【第六話 ~沖弓~】1
〈桃。最近ずいぶんそれに夢中だね〉
ピンク色のワンピースをぱたぱたさせて、女の子は沖弓の部屋の勉強机にこしかけている。少し、ふてくされているような表情だった。
〈何がそんなに楽しいの? 桃が高校でしたかったことで、それだったの?〉
沖弓は自室のベッドに仰向けに寝そべっていた。制服姿のまんまだった。
〈桃、最近わたしとおしゃべりしてくれないよね。どうして? 嫌いになっちゃったの?〉
沖弓はスマートフォンで、「リリー」にログインし、メディア研究会のコミュニティを作成しようとしていた。いくつかの項目を入力し、ランクのレベル設定画面では「3」を選ぶ。
〈中学校のときの桃は、そんな風じゃなかった。もっとわたしとおしゃべりしてくれてたよ。クラスのみんなが桃のことをあれこれ言った日とか、桃が泣いて家に帰ってきた日とかは、特に〉
設定規則。コミュニティでの設定規則はどうしようか。
普段うっかり破ってしまわないようなルールで、かつ破ろうと思った時は簡単に破ることができるルールがいい。その方が、実験もしやすい。
〈その「リリー」っていうの。ルールを破るとバチが当たるんでしょ? すごいね。桃には、どんなバチが当たっちゃうのかな? 倉木くんと加瀬くんが豹変して、桃をいじめるとか? また前みたいに、無視されちゃうとか?〉
「うるさい!」
沖弓は叫んだ。
女の子はにっこり笑う。
〈大丈夫だよ。もしそうなったら、またわたしが話し相手になってあげる。桃のこと、よしよしって、慰めてあげる〉
「そんな必要、もうないから」
〈桃〉
女の子は椅子から降りる。ピンクのワンピースがひらりと揺れる。
〈そう簡単に人は変わらないよ。わたしがいる限り、桃は『キラキラ』なんてできないんだから〉




