表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
白いツバサ 連なる世界(第九幕if)  作者: 仲仁へび
序章 準備期間
10/67

第9話 後発隊



「だから」とコヨミは口を開く。


「姫乃ちゃん達には、その三日後に中央領に行ってもらうわね」


「三日かぁ」


 短いと感じているのか、長いと感じているのか姫ちゃんがつぶやいた。


 転移の魔法陣は繊細なコントロールが必要不可欠だ。

 急いで三日というのだから、それ以上短くはできないだろう。


 その期間内にイフィール達の身に危険が迫らないか心配だが、ラルド達に頑張ってもらうしかない。


 そんな思いを見透かしてか、自分の三つ編みを触っていた三座ちゃんが話に入る。


「向こうには、トーチカのメンバーもいますし、できるだけフォローさせていただきますわ」


 ギルドトーチカは、三座ちゃんが立ち上げた組織だ。

 地域の困りごとや問題をこなしている組織。

 依頼を受けるという形なら、報酬をとるのかな?

 友達の頼みだから、と言わない辺り三座ちゃんの性格が出ていた。

 セルスティーさんと気が合いそうだ。


「出来ない事は出来ませんけど、出来る事なら、できるだけ手をつくすつもりですわよ」


 彼女は口調的には自信満々に言うのだが、内容の方は慎重姿勢だった。

 その口ぶりに、旧知の仲である未利がつっこむ。


「相変わらず、まだるっこしい喋り方」

「それがわたくしですもの」


 未利が微妙な視線を向けているけど、当の本人はどこ吹く風。

 そういうやりとりに慣れている様だ。


 そんな未利が口を閉じたのを見て、コヨミ姫が話しかける。


「なら三座ちゃん、うちの兵士達をお願いね。ううん、お願いしますギルドトーチカの皆さん」

「承りましたわ。報酬については後で確認を」


 領主モードに切り替わったコヨミ姫に、三座ちゃんは堂々とした態度で対応。

 初見でコヨミ姫乃切り替えを見て動揺しないなんて、そういう状況に慣れているのだろう。


 再びただの女の子モードにもどったコヨミ姫は、次の話題へうつっていく。


「じゃあ、今度は後発メンバーを決めていくわね。まず姫乃ちゃんと啓区君は、決まりでしょ。でも、問題はなあちゃんと未利ちゃんよね」


 それはメンバーを決めるうえで、最も気にしなければならない点だろう。


「ふぇ?」

「んぇ?」


 話を向けられた二人は、同時に「え?」という顔をする。

 けど、なあちゃんは分かってない意味で、未利は心外でという意味でだ。


「なあの名前が出た気がするの。でもよくない事の気がするの」

「ちょっと、アタシをメンバーから外すなんてお断りだからね」


 コヨミは二人の態度も最もだと見て、続きの説明を口にする。


「二人の気持ちは分かるわ。でも、だからこそ中央領に行く事の危険性も分かっているわよね」


 それに対して、一番危険な未利が、小さく反論。


「それは……分かってるけど。アタシはただ守られるだけの人間にはなりたくない」


 この世界の切り札でもある彼女には、城に残って大勢の兵士達から守られ続ける……という選択肢もある。


 この世界の事を考えるなら、それが自然だ。


 普通だったら、彼女が前に出てくる方が論外なのだ。

 厳重な警備がある場所で守られている方が、理に叶っているだろう。


 けれど……、

 思い出したかのように過去の出来事について語るのは、姫ちゃんだ。


「アスウェルさんが前に言ってたの。ここにいたら未利は危ないって、コヨミ姫や兵士さん達が危害を加えてくるとは思えないけど、でもアスウェルさんが言う事だから、私達の想像できない所で危険があるのかもしれない」


 未来の出来事を知っているようだったアスウェル、その彼の言葉が気にかかるようだった。


 本当の事かどうか分からないけれど、彼はこの時間よりもずっと後の事まで知っているふうだった。


 その彼が言うならば、気にせざるをえないだろう。


 だが、それだけではないらしい。

 こちらの方が本音だったようだ。

 姫ちゃんは、笑みを浮かべて付け足した。


「でも、そうじゃなくても未利には一緒に来てほしいな。未利の事ちゃんと頼りになるって思ってるから」

「姫ちゃん……」


 その様子をみて、エアロがほっとした顔をしてるのが、感慨深い。

 なんだかんだいって、未利の味方をするつもりでいたのだろう。

 仲が良い事だ。

 

「だったら未利も、一緒に行動した方がいいかもねー」


 これで残る問題は、なあちゃんに関してだけだ。


 なあちゃんには誰にも真似できない特殊なスキルがある。

 物を好きなように出し入れできる魔法が使えるし、受けたダメージを分散させる魔法も使える。


 いてくれた方がこちらとしては正直うれしいが、なあちゃんが自衛のための力をあまり持っていない事が問題だった。


 そんな事を考えていれば、彼女が本能で察知したようだ。


「ぴゃっ? 何だか色んなところがムズムズするの。なあとってもピンチな気がするの」


 そう言って、落ち着かない様子になる。


 だけど、ここで情にほだされては駄目だ。

 なあちゃんを連れていく事について、きちんと考えて判断しなければ。


 どうしたものか、と考えているとディークさんが手を挙げた。


「コヨミ様、なあ様ならたぶん大丈夫だと思うぜ」


 発言を受けたコヨミは無言で先を促す。


「ええっと、ここ数日間姫乃様たちの手伝いをする事が多かったんだけど、成長期みたいで色んな事吸収してくれるんです。今はちょっと不安がありますけど、中央領に行ってからも勉強を続ければ何とかなるんじゃないかなと」


 彼がそう言えば、ディークさんのお兄さんであるハイネルさんも同意だ。


「利益の方が大きいでしょう。希歳殿の価値は、他の人物には代えられないと思います」


 最後にまとめるのはメリルさん。


「ボクからみても、大丈夫だと思います。まー、なあ様ってちょっと抜けてるところがありますけど。意外としっかりしてますから」


 三人の兵士の意見を受けたコヨミは、数秒考えてうなづいた。


「分かりました。それじゃあなあちゃんもよろしくね。みんなを頼んだわよ」

「みんな一緒で嬉しいの! なあはりきって頑張るの!」



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ