第15話 三座達の事情
その後、僕達とは初対面になる考子くんと、ミミちゃんが自己紹介タイムだ。
まずは考子くんから。
「は、初めまして。ギルドトーチカの一員、考子です」
普通っぽい見た目の考子くんは頭を全く隠してない、手のひらサイズの小さな帽子がトレードマークらしい。気が弱い事を自認しているらしく「強い男の子になるのが目標です」との事だ。
そしてミミちゃん。
「ミミよ。ギルドトーチカの魔法使い」
ネコ耳がついた頭のフードを揺らしながら、腕をくんで仁王立ち。
考子くんとは違って強気な性格らしい。
「得意技は魔法。同時発動もこなせるわ」
と最後には、そんな火力高そうな一言を付け加えた。
一応チャットで挨拶もしているし、三座ちゃんから説明されていたけれど、それはそれ。
という事で、みんなもう一度自己紹介しておいた。
全員一言ずつ名前を述べあってから本題に入る。
話がひと段落した後、僕達が移動したのはとある病室だ。
その部屋には、ベッドに寝かされている患者が数人いた。
年齢も、性別も様々。
彼等に共通しているのは、どれだけ時間が経っても目を覚まさないという点だろう。
そんな人たちの様子を確認し、僕達に向かって喋るのは三座ちゃんだ。
「私達の世界でも、向こうの世界でも、人間が目を覚まさなくなる病気があるらしいですわね。ログプレス病という名前らしいですわ」
彼女達は、僕達と違って自力でこの世界に来ている。
その目的は、眠ったまま目が覚めなくなった「とある少女」を目覚めさせるため、らしい。
一応治療方法について調べてはいるが、まだまだ実用できるようなレベルではないらしい。
三座ちゃんは真剣な表所で、こちらに告げてきた。
「そちらに一度眠りの檻にとらわれてしまった方がいらっしゃると聞いたので、治療の参考にしたいのです」
彼女が言っているのは未利の事だろう。
彼女は氷裏の罠にはまった事がきっかけで、眠ったままの状態になった事がある。
けれど、ベルカの助けと姫ちゃん達の尽力があって、目覚める事ができた。
「とりあえず今日は、情報のすり合わせだけですけど、今後も協力をお願いしますわ」
そこまで言ったところで、三座はキョロキョロした。
「それで、当の方はどちらに?」
未利を探してるんだろう。
さっき自己紹介したのに、気が付いていなかったんだろうか。
そういえば、なあちゃんも名前を読んでなかったし。
まあ、最初に見た時は、僕達も別人になったかと思ったし、無理はないのかもしれない。
そこで、レミーが控えめに手を上げる。
「私ならここにいますよ」
「えっ」
「……治療にはできる限り協力させてもらいます」
そこで三座は、数秒時間をかけて発言主をじっくり見つめた後に正体が分かったようだ。
「私とした事が、気づきませんでしたわ。確かに顔が似てますのに」
ここで本来の彼女ならどや顔するか、大した事ないみたいな事いうかのどちらかだけど、あいにく今いるのは変装中の方だ。
「ありがとうございます」
一言そうお礼を言うにとどめた。
初見の人にとってつきあいづらいところは相変わらずのようだった。