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白いツバサ 連なる世界(第九幕if)  作者: 仲仁へび
第4章 4日目から6日目までの出来事

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第36話 一つ目の終着点



 上空に飛翔して眼下を見下ろすけれど、黒い魔力が濃すぎて結界は見えなかった。


 魔力が薄い場所を探す。


 けれど、方向が分からなくて苦心。

 ひたすら上昇して、町に満ちた魔力から出た後に探すことにした。


 ある。

 ほんの数か所だけだが。


 けれどどれも、酷い光景だった。

 闇の魔力の影響を受けてしまった人たちが、苦しみながらのたうちまわりながら、自分を誰かを傷つけている。


 その光景の一つ一つが、姫乃の心がえぐってくる。


 浄化能力が使えれば助けられるかもしれないという事実が、胸の中で重くなるばかりだ。


「どうして使えないの。どうすれば、いいの」


 どうすることもできない姫乃は、離れたところに集まっている人達を見つけた


 町の外に人がいる。


 たまたま用事があって外に出ていた、見回りの人達らしい。


 彼らは狼狽した様子で町を見つけている。


 姫乃がそこに降り立つと、彼らは口々に何が起こったのか尋ねてきた。


 けれど、こちらも分かっていないので、答える事が出来ない。

 そんな人達にまざるようにして、アスウェルがいた。


 彼は無機質な光を宿した目で、こちらを見ていた。


「ごめんなさい。通してください」


 姫乃は彼らの輪から抜け出して、アスウェルに近づく。


 彼に動揺はない、まるであらかじめこんな事が起きるのが分かっていたかのように。


「アス、ウェルさん。どうして町の外に」


 それが、ただ用事があってのものならば、彼を責めるのは筋違いだろう。

 だが、そうでないとしたら?


 アスウェルは無言で、銃をこちらに向ける。

 それが返答だった。


「知ってたんですね」


 未来を知る彼。


 だから当然、町がこんな事になるのも分かっていたのだろう。


 ならどうして。

 何もしなかったのか。

 何も教えてくれなかったのか。


「どうして!」


 あの町には大勢の人がいる。

 顔も知らない人達も、知っている者達も、仲間達も。

 それなのになぜ、何もしないでいられるのか。


 姫乃には彼の心境が理解できなかった。


「助ける必要があるのか」

「生きてるんですよ。みんな」

「赤の他人をか」

「そうです。それでもっ」

「どうでもいい」

「なら、未利は……。大切な人なんじゃないんですか?」

「……」


 言葉をつのるが、彼にはまるきり届いていないようだった。


 彼女の事を彼は、助からないものだとみているのだろうか。

 次があるから平気なのだろうか。


 これは、彼にとってなんどめ?

 彼は知っていた。

 なら、この災害が起こる事は初めてではないという事だ。


 何度も繰り返した彼。

 なら、助けられないのが分かり切っている。

 だから、見捨てても大丈夫?


 いいや、それでも。


 姫乃は己が正しいと思った事を述べる。


「それが、諦める理由にはならない」


 今苦しんでいる多くの人達を、助けない理由にはならない。

 

 先が分かっているから、自分の力が不足しているから。

 だったら、それを大切な人を助けない理由にできるのか。


 できない。

 姫乃には、そんな事できない。


 きっと「--」だってそう言うだろう。


「--」?

「ーー」って誰の事だっけ。


 目の前のアスウェルが口を開いた。


「どうでも良い。どうせもう、消えてなくなる」


 目の前にいる男の瞳を見た。

 何もかも諦めている目だ。


 きっと、ここにあるすべてをただの事実としか認識していない。

 姫乃のことも、きちんと見ていない。


 繰り返される事実の一部。

 ただの背景、光景だとしか見えていないのだ。


 アスウェルの指が動いた。

 引き金が引かれる。


 話に夢中になっていた姫乃は、警戒していなかった。

 だって説得したかったから。

 わかってほしかったからだ。

 その結果がこれだ。


 姫乃はこのたった一瞬では、何もできない。


 だから、そのまま撃たれてしまうはずだった。

 本来。そのままなら。


「姫ちゃん!」


 けど、私の前に突然現れた誰かが私を突き飛ばしたから。

 私は、無事だった。


 黒髪の、黒服の少年。

 歳は同じくらい。

 でも見覚えはない。

 相手はこちらの名前を知っているのに。


 その少年は銃弾を受けて、地面に倒れた。

 うめき声をあげる。

 血が、流れている。


「どう、して」

「ごめん、ね。こんな事しかできなくて」


 違う。

 聞きたいのはそんな事じゃない。


 でも、少年は口を開く体力がないようだ。

 ぐったりとしたままで、目を閉じていく。

 

 姫乃はかけよった。


「どうして!」


 助けられた。

 かばわれた。


 名前も知らない少年に。

 

 混乱する中で、姫乃はどうすればいいのか分からないまま、その手を握っていた。


 透けている。

 消えそうになる。

 人間じゃないのかもしれない?


「消えないで」


 でも、それは今関係ない。


「死なないで」


 助けなければ、と思った。

 何をしてでも。

 どうしてでも。


「いなくならないで!」


 目の前の命を失わせてはならない。


 ただ、かばってくれただけの第三者に向けるにしては、鮮烈すぎるその感情。

 燃えるようなその気持ち答えて、姫乃は何を考えるでもなく、ただ魔法を発動させた。



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