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白いツバサ 連なる世界(第九幕if)  作者: 仲仁へび
第1章 中央都グロリア
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第18話 町巡りと夕くらげ



 大通り


 研究所に挨拶しに行った後は、町の中をめぐる事になった。

 思いのほかトラブルなくスケジュールを消化できたので、時間が余ったのが大きい。


 そういうわけなので、滞在先の土地勘は早いうちに掴んでおいた方がいいだろうという事になって、町の中をぐるり一周。お散歩タイム。


 ここに来る前に地図を見て大まかな施設や道は覚えているけれど、実際に目にする方が記憶しやすいはず。


 あちこち見ながら、グロリアの町の中を巡っていくのだが、シュナイデルにはないものばかりで新鮮だ。


 医療について発展している町だから、体に良い食べ物とか、健康グッズとかが良く売られている。

 後は、力試しのイベントとかも多かった。


 僕達の間で特に話題に頻繁にあがるのは、頭上にそびえる、何百メートルはあろうかという大樹。


 姫ちゃんが頭上を仰ぎながら、心配事をこぼした。


「あんなに大きな木、落ち葉の掃除が大変にならないのかな」

「枝がどーんって落ちてきちゃったら大変なの!」


 なあちゃんもわくわくしながら、先を見通して事故の発生も心配しての、発言。

 若干今までにないなあちゃんでちょっと新鮮。


 とりあえず僕は茶々をいれる係になろう。


「押しつぶされちゃったら、つぶれたトマトになっちゃうもんねー」


 するとエアロが「うわぁ」という顔になった。

 想像してしまったらしい。


「嫌な事言わないでくださいよ」

「あはは、ごめんねー」


 そこで解説役として活躍してくれたのは、ハイネルさん。


「大丈夫ですよ。見張りの人間がいて、常時折れそうな枝を見つけて適切に管理してますので」


 彼は「ちなみに」と豆知識を披露。


「あの木の中のどれかには、内部に空洞ができていて、その中に入ると会いたい人に会えるらしいです」


 それは、言い伝えとかジンクスとかだろうか。

 不思議に思った姫ちゃんが問いかけす。


「会いたい人……ですか?」

「ええ、どういう法則が働いているのかは知りませんが、そういった事ができる空間があるようです。ただし、生きていない人間に会いたい場合、会えるのは本人ではなく幻だがね」


 最期だけ、微妙に苦虫をかみつぶしたような態度になったのは、試してみたからかそれとも、それに関連して嫌なことがあったからなのか。


 その話を聞いた姫ちゃんは困惑した様子で、考え込んでいる。


「それは、便利……なのかな」


 そんな事ができる、なんて思いもしなかったので想像が追いつかないのだろう。


「便利と言えば便利です。俺や兄貴も数回使ってるんで。ちょっと仕事の関係で追われていた時に緊急避難できますし」

「会いたい人に会えるって、転移しちゃうんですか? そんな使い方があるんだ……」

「実質条件付きの転移魔法みたいなもんだって有名です。見つけられるのは運だけどな。なんでか同じ場所に行ってもないんだ」


 なるほど、ロマンチックな魔法(現象?)だと思ったけど、他の場所に移動するという点を見るとかなり便利だろう。


 思ったより現実的な話だ。


 そんな風に、ハイネルさんやディークさんからこの町の不思議エピソードを聞いて歩いていると、とうとつになあちゃんが声をあげた。


「ぴゃ、くらげさんが飛んでるの! なあびっくりなの。くらげさん、飛べるの?」


 肩をびくっとさせつつも、はしゃいでいるなあちゃん。

 そんな小さな少女の前にはある生き物がいた。


 宙にぷかぷか浮かんでいるそれは半透明だ。

 紙風船のような丸い胴体に、細いひものようなものが何本もくっついている。


 目の前にあられた不思議生物について説明するのはエアロだ。


「これはクラゲールですね。グロリア名物です」


 町の中を歩いている間にどこからともなくあらわれた、宙に浮かぶくらげ。ふわふわ浮かんでいるその生物はクラゲールというらしい。


 それは僕達の世界では、通常海の中にいるような生物だ。


 けれど、この世界では宙に浮いている。

 ネコウといい、このくらげといい、みんな飛ぶことが好きなんだろうか。


 それについて解説してくれるのは、ディークさん。


「そうそう先輩の言う通り、これはクラゲールだ。夕暮れ時になると表に出てくるんだぜ。空気中の魔力を食べていきてる。でも、お腹がすくと時々草なんかも食ってます」


 クラゲールはこの町の当たり前の景色と化しているようだ。

 住民達は当然のように通りを歩いている。


 そんな人々を見て、ディークさんが続けた。


「夕涼みするために、このクラゲールを見て一杯飲むのが日課の人もいるらしいです。夕くらげしたくて、町にやってくる旅人もいるくらいだ」

「夕くらげ……」


 姫ちゃんがどう受け止めていいのか分からないといった顔で、反芻。

 耳慣れなさ過ぎて斬新な言葉だった。


 ただ、見た目が半透明なので、確かに夕涼みには最適そうだった。



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