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白いツバサ 連なる世界(第九幕if)  作者: 仲仁へび
第3章 大量生産される謎

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第23話 秘密



 突如振ってわいた謎の施設の存在。

 どうにも気になるそれを調査するために、小一時間程調べた。


 シンク・カットでも感じたけど、お腹の底に来るような雰囲気の中に長時間いるというのは気が滅入る。

 未利が変な空気が満ちてるみたいな事いってたけど、それもちょっと分かる気がする。


 なんていうか、感情を配した世界というか、無機質すぎて……こんな施設がここにあるという事実を考えただけでもちょっと辛い。


 僕的にはかなり珍しい事だけど。


 時間をかけて資料を眺めた後、眉間をもむ。


 正直あんまり知りたくなかった真実があったので、気が滅入る。


「はぁー」


 ため息。


 それで、まず彼女を呼ぶことにした。

 栗色の髪の少女は離れたところで、真面目に資料を読み込んでいた。


「エアロ、ちょっといいかなー」

「何です?」


 顔をあげた彼女の月色の瞳と視線が合う。


「これ見て、気づく事あるー?」

「似てますね」


 呼ばれた彼女は不思議そうな顔でこちらにやってきた。

 そんなエアロに、つい先ほど見つけた写真を見せていった。

 女性と男性の写真だ。


 彼女はそれを見て、きっととある少女の顔を思い浮かべただろう。


 思い切り、表情をしかめてみせた。


「この方達は彼女の親戚? いえ、違いますよね。たぶん……」


 そして、ある可能性に思い至ったのだろう。

 しかし、彼女はそれを口にしたくなかったようだ。


 最後のセリフは、宙に消えてなくなった。


 目の前の資料。

 そこに乗せられている二つの写真。


 男性と女性なのだが、その顔はまったく見覚えがない顔ではなかった。


 正確には赤の他人だろう。

 けれど、彼女と面影がある。似ている。


 思案気な表情になったエアロが、遠回しな部分から啓区へ尋ねてきた。


「ですが、彼女の両親は死んだはずでは? 例の手記の情報によれば、生贄という形で……、こんなところになぜ写真が?」


 以前エアロが翻訳してくれた書物……古戸零種ふるどれいしゅの手記は啓区も読んでいた。


 僕達の敵に回った人物の一人で、コヨミや未利を誘拐した連中の中の一人。


 彼らの事はほとんどよく分かっていないままだ。事件は終息してしまっている。

 だから、情報を得るために手記を読むことにしたのだが……内容が内容だったので、まだ姫乃達には読ませてなかった。


 書かれていたのは。

 とある夫婦に起こった悲劇の内容。

 古戸零種がその夫婦と関係を持つにいたったなりゆき。

 そして、フォルト・アレイスが僕達の仲間である未利を助けた理由……。


 だから、この情報について引っ掛かりを覚えるのは、手記を詳しく読み込んでいる啓区とエアロだけだ。


 この人選はあたりだったとみていい。

 だが、そんな事実では喜べない。


 エアロは首を振った。


「この方達は生きている? いいえ、ありえません」

「だよねー。死んでいるはずだよ。でも、氷裏が噛んでるとしたら、話は見えなくなると思うー」

「ああ。彼女、ストーカーされてますしね。なら、この方はおそらく……。あまり考えたくはありませんが」


 魂の無い器として利用されている。

 手記の内容を呼んだ者としては、そう考えるのが妥当だろう。


 僕達の世界、ある地域には異世界から化け物がやってくると思い込んでいた狂信者がいた。

 その狂信者が、異変をくいとめるために生贄を探していたのだが、そのターゲットとなってしまったのが古戸零種だったのだ。

 しかし、そんな古戸をかばったために、ある夫妻は命を落としてしまったのだ。


 僕達の仲間である方城未利の両親は。


 この培養層で作られた男女は、その両親達とそっくりだった。


 表情を暗くしたエアロは、ホムンクルスが浮かぶ培養を見て、顔を曇らせる。


「どうします?」

「様子見、かなー。もっと調べてみない事には何とも。もちろん、当人には言わない方向でねー。大丈夫そうに見えるけど、案外弱いところもあるしー」

「そうですよね。……はぁ。なんだか、最近私達こんな話ばっかしてません?」

「悪だくみしてるみたいだねー」


 共犯者、という言葉が浮かんだが、それはさすがに彼女に悪い。


 エアロに嫌そうな顔をされて、ちょっと言い過ぎたかな、と思う。

 彼女だって、好きでやってるわけじゃない。

 誰だって、こんな役目は背負いたくないはずだ。



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