第49話 悪意がすくう場所
地下道
医術寮の外に出て、未利達を回収するために、地下へ行くことを決めた。
例の場所、人形の店はなくなっていたけど、穴はできていた。
こんなとこだけ、同じようにならなくてもいいのに。
とりあえず朗報なのは、この周回で漆黒の刃と手を組むことができたという事。
僕が倒れてから他のみんなは、一日目にアルノドを中央領に呼んでいたようだ。
それで彼を拷問(尋問)して、地下への行き方を吐かせたらしい。
それで二日目、皆は地下に行ったんだけど、そこで未利だけがはぐれたのだとか。筋金いりすぎる。
けれど、漆黒の刃は味方に付いたため、前の世界であった謎の攻撃がさく裂することはなかった。交渉に出てきたロクナは、僕達を攻撃しないと約束したらしい。
だが……。
今この町には、氷裏がいる。
だから、警戒しなければならない。
地下に降りると、ハイネルさん、ディークさん、メリルさん、エアロ、なあちゃんが出迎えてくれた。
「勇気殿、もう動かれてもよろしいですかな?」
「啓区様、大丈夫なのかよ」
「啓区ちゃまなの。なあ嬉しいの! でも、ちょっと心配だから、無理したらめっなの」
「動けるくらいには回復したようですね。これ以上怪我しないでくださいよ。面倒見切れません」
特に反応が顕著だった、ディークさんやなあちゃんに気遣われたり言われたりしながら、さっそくいなくなった仲間を探して捜索に出発。
心域であったことはチャットで説明済みだ。
さて、未利を探さなくちゃいけないけれど、彼女はどこにいるんだろう。
前回ここに落ちた時は、すぐに合流できた。
アスウェルが彼女を守っていたからだろう。
けれど、今回は?
彼女は一人?
それとも、アスウェルも一緒に?
アスウェルは僕達と未利を切り離そうとしているから、きっとこちらを合流させたくないと考えるはず。
前回はおとなしかったけど、今回も同じようにいてくれるとは限らない。
考えながら、歩いていると気になる小部屋を見つけた。
開いている。
「ここ、調べてみてもいいかなー」
僕の提案に、なあちゃんをのぞいた全員が賛成。
ハイネルさんが前にでて、そっと扉を開いた。
「一部屋だけ、開いてます。気になるのは当然でしょう」
そこにあったのは……。
「モデルルーム?」
よく住宅の見本、インテリアの見本として作られる、モデルルームだった。
豪奢な内装のモデルルームが、ずらりと並ぶ。
ただし壁の一面がガラスになっているため、プライバシーなんてないけど。
そのモデルルームの中を覗いていく。たくさんあるその中の一つには……。
見覚えのある金髪の女性。
この人は……。
イフィールさんだ。
でも、彼女は何も反応しない。
こちらが近づいても、まるで最初から何も見えていないかのようだ。
ガラスの向こうの、豪奢な部屋の中で、ただベッドの淵に腰かけて虚空を眺めているのみ。
「あまり見つめない方が良いです。悪意にのまれますよ」
そこに見知った声がかかる。
前方からやってきた少女が声をかけてきた。
ようやく見つけた僕達の仲間、未利だ。
「ここは大司教が使用している部屋らしいです。こうやって綺麗な物を眺めるのが趣味だとか。反吐が出ますね」
相からわず、辛辣。
合流した途端にこれだ。
でもまあ、内容には賛成。
これ作った人は、人間を物だとでも思っているのかな?
反吐とか余裕で出ちゃうよねー。




