第13話 お見舞いへ
部屋の環境を整えた後は、聖堂教の内部を詳しく調査……と行きたい所だったけど、他にやるべき事がある。
それは、お見舞いだ。
僕達が歩いて向かうのは聖堂教の横に立つ医術寮。
いったん外に出る必要があるので、その際に町中の雰囲気が分かった。
僕達は、シュナイデとは違う中央領の景色を見ながら、短い距離を歩いていく。
「シュナイデとはぜんぜん違うよね」
姫ちゃん達は、頭上で陽光を遮っている巨大な木へと視線を注いでいた。
この中央領グロリアには、直径数十メートル以上になる太い木が十数本生えている。
それだけでなく、互いの木の枝が隣の木の枝と絡まりあったしていて、頭上に天然の橋が出来上がっていたりもしていた。
さんさんと降り注ぐ太陽の光が木の葉に遮られて涼しい。
暖かい季節だけど、涼をとるのには困らない。
「楽しそうなのっ」
そんな景色をみたなあちゃんは、予想通りわくわくした表情になって、橋を行きかう人達に元気よく手を振っている。
それをやんわりとたしなめる姫ちゃんも、興味津々といった様子だ。
「登ってみたくなっちゃうけど、それはもうちょっと後でね」
元の世界ではどうだか知らないけど、自分達の国内にはこんな景色はなかったのというのもあってか、時間が空いたらじっくり見てみたいという話しになった。
そんな僕達のやりとりを見ている護衛組も、頭上の景に対してコメントしている。
珍しいことに、いつも仕事用の態度を崩さないでいたハイネルさんが、ディークさんの言葉を聞いて表情をほころばせている。
「仕事で何回か来た事あるけど、いつみても壮観だよな」
「そうだな。お前と一緒に初めてのぼった時の事を思い出す」
「なっ、変な事思い出したりしてないよな!」
「んー? どうだかね。兄上の腰にしがみつきながら「おにいたん、こわいよ落ちちゃうよー」なんて泣いてたのなんて、思い出さないがね」
「しっかり思い出してんじゃねぇか、この馬鹿兄貴!」
ハイネルさんとディーク兄弟のやり取りは、眺めていて楽しい。
ディークさんと違ってちょっと距離があったハイネルさんだが、最近はこのように普段の姿も見せてくれるようになっていた。
そんな二人を見つめるエアロが、「あいかわらず仲、いいんですね」と感想。
先輩兵士として、最近増えた新人兵士達に物事を教えていたエアロは、その通り彼等との接点もそれなりにあったようだ。
なんて、エアロが言えばディークがむきになる。
「なっ、そんなんじゃねーから。これ」
ハイネルさんは、余裕の態度で冷やかしだ。
「照れるな、弟よ。お前が兄上大好きな事は、知っている。寂しかったら、いつでも大好きな兄上の胸に飛び込んできてもいいのだぞ?」
「するかよっ」
そこに「へたな恋人同士より仲がよさそうですよ」、とエアロ。
暇な時間に恋愛小説を読んでるらしい彼女は、呆れた様子だった。