表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
85/179

第75話 ラビットロード・プロローグ

本日は2話更新となります

 薬品の匂いが染みついた病院の通路は、怖いくらいに静まり返っていた。


 ……ハッ、ハッ、ハッ。


 不意に静寂を破ったのは、白い廊下に響き渡る小さな足音と、喘ぐような息づかい。


 ……ハッ、ハッ、ハッ、ハッ!


 猫の耳と黒い尻尾を震わせて、白衣に身を包んだ獣人の少女は、ほとんど人気のない第二病棟の廊下を無我夢中で走った。


「お母さん……!」


 少女は呟いた。その幼い横顔に余裕はなかった。足取りもひどく覚束ないものだ。まるで岩だらけの荒野を進むかのように、左目に眼帯をした獣人の少女は、この世でたった一人の肉親が入院している病室を目指した。


 それからほどなくして。


 少女は目的の病室へ辿り着いた。その病室の扉には大きな文字で『502号室』と書かれていた。


「ハァ……ハァ……ッ」


 少女は肩で息をしながら、躊躇いがちに病室の扉を開ける。


「お母、さん?」


「………………」


 真白なベッドの上には、ミイラのようにやつれた人間の女性がいた。昨日とはまるで別人のように変わり果てた母の姿が、そこにはあった。


「おそらく今夜が峠でしょう」


 つきっきりで容態を見ていただろう細身の男性医師が、静かにそう告げる。


「お母……さん……」


 ()獣人の少女――ラムは病室のベッドで死んだように眠る母親を、ただ呆然と見つめることしか出来なかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ