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白いツバサ 連なる世界(第九幕if)  作者: 仲仁へび
第4章 4日目から6日目までの出来事

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第33話 消失



 なあちゃんに遅れて姫ちゃんも話しかけてくる。


「近くのお店の人がね、分けてくれたんだよ。ここで困った風に立ってたから心配してくれたみたい」

「そうなんだー。それはちょっと罪悪感ー」

「林檎に似てるこれは、アップナって言うんだって。アップナ飴……になるのかな」

「ジャムだったら、アップナジャムだねー。あ、姫ちゃんも食べるー?」


 意外と美味しいりんご飴ならぬアップナ飴。

 このまま一人で食べるのは勿体ないと思ったので、そう提案するが。


「私達も、さっきもらっちゃったから」


 もうお試し済みのようだった。

 りんご飴って固いけど、よく短時間で食べられたね?

 小さめものだったのかな。


「戻る時にお土産に買ってあげたいねー。痛まないようにできたらいいけどー」

「うん、コヨミ姫や選達も喜ぶんじゃないかな。一口で食べられるのも売ってたよ。後で甘い物好きかどうか聞いてみよう」


 とりあえずアップナ飴をお土産として持ち帰る予定が入った。


 こういう役どころは、いつもは僕がやる方なんだけど。

 今日は逆転してしまったみたいだ。


 姫ちゃんはこちらの顔を覗き込んだ。

 その瞳には心配げな光。


「あの時から、だよね」

「?」

「水礼際の前、星詠台で話した時から、なんだか時々無理してるように見えて。未来が分かる事ってやっぱりつらい?」

「それほどでもー。未利やコヨミ姫を助けた後は見えなくなっちゃったしー」

「啓区のその言葉、あんまりあてにならない気がする」


 おっと、思わぬ人からの反逆だー。


「なんだかちょっと心配。……一人であんまり抱え込まないでね。未利もそうだけど、啓区も結構一人で頑張っちゃう所があるし」

「あはは、分かったよー」


 よく見てくれてる。

 心配をかけてばかりだなと思う。

 その通り、ちょっと無理はしているかもしれない。

 言葉にはしないけど。


 けど、姫ちゃんは優しいから、それ以上はつっこまないでいてくれる。


「未利は辛いの好きだから好みに合わないかもしれないけど、教えてあげたいな」

「そうだねー。見つけたらまずはお叱りして、罰を言い渡さなくちゃだけどー」

「すごく心配してるね」


 それは姫ちゃん達も同じという事で。


 そんなやりとりを交わしていると、視界の外にいたなあちゃんが何か飛び跳ねた。


「ぴゃ!?」

「あ、なあさんどうしたんですか。そんなに驚いたような顔をして」

「なあ驚いちゃったの。うんと、……なんでなの?」


 しかし、それは勘とかフィーリングが作動した結果らしい。

 詳しいことが分からず、首をひねっている。


 得心が言ったようになあちゃんが、言葉を紡ぐ。


「わかったの! 大変なの! 啓区ちゃまが……」


 けれど僕は、それを最後まで聞くことができなかった。


「あれ?」


 感覚で分かった。

 自分の存在が揺らいでいるという事に。


 この世界が遠のき、自分という存在が薄くなっていく事が。


「なん、で……」


 予兆なんてなかったはず。

 未利の心域に行ってからは安定していたはずなのに。


 それはいきなり来た。


 なぜ、と思うも思考が答えにたどりつかない。


 いや、今やるのはそんな事じゃない。


 やるべきことは。

 僕のやらなければならない事は……。


 焦燥に突き動かされるまま、口を開く。

 何も決めてない。

 何も思いつかない。

 けれど、何かを伝えなくちゃと思って、それで……。

 

「姫ちゃん……」

「啓区?」


 異変を察知した少女。

 彼女が手を伸ばす。

 けれどそれは届かない。


「ごめ……」


 僕は世界から消失した。



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