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少女と吸血鬼さん  作者: 創
2/2

少女と洗濯物


吸血鬼という存在をご存知だろうか。

日光に弱い、ニンニクが苦手、銀製の物に触れない、十字架を見ると消滅してしまう…。

その名の通り、血を吸う。人外。サキュバスとも呼ばれる。

おおよそ正解な答えだ。

ではこの男はどうだろうか_?


さんさんと照り輝く太陽の元、吸血鬼は洗濯物を干していた。


「ったー、腰に来るわこれ…。」

大きな庭にある桶に水を張って石鹸でゴシゴシと衣服を洗って、流して干していた吸血鬼はぐっ、と腰を伸ばした。

(お嬢さんは洗濯物出しすぎなんだよ。)

3着のワンピースをレースが傷つかないように丁寧に扱い、フェイスタオルを5枚ほど、あとは自身の執事服と下着をぱぱっと洗って残りは干すだけだという所でルティアはひょこっとリビングにある窓から顔を出した。


「きゅーけつきさん!!」

ぶんぶんと手が取れるのではないかと言うくらいに勢いよく振るルティアに吸血鬼は苦笑いで手を振り返すと、何を思ったかその窓から外に出ようとした。


「ちょ、ちょおじょ!?うわ、あぶねっ!」


1階の壁際にある窓と言えど6歳の少女にとって普通に高い。きっと何かに乗って窓の縁に登ったのだろう。外に出ては行けないとは言うが屋敷の庭なら吸血鬼の目の届く範囲だけ外に出ていいことになっている。

「とぉーうっ!」

意味不明な掛け声とともに見事なポーズで降りようとしているルティアを吸血鬼はダッシュして上手いことキャッチ。

「おぉ!さすがきゅーけつきさん!凄い!!」

「凄いじゃねぇ!!ばっ、危ねぇじゃねぇか!!」

少し口調を荒く言うとルティアはしょんぼりして

「…だって、だって1番早くきゅーけつきさんの元に行くにはこれが良かったんだもん。」

としょぼくれた。

吸血鬼は頭をボリボリと掻くと

「反省したならいい。もう危ないから二度とやるんじゃない。」

とルティアの頭を撫でた。

「きゅーけつきさん。」

「何だ?」

ルティアは少し顔を背けると

「手が冷たい。」

と不満そうな声でそう言った。


「_お嬢さんは洗濯物出しすぎだ。一日に何着もワンピースを着替えるんじゃない。」

洗濯物干しを再開した吸血鬼はルティアに向かって言った。

「でも、なんか汚いのはやじゃん。」

「少し水に濡れたくらいで着替えないでくれ…。お嬢さんのせいで俺の腰が死ぬ…」

「えっ、きゅーけつきさん!死んじゃうの!?」

ぶぁっと目に涙を貯めてルティアは吸血鬼を見つめる。

「あー、なんだ、比喩だ。比喩。実際に死ぬ訳では無いから安心しろ…。」

「はーっ良かった!!」

「ったく…。」

ほっと胸を撫で下ろすような仕草をしたルティアを見ていたら吸血鬼はもうルティアを咎めようという気が消えていった。

(これがもし意図的にやってるなら怖ぇな。…んなわけねぇか。)

次は花壇の整理か、吸血鬼はとくるりと振り返った。


ルティアは少し考えた素振りして

「ねーねーきゅーけつきさん!吸血鬼ってお日様の光に浴びたら消えちゃうんでしょ?なんできゅーけつきさんは大丈夫なの?」

と吸血鬼に聞いた。

吸血鬼は吸血鬼らしくない頭にタオルをまいて頬に泥を付け、片手にスコップを持った姿で振り返って。

「あーなんでだろうな…。」

「こないだのスープにも、にんにく入ってたけど食べてたよね?」

「作ったの俺だしな…」

「吸血鬼らしくないよね。」

「だな。」

なんでだろうね、と言うと興味をなくしたのか持ってきた本を読むのに戻った。

吸血鬼も花壇を弄る作業に戻った。


(…お前の両親喰ったから、だと思うが。)

吸血鬼は昔は日光に当たれなかったが、この娘の両親を食したその日の昼には外に出られる身体になっていた。

ぶちぶちと生えた雑草の根から引っこ抜いていく。雑草は花の邪魔をする。外見的にも、養分的にも。

(俺がこの花壇の花だとしたら…人間は雑草だな。いや、逆か。)

自嘲気味に笑うとその花壇に生えていた雑草の最後の1本を引き抜いた。



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