第52話 諦めの心
戦闘は、熾烈を極めた。
だけど、相手の方が格が上だったらしい。
経験も。
位置取りから、コンボの決め方まで上級者。
こちらの手を呼んで攻撃してくるから、ずっとやりづらい。
「さすがにちょっとまずいかなー」
みんなすぐに疲弊してしまった。
視線の先では、未利達がひざをついている。
未利が、
「害虫のようにしぶといですね」
「さすがにその言い方は傷ついちゃうな。……うん、割と本気で」
なあちゃんが、
「ぴゃ、へろへろになっちゃったの」
「なあちゃんと戦うのは、結構心が痛むよ」
エアロが、
「こんな時に、厄介な人は、出てこないでくださいよ」
「こんな時に出てくるから、厄介なんだと思うよ。ごめんね。でもそうしなくちゃいけなかったんだ」
疲れた様子でいるのに対し、アイナはまだまだ余裕の様子。
アスウェルと戦っていた方も、同じような状況だ。
といっても、こちらと違ってあちらは傷つきながらもまだ戦闘を続けているが。
目の前、赤髪の女性が息をつく。
「さて、終わりにしよう。大丈夫、アスウェルさんが何とかしてくれるよ。未利が一番だから、他の人達はついでかもしれないけど」
それはぜんぜん、大丈夫だとは言えないよねー。
僕のパーティー、未利以外のついでがたくさんだし。
アイナが、こちらを見据える。
僕は息をのんで、唇をかんだ。
ここまでかというあきらめの感情が心に満ちていく。
今まで忘れていた楽になる感情が。
あきらめれば苦しい思いをせずにすむんだ。
でも。
ここで、何とかしないと、せっかくの知識が無駄になってしまう。
今までの頑張りが。
彼女の言う通り、ここで何もかも終わりになるわけじゃないのかもしれない。
こうして倒れている事は、やがてなかった事になって、ひょっとしたら彼らが頑張っていい世界を作ってくれるのかもしれない。
そいう可能性はある。
けれど。
だけど。
「今、目の前で苦しんでる仲間を、見捨てる理由にはならないかなー」
できない。
今、目の前にある光景を無視するなんて。
すべて終わった物だと考えるなんて、できない。
ここにいる僕にとって、彼女達の言う世界は他人の世界だ。
だから……。
震える膝に力を込めて立ち上がった。
たぶんかなわないだろうけど。
金属片を手に取る。
本当は崩落の危険性があるから、地下で使いたくはなかったけど。
「自滅覚悟? やらせないよ」
僕の行動を見て、イブが対処しようとする。
手をかざして、魔法を発動させようとした。
でも彼女は動きを止めた。
そこに、赤い蝶が集まったからだ。
蝶が、僕達を守るために舞い踊る。
「「え?」」
きっと敵味方、同じ心境だっただろう。
けれど、立ち直りが早かったのは僕の方だった。
「ありがとう」
ここにはいない、けど確かに存在している仲間の気配を感じて、レールガンを撃った。




