹っ飛ばしてみようか、と考えたところで、そのがれきが外側からどかされた。
横方向から、光が差す。
そこにいたのは、ランタンを持ったロクナだった。
「同盟を結んだ直後にこの失態ですか。考え直しましょうか」
「できればそれはもうちょっと後にしてくれると助かるかなー」
どうやら、一応手を組んだ相手を助けてくれたらしい。
「どういたしましてーって言いたいところだけど、外の状況は分かるー?」
「地上で災害が起こっているようですね。我々も地下に閉じ込められました」
外は深夜だ。六日目の。
彼がどうやって情報を得たかは知らないが、もうそんな状況らしい。
姫ちゃんがいない僕達では、これ以上の外の状況を知る事ができない。
イフィールさんは助けを呼ぶ言っていたけど、大丈夫だろうか。
ここからの脱出もそうだけど、タイムリミットについても気にしなければならない。
こうしている間に、いつアスウェルが能力を使ってしまうか、気が気ではない。
もし、彼が巻き戻ったりしたら、僕達の記憶は、これまでの経験は無に帰してしまう。
それは何としてでも避けなければならない。
外に出て、アスウェルを妨害するか、姫ちゃんを助けるか。
災害に対処できなかった今、僕達に残された選択肢は、もうこの二つしかない。
「……」
誰もしゃべる者がいなくなった。
雰囲気が暗いし、重い。
わずかに残されたその選択肢。
けれどそれらは、ここであっけなくついえる。
アイナがどうにかしてこちらを追ってきたのだ。
「貴方達に選択なんて、させない。もう、燃えて」
直後、真っ赤な炎が迫った。
必死な色の声が響く。
油断していた僕達はそれになすすべなくのまれて……。
揺らぐ意識。
かすむ視界の中で、倒れた者達を見つめる。
その光景が、どこかの世界の光景と重なった。
それは、一つ前の世界?
巻き戻る能力を使用したのは、姫ちゃんじゃなかった。
赤い銃を手にした僕が、何かを叫びながら力を使う。
そうだ。
それは、時を戻すための道具。
彼の代わりに生み出されたこの僕なんだから、僕にだってその能力が発現する可能性があった。
適正は元からあったのだろう。
だから、僕はおそらくアスウェルのように、魔力を使って、その赤い銃を顕現させる。
そして、願いをこめて引き金を引いた。
次こそはと……、そう思いながら。




